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私を忘れた貴方と、貴方を忘れた私の顛末  作者: コツメカワウソ


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31 SIDEアルフォンス②

 アルフォンスが再び目を覚ましたのは、既に朝になってからだった。

 ゆっくりと体を起こす。


(何だろう。痛みは無いのにどこか違和感がある…)


「あ、目が覚めたんですね。痛みはありませんか?」


 声を掛けたのはクリオだ。


「ああ」


「じゃあ僕は副団長に連絡してきますね~」


 クリオはそう言うと医務室を出て行った。


(何だろうこの違和感は。今まで感じた事がないこの感じは…)


 首を回し、手を開いたり閉じたりする。


「あれ…?」


 生まれてから今までずっと感じていたもの。


 それが無い。


「魔力が…無い?」


 手の平を見つめ火を出そうとするが、何の反応も無い。

 水も、風も、何も出ない。


「俺は…魔力を失った…のか?」


 いつだ?

 デモンズハーピーと戦った時、確かに魔法を使った。

 その後か?

 いつだ?


「あの光…奴が笑って…それで…」


 体の中から無理矢理何かを引っ張り出されるあの感覚。

 内臓を手で触られているような、感じたことのないあの感覚。


「あ…あぁ…あの時…なのか。あれが…」


 苦しい。

 自分はもう魔法が使えないのか。


「あぁ…」


 言葉が出ない。

 何故、何故!


「アルフォンス!目が覚めたか!?」


 カイルが医務室に入ってくる。

 アルフォンスは手の平を見つめたままだ。


「おいアルフォンス!しっかりしろ!」


「副団長…俺…俺…もう…」


「言うな!何も言わずに俺と来い!理由はレオナールの部屋で話す!」


 カイルは呆けているアルフォンスを立たせると、支えるようにして団長室に連れて行った。


 廊下を歩きながら、時折り「あぁ…」と声を出すアルフォンスを何とか歩かせ、部屋のドアを閉める。

 崩れ落ちそうなアルフォンスをソファーに座らせると、カイルはアルフォンスの前で膝をついた。


「副団長、魔力が…」


 泣きそうなアルフォンスの手を取って調べるが、彼の言う通り魔力は感じられなかった。


「もう…どうしてこんな…」


「昨日、デモンズハーピーと戦っただろう?」


「…はい」


「アイツは魔力のある人間に呪いの掛け、高魔力保持者からは魔力を奪って魔力回路を壊すそうだ」


 カイルの言葉に耐えきれず、アルフォンスは涙を流す。


「なぜ…なぜ…こんな…俺は…」


 ボロボロの涙を流すアルフォンスの手を握り、そっと背中をさする。


「俺は…ずっと……もう魔力は…何で…」


 言葉にならず、泣き続けるアルフォンスの側にしばらく寄り添う。

 どれ程そうしていたか、ドアが開きレオナールが入って来た。


「カイル、アルフォンスは…」


 二人の様子で察したのだろう。

 レオナールは口をつぐんだ。


「…だんちょ、う…俺…もう…」


 子供のようにしゃくり上げるアルフォンスの側に座り、レオナールはそっと肩に触れる。

 カイルと同じように魔力を探るが、やはり何も感じられなかった。


「アルフォンス…魔力の事で、お前に話がある。落ち着けというのは…無理だが、今回の事について治癒師の話を聞いてもらいたい」


 下を向いて泣き続けているアルフォンスは、何も言わずに話を聞いていた。


「…やっぱり、魔力、無いんですね。もう…魔導騎士は…続け…られな、い…」


 言いながらまた涙をこぼす。


「いいか、アルフォンス。治癒師と話をするんだ。とにかく、今はそれしか言えない。済まない…」


 レオナールとカイルは今朝早く尋ねて来たフェイから、魔力回路の治癒について話を聞いた。

 ソフィアが治療を考えているとも。

 魔力回路の治癒ができる事にも驚いたが、対価の内容を聞いて簡単には許可出来なかった。

 ソフィアへの負担が大きすぎる。

 いくら恋人を救いたいからと言って、あまりにも危険だ。

 対価によっては日常生活にも支障をきたす。彼女はまだ二十二、これからの人生の方がずっと長い。



「…話を聞いても、魔力は…戻らない…じゃないです、か」


 アルフォンスは学生時代、魔力回路は治らないと教えられた。しかし壊れる事は稀であると。

 どうして自分が。

 悔しくて、悲しくて、涙が止まらない。


「とにかく治癒師と話をしてくれ。あと、呪いの事だが…」


「呪い?」


 確かにカイルはさっきそう言っていた。

 だが魔力が無くなった事ばかりに気を取られ、すっかり忘れていた。


「あぁ。命に関わるものではないようなんだが…」


 レオナールは言いにくそうに顔を顰める。


「愛する人を忘れ、子供を作れなくなる呪いだと」


「は?」


(何だそれ?愛する人?俺には恋人なんかいない、え?忘れてるのか?子供を作れなくなる?)


 意味が分からない。

 魔力を奪われてそんな呪いを掛けられて。

 本当に最悪だ。


「たからその事で、治癒師と話をしてもらいたいんだ」


 レオナールはしきりに首元に手をやりながら、「あー、これか…」と呟いている。

 二人はフェイから話を聞いた後、誓約魔法を掛けられた。魔力回路の事を伝えられない事を実感したのだろう。

 それを知らないアルフォンスは、レオナールの様子を不思議そうに見つめた。


「団長?」


「いや、何でもない。とにかく今はここにいて、詰所には行くな。治癒師からの話聞いてからだ」


「…分かりました」


(どうせ魔力は戻らないんだ。俺は…もう…)


 アルフォンスは絶望感に打ちひしがれて、ぐったりとソファーにもたれかかった。



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