表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私を忘れた貴方と、貴方を忘れた私の顛末  作者: コツメカワウソ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/63

33 SIDEアルフォンス④

 フェイと共に、アルフォンスは廊下を歩く。

 すでに外は暗い。誰もいない廊下に二人の足音だけが響く。


「今日は本当に大変だったね。まぁゆっくり休んで。早いうちに連絡があるだろうから、その時にはもっと詳しい話があると思うよ」


「もっと詳しい話?」


「そう、多分ね。もしかしたら…ちょっと荒れるかもしれないけど」


 荒れるとは?

 何の事だかさっぱり分からない。


「フェイ師長、今日話をしたソフィアという治癒師は?初めて見る方のようですが」


「あー。うん、彼女は今回の事には一番の適任者だ」


「師長よりも?」


 そんな事、あるだろうか。

 ソフィアは明らかに師長の娘ほどの年齢だ。


「あぁ、そうだよ。私達のような師匠付きの治癒師にも、いろいろあるって事だ。現に君、さっき彼女が言ってた事、今まで誰かから聞いた事あったかい?」


 そう言われると言葉に詰まる。

 彼女が話していた内容は、今まで教えられたものより明らかに違った。むしろ真逆だ。


「騎士学校で魔力について授業していたのは、魔術師か魔導騎士だったろう?」


 急に学生時代の話を振られて驚く。

 考えてみたら、確かにそうだ。

 教師は確か、魔導騎士だった。


「私達は誓約があるから教える事は出来ない。だから必ず、誓約を知らない者のはずだよ」


 話しながら、気づくと隊舎の玄関まで来ていた。


「お疲れ様。今日はゆっくり休んでね。誓約の事は言えないだろうけど、隊長室で話した事は他言無用だ」


「それはもちろん…話しませんが」


「うん。何も気にせず、というのは無理だろうけど、まぁ解決策があるのは分かったんだ。ゆっくり休みなさい」


「はい。失礼します」





 フェイと別れてアパートへ急ぐ。

 家に食べ物がない事を思い出し、途中で惣菜を買った。


 アパートに入ると、手紙が届いていた。

 差出人を見てため息を吐く。

 

「また見合いの話か」


 どれだけ断っても、懲りずに話を持ってくる両親にうんざりする。

 実家は長兄が継いでいるし、甥も二人いる。三男なんだから、放っておいてくれてもいいのに。


 荷物を置いてベッドに倒れ込む。

 信じられないような一日だった。

 朝、目が覚めたら魔力が無くなっていた。

 呪いを掛けられて魔力回路を壊された事を聞いた。

 魔力回路は治癒は出来る。しかしそのためには治癒師側が対価を払う。


 突然の事に感情が追いつかない。

 あんなに絶望を感じた事は無かった。

 それなのに、聞いた話が衝撃的すぎた。


「何なんだよ、もう」


 ソフィアという謎の治癒師。

 なぜ彼女が魔力回路の治癒に詳しいのか。いや、呪いについてもか。


「風呂、入ろう」


 昨日は一晩治癒室で過ごした。

 さっぱりしてから夕飯を食べよう。


 シャワーを浴びると、温かい湯が色んなものを流してくれるようだった。

 髪の毛を拭きながら部屋に戻ると、何か違和感がある。


「何だ?変な感じがする」


 ぐるりと部屋を見渡して、違和感の正体に気づく。

 部屋の中に、女性用と思しき物が置いてある。

 棚の上のシュシュ、使いかけの化粧水。

 アルフォンスはハッとして手に取った。


「恋人の物?」


 団長室では誰も分からないと言っていたが、確かに存在するようだ。


 部屋の中を必死に探す。

 女性用のパジャマらしきワンピース、自分のものではない櫛、銀細工の手鏡。

 机の奥の、大切な物だけを入れてある引き出しを開けた時、見覚えのない物を見つけた。


「指輪?」


 大切そうに仕舞ってある。小さなケースに入ったそれは、明らかに女性用のサイズだ。


 ケースから出して指輪を眺める。

 ぐるりと蔦のような模様があるが、石は付いていない。

 まるで…。


「結婚指輪みたいなデザインだな。何でこんな物が」


 買った覚えのない指輪。


「ん?刻印が…」


 A to S


「イニシャルか。A to …S?」


 自分の机から出てきた物なら、普通に考えればアルフォンス自身が誰かに贈ろうとしたんだろう。


「俺は、誰かにプロポーズをしようとしていたのかな」


 では誰に?


 Sのイニシャルを持つ相手。


「そう言えば、ソフィア嬢もSか…」


 ふと過ぎる考えに、首を振る。


(それは無いか。彼女とは初対面だし)


 恋人が記憶喪失ならば、落ち着いてなどいられないはずだ。

 冷静に話していた彼女を思い出し、違うとだろうと思う。


 アルフォンスが考えていると、手元が急に光った。

 魔法紙だ。

 封筒を開けるとカイルからだ。

 明日の朝、団長室に来るようにとの内容だった。

 フェイ師長が言っていた、詳しい話という事だろうか。


「さっさと夕飯食べて、もう寝よう」


 アルフォンスは指輪を元に戻し、キッチンに向かった。










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ