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私を忘れた貴方と、貴方を忘れた私の顛末  作者: コツメカワウソ


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「ジョシュアやめて!」


「やめないよ!今回の申請の事だって、家族に相談もしないで決めた事だろう!?どうしていきなり師匠に連絡したんだ?家族みんな誓約下にいるんだから何か言ってくれても良かっただろ?僕だって父さん達だってソフィアの事が心配なのに!」


 突然始まった姉弟喧嘩に誰も口を出せない。


 フェイは思う。シモンは敢えてジョシュアを寄越したのだと。

 ソフィアの思いを知った上で、そうさせない為だったのだろう。

 王命ではない状況で対価を知らずに治療を受ける。

 シモンは、アルフォンスにとって知るべき内容を知らされずに選択を迫るのは、フェアではないと考えているのだ。

 それは当然の事だと思う。

 フェイとてソフィアの考えに納得している訳ではない。

 西方騎士団の責任者としても、一人の人間としても。

 しかし彼女の置かれていた環境は、そう考えざるを得ないというのも理解は出来る。ずっと悩んでいたであろうソフィアは、頑固だが愚かでは無い。

 だからこそフェイは、自分からは言う事は無いとソフィアに告げた。


 誰もが口を挟めない中、アルフォンスが声を上げた。


「あの!対価の事とは?彼女の、ソフィア嬢の人生に関わる事って?」


 ジョシュアはアルフォンスに冷たい視線を送る。


「教えて下さい。彼女が払う対価とは何なのですか?」


 一方的にジョシュアがアルフォンスを睨んでいたが、ため息を吐いて口を開いた。


「魔力回路の治癒は自然の理に反します。だから治癒師は代償として“何か”一つを取られる」


「何か一つ?」


「ええ。四肢のどれかの機能、聴力、視力、記憶…記録上では胎児だった事もあります。何を対価として支払うことになるかは、治療してからでないと分からない。魔力回路の治癒が一般に知られていないのは、治癒師にとって余りにもリスクが高いからです。膨大な魔力を得る事が出来る一方で、治療をした者は罰を受ける。先程、この国でかつて行われた魔力回路の治癒についてお話しましたよね。ソフィアの希望だからと敢えて伝えませんでしたが、当時の治癒師達は人質を取られたり家を潰すと脅されて、無理矢理治療させられていました。そうやって高魔力保持者を作りだろうとしたんですよ。私のような人間が増えれば、国としての戦力は揺るぎないものになりますから。だからこそそれを繰り返さない為に、誓約魔法をかけて管理することになったんです」


(あぁ、知られてしまった!)


 ソフィアは何も言えずに下を向く。

 アルフォンスに知られてしまった。


「そんな…それじゃあ俺を治療したらソフィア嬢は…」


「ソフィアがあなたを何と言って説得したのかは分かりませんが、姉は何かを取られる。対価を払うと言うのはそういう意味です」


 アルフォンスは目を見開いたままソフィアを見つめた。


「…対価が何か教えなかったのは、なぜ?」


 アルフォンスが泣きそうに見えるのは気のせいだろうか。


「…あなたに、憂いなく魔力を取り戻して欲しかったから、です」


「巫山戯るな!俺は…誰かを犠牲にしてまで、そんな力は欲しくない!」


 ドンッ、とアルフォンスはテーブルを拳で叩いた。

 憎々しげにソフィアを睨み付ける。


 あぁ、だから言いたくなかったのだ。

 彼ならきっとそう言うと分かっていたから。

 勝手な事をしている自覚はある。

 これはあくまでソフィアの我儘だ。

 ソフィアはただ、アルフォンスに魔力を取り戻して欲しかった。

 魔導騎士としていて欲しかった。

 彼の今までの努力を無駄にしたくなかった。それがひいては国を、皆の幸せを守るためだと。

 母と同じように、愛する人に憂いなく生きていって欲しいと願って。

 それが自分の生かされたのだと意味だと思いたくて。


「ソフィア、分かっただろう?大切な事を隠して治療するなんて無理なんだよ。師匠だってそう思ったから、僕をここへ寄越したんだ」


 ジョシュアの目は優しかった。


「ソフィアが父さん達の事で悩んでたのは知ってる。何を思ってランセル卿に対価の説明をしなかったかも何となく分かる。でも、彼に説明しないのは卑怯だよ。だからこそ彼はこんなに怒ってる。彼はソフィアの事を心配しているんだよ。他の人だってそうだ。皆、ソフィアのやろうとしてる事を心の底から賛成してる訳じゃ無いはずだ」


 諭すように言うジョシュアに、ソフィアは何も言えなかった。

 アルフォンスの魔力を取り戻す事、とにかくそれが一番の願いだ。

 アルフォンスは優しいから、対価の事を知ったら断るだろうと思っていたし、しかしそれで彼の夢が絶たれて欲しくなかった。

 愛している人を悲しませたくない。自分にはそれが出来る。そうする事に後悔は無い。

 彼を治療したら、対価によっては騎士団には居られないだろう。それで良いと思っていた。自分が対価として取られなかった事を知った時からずっと、自分が何のために生かされたのかと考えてきたから。

 運良く生活に困らないような対価なら、厄災の間は働いて、その後は北方に戻るつもりでいた。


 全て私の自己満足で、独りよがりだったのか。

 アルフォンスを助けたいだけだったのに、結局傷つけてしまった。


 色んな考えが頭の中を巡る。

 どうすれば。

 いや、それでも自分はアルフォンスの魔力を取り戻したい。何を対価として取られても、後悔はしない。

 それだけは絶対に揺るがないのだ。

 


 







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