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私を忘れた貴方と、貴方を忘れた私の顛末  作者: コツメカワウソ


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番外編 北方騎士団の例のアレ4

 属性を変えて戦い続けるアルフォンスは、何だか不思議な高揚感に包まれていた。


 明らかに自分は押されている。

 放つ魔法も剣の腕もライオネルの方が上だ。

 それでも、どうやったら勝つ事ができるかと考えると湧き上がってくるのは楽しいという感情だ。


 魔獣と戦うのとは違う、純粋な試合。

 子供の頃に西方騎士団の稽古をこっそり見ていた時のような、そんな気持ち。


「まだまだ魔法は使いこなせていないが、使い方は悪くないな」


 ギリギリと剣を交えてライオネルは言う。


「そう言ってもらえるなら、稽古した甲斐が、ありますっ!」


 ライオネルの剣の間合いは何だか怖い。

 剣に力を込めて離れようとするが、押し込まれて動けない。


「そうそう、西方の砦での事は知っているぞ」


「え?」


(西方の砦での事?何だ?)


 口元に笑みを浮かべるライオネルを見ながら、アルフォンスは考える。

 厄災が本格的になってから拠点になっていたあの場所で、何かあっただろうか。


「砦の裏でソフィアにキスしていたな」


「は!?」


 何故それを。

 そう思った時にアルフォンスは強く押されて体勢を崩した。

 慌てて立て直そうとしたが、ライオネルに剣を飛ばされ首元に刃を突きつけられた。


「そこまでっ!」


 セルブスの声が修練場に響く。

 周囲の声がまた一層大きくなった。


「負けた…」


 アルフォンスは大きくため息を吐く。

 もう少し長引かせれば勝機はあると思っていた。

 まさかあんな事を言われるなんて。

 何故西方の砦の事を知っているのか。

 あの時誓約に引っかからずに魔力回路の治癒について話が出来ていた。となれば人はいなかったはずだ。


(こんなのアリか…)


 悔しい。

 魔力のコントロールも経験も、全く及ばなかった。

 その上ソフィアに勝手にキスした事を言われて動揺してしまった。


「ランセル卿」


 剣を置いてライオネルがアルフォンスの前にしゃがみ込んだ。


「貴殿は強い。今まで頑張ってきた事がよく分かったよ」


「いえ…私はバードナー卿に押されっぱなしでした」


「あのまま長引けば体力的にキツかったから、まぁ卑怯な手を使ってしまった。これも経験の差と思ってくれ。年を重ねれば決して綺麗ではない戦い方も覚えるさ」


「まさか…西方の砦の事をご存知だったのは驚きましたが…」


 アルフォンスはライオネルに手を引かれて立ち上がった。


「北には北の情報網があるからな」


「北の情報網…」


(何だそれ、怖すぎるだろ…)


 ライオネルの言葉に思わず頬が引き攣る。

 西方騎士団に密偵でもいるのか。


「ソフィアは任せる。あの子は私達のせいで無理ばかりするから、幸せにしてやってくれ」


「え?」


 突然の事に驚いたアルフォンスに背を向けると、ライオネルは歩いて行ってしまう。


「あの!ありがとうございました!」


「あとでうちに寄りなさい。妻も君に会いたがっている」


「はい!」


 騎士団員に囲まれながら歩くライオネルを見ていると、ソフィアが駆け寄ってきた。


「アル!」


 怪我がないか確かめるように、アルフォンスの頬をソフィアの小さな手が撫でた。

 自分の出した炎で火傷した部分から、ふっと痛みが消える。


「大丈夫?」


「ああ、本気でやったけど負けちゃったよ。バードナー卿は本当に強いな」


「もう、二人とも無事で良かったわ」


 ニッコリと笑うソフィアを見て可愛いなと思う。

 が、抱きしめたい気持ちを何とか抑える。

 北には北の情報網があると先程聞いたばかりだ。恐ろしい。


「何とか認めてもらえたよ。これで結婚出来るね」


「ふふ、そうね。ありがとう、アル」


「でもさ、おかしな事を言われたんだよ」


「ん?」


「俺が西方の砦でソフィアにキスした事、なんかバレてた」


「ん゛っ!」


 突然咽込んだソフィアの背中をアルフォンスはさする。


「大丈夫?」


「だ、大丈夫だからっ」


「なんかさ、北には北の情報網があるって言われた。もしかしてうちの騎士団内に密偵でもいるのかな?」


「さ、さぁ?」


 明らかに様子のおかしいソフィアを不思議な気持ちで眺めるが、分からないならば考えても仕方がない。


「プライベートは安全よ。騎士団とか砦とかだけだから。多分」


「そうなの?やっぱりソフィア詳しく知ってーーー」


「知らない!知らないから!」


「そ、そうか」


 あまりのソフィアの迫力に口を噤む。

 含みを持たせた言い方は気になるが、好奇心は猫をも殺すと聞いた事がある。

 きっと世の中には知らない方がいい事もあるのだろう。


「そ、そうだわ。さっき母から魔法紙が届いて家に寄りなさいって」


「あぁ、バードナー卿にも言われたよ。じゃあお言葉に甘えて。俺もちゃんと挨拶したいし」


「そうね。きっと父さんはアルと一緒にお酒を飲みたいだろうから、面倒だけど付き合ってあげて」


「…それは緊張するんだけど」


 とりあえず西方の砦でソフィアを抱きしめなかったのは正解だった。

 というか一体どこまで知られているのか。


 今後の西方騎士団での生活は気をつけなければならない。

 職場で何かあるとは思えないが、密偵がいる可能性がある。


 アルフォンスは若干の疑心暗鬼になりながら、とりあえず例のイベントが終わった事を安堵した。


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