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私を忘れた貴方と、貴方を忘れた私の顛末  作者: コツメカワウソ


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34 SIDEアルフォンス⑤

 次の日、団長室に行くとレオナールとカイル、フェイ、エリー、ソフィアがいた。

 これから王宮魔術師がやって来るらしい。


 しばらく待っていると、転移陣が光りローブを着た青年が現れた。

 和かな笑みを浮かべたその人物は、レオナールに挨拶をする。

 どうやら来る予定だった魔術師ではなく、弟子のようだ。ジョシュア・バードナーと名乗ったその魔術師は、北の英雄の息子で次期バードナー伯爵だという。


 すると突然、ジョシュアがソフィアに詰め寄った。


 「馬鹿ソフィア!全然連絡が無いと思ったら突然あんな手紙を送ってきて!僕と師匠がどれだけ驚いたか分かる!?」


 びっくりして声が出ない。

『馬鹿ソフィア』と言ったか?


 一体彼女は何者なんだ。

 ジョシュア・バードナーとどういう関係何だ。


 ソフィアを怒鳴りつけるジョシュアに、何となくモヤモヤする。

 ガクガクとソフィアの肩を揺さぶる姿に感じるものは、ジョシュアに対する怒りか?


 聞けばジョシュアはソフィアの弟らしい。

 流石に驚きを隠せない。


(ソフィア嬢は北の英雄の娘だったのか…)





 ようやく落ち着いて話を始めようという時、ジョシュアは指を鳴らして魔法を掛けた。

 昨日フェイが団長室で使った魔法だったが、指先一つで一瞬で行われたそれは、ジョシュアの魔力の高さを示すもののようだ。


(それ程に魔力を持っているのか)


 基本的に攻撃魔法しか使わないアルフォンスだが、高魔力保持者のフェイが驚くのだから相当なんだろう。


 ジョシュアがアルフォンスに触れて、魔力を探す。

 何となく、彼の目は見られなかった。

 デモンズハーピーに遭遇した事を話すと、ジョシュアはメモを取る。

 それが終わると、彼は話し出した。





 ジョシュアの話は想像以上に驚く内容ばかりだ。

 北の英雄も今の自分と同じように呪いを掛けられ魔力奪われた。しかし王命によって治療を受け、膨大な魔力を手にしたという。

 そしてジョシュアは、魔力回路を治癒した者に約束される次代の高魔力保持者だと。

 しかし、話の雲行きが怪しくなって来る。


「何で対価の事をちゃんと説明しないんだ。ソフィアの人生に関わる事だろう!?」


 どういう事だ?

 対価とは命に関わるものではないと彼女は言っていた。

 一体彼女は何を対価として支払うつもりなんだ。


 困惑するアルフォンスを置き去りにして、ジョシュアとソフィアは言い争いを始めてしまった。


「あの!対価の事とは?彼女の、ソフィア嬢の人生に関わる事って?」


 アルフォンスは何とか声を出す。

 一体彼女は何を隠しているんだ。


 アルフォンスの事を冷たい目で見ながら、ジョシュアは話す。

 対価の本当の内容を。


(何を取られるか分からない?何だよそれ。俺のために彼女は犠牲になろうとしているのか?)


 考えたら怒りが湧いて来る。


 (そんな事をされて、俺が喜ぶとでも?そんな、他人を犠牲にして力を得るような事を)


「対価が何か教えなかったのは、なぜ?」


「…あなたに、憂いなく魔力を取り戻して欲しかったから、です」


「巫山戯るな!俺は…誰かを犠牲にしてまで、そんな力は欲しくない!」


 思わずテーブルを叩く。

 置いてあるペン立てがカタカタと音を出して揺れた。

 怒りを込めて、ソフィアを睨み付ける。


 ソフィアは唇を噛んで下を向いていた。

 じっと何かを考えるように。

 しばらくそうしていたが、その様子を見てジョシュアが口を開く。


「ソフィア、分かっただろう?大切な事を隠して治療するなんて無理なんだよ。師匠だってそう思ったから、僕をここへ寄越したんだ」


 彼の言葉で、ソフィアが意図的に対価の事を隠していた事を知る。

 そしてジョシュアが、それをよく思っていない事も。

 団長や他の人を見ると驚いた様子はない。

 きっと皆、知っていたのだろう。

 アルフォンス以外の皆は。


(皆知っていたのか?北の英雄は王命で治療を受けた…なら治癒師も王に逆らえなかったんだろう。ん?だとしたら彼女も誰かに脅されて、俺の治療をしようとしている、のか?)


 アルフォンスは考える。

 色んなことが頭の中を過ぎる。

 ソフィアが脅されていて、自分が断れないように意図的に対価の内容を話さなかったというのが、一番考えられる事か。

 しかし、だとしたら誰が?

 団長達を疑いたくは無いが、騎士団がグルなって彼女を脅している?

 もしくは…自分の恋人だという人物か?


 騙されていたと知って良くない方向にばかり考えてしまう。




 結局、ジョシュアに促されてソフィアと二人で話をする事になった。

 黙って治療しようとした彼女に対して、不信感が隠せない。



「ランセル卿、今回の事、本当に申し訳ありませんでした」


 何を話せば良いのか、迷っていたアルフォンスにソフィアが頭を下げる。

 勢いよく下げたせいか、一つに結んだ榛色の髪が肩に垂れた。


「いや、俺も怒鳴ってしまってすまなかった」


「あなたが怒るのも当然です。私は全てを話さずに治療しようとしたんですから」


(悪意があった訳ではないんだろうが…一体なぜ)


 アルフォンスはソフィアから、何故こんな事をしたのかを聞く。

 彼女が話した内容は、彼女の両親にまつわる事だった。

 対価として取られなかった自分がやるべき事は、アルフォンスの治療だと思ったと。


 途中つかえながら話す彼女を、ゆっくりと待った。

 聞きながら思う。

 彼女の置かれた環境は、とても辛いものだ。

 誰にも言えずにずっと悩んでいたんだろうと。


 しかし分からない。

 だからと言って、見ず知らずの人間がリスクを負ってまでやる事ではない。

 家族や恋人でないのなら、やはり誰かに脅されたのか。

 そう聞いてみたが、


「誰かに脅されたりなんかしていない!」


 と言う。

 それならば。


 アルフォンスに考えられる理由は、これしかない。

 彼女とは初対面ではなく、自分が忘れているだけだとしたら。

 治癒室で話した時、彼女は自分が分かるかと聞いた。あの時は意識の混濁を疑っての質問だと気にしなかったが、彼女自身を覚えているのか確認したのだとしたら。


 昨日部屋で見つけた指輪を思い出す。

 A to Sと刻印された指輪。




「もしかして俺は…君の事を…忘れているの?」


 顔を覗き込むようにして聞くと、彼女の榛色の瞳が揺れた。









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