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次の日、ソフィア達は団長室でシモンを待っていた。
レオナール、カイル、アルフォンス、フェイ、エリー、ソフィアの六人は皆一様に黙って転移陣を見つめている。
しばらくそうしていると、転移陣が光り出した。光が消えると、王宮魔術師のローブを身につけた人物が現れる。
被っていたフードをゆっくりと外すその人物を見て、ソフィアは目を見開いた。
(え…?)
その人はレオナールに向かって頭を下げる。
「初めまして、このような形で急に伺って申し訳ありません」
にこやかな笑みを浮かべて挨拶をする。
「あなたが、シモン・バードナー殿…?」
シモンはライオネルの兄、確か四十代の筈だ。しかしそこにいるのはどう見ても二十を幾つも超えていないであろう青年だった。
「私は王宮魔術師のジョシュア・バードナー。我が師シモンより、こちらに伺うようにと仰せつかりました」
「バードナー…シモン殿のご子息か?」
レオナールが戸惑いながら尋ねる。
「シモンは私の養父です。私の本当の父はライオネル・バードナーです」
「ライオネル…北の英雄殿か」
「はい。伯父夫婦には子供がいません。バードナー家を継ぐ為に伯父の元に養子に入りました」
失礼、と言うとジョシュアはソフィアの所にツカツカと歩いていく。
「え…あ…っ」
「ソフィア!!」
何か言おうとしたソフィアを遮って、ジョシュアが大声を上げる。
他の五人は何が起こったのか分からずに動けない。
「馬鹿ソフィア!全然連絡が無いと思ったら突然あんな手紙を送ってきて!僕と師匠がどれだけ驚いたか分かる!?」
ガクガクとソフィアの肩を揺さぶりながら、ジョシュアは続ける。
「朝出勤したら急に師匠に呼ばれてあの手紙を見せられて。ソフィアも母さんも思い切りが良すぎるだろう!?何でこんな大切な事をすぐに決めちゃうのさ!もうね、絶対怒ってやろうと思ってきたんだ!」
「ちょ、ちょっと待ってジョシュア!他の人も居るから…」
「え?あぁ、そうか。昨日の怒りのまま転移しちゃったから。ソフィアの顔見たらつい」
皆が呆気に取られるなか、レオナールが戸惑いながら声をかける。
「ジョシュア殿とソフィアは…」
「あぁ、そうでしたね。皆様の前で少々取り乱してしまいました。申し訳ありません。いつも姉がお世話になっております」
「「は!?」」
先程ソフィアに怒鳴りまくっていた筈なのに、急によそ行きの笑顔を貼り付けて答えるジョシュアに皆が揃って声を上げた。
「あの…すみません。私の弟です…。師匠が来ると聞いていたんですが、なぜかジョシュアが…」
ソフィアが申し訳なさそうに言う。
「ソフィアは英雄殿の娘…だったか」
カイルが驚いたように言う。
しかしジョシュアはカイルの驚く様子も気にせずソフィアに続けた。
「ソフィアがあんな手紙を送ってきたから、師匠は会議です。参加者には陛下もいます!分かるよね、意味」
「…はい」
魔力回路の治癒には上位の術師の許可が必要だ。しかし陛下まで参加している会議とは…。
今の国王は治癒師の誓約を違えるような事はしない人物だと聞いたことがある。
前王と違い、決して王命で無理やり治癒をさせるような事はないと。
父の時の事があるからか、やはり思ったよりも大ごとになってしまっている気がする。
どちらにしても、師匠もジョシュアも魔力回路の治癒には反対なのだろう。
もう少し上手く根回しが出来る時間があれば良かったが、厄災を前にそれも叶わない。
ジョシュアは思い切りが良過ぎると言っていたが、勢いは大切だ。それに、父の時も今回も悩んでいられる時間がないのだから。
「という訳で、師匠の代わりに私が伺った次第です。経験に関しては師匠には敵いませんが、治癒師としての修行も終えております。一級魔術師でもありますので、上位の術師として今回の件について対応出来る権限は持っております。安心下さい」
にっこりとジョシュアが笑う。
この空気の中、流れるように話すジョシュアにさすがの団長も顔が引き攣っている。
いや、それは他の人も同じか。
「とてもお若いようにお見受けするが、一級魔術師とは。貴方はとても優秀なのだな」
フリーズしていたカイルが言う。
「ええ。今年二十一になりました。魔力量で言えば国内でも五本の指には入るかと。その理由は…もう聞いていますか?」
そう言うとジョシュアをパチンと指を鳴らした。
「防音の魔法を掛けました。同時に誓約に介入しましたので、自由に話せますよ」
「これほどまで魔力が高いとは…」
フェイが驚いたように呟く。
団長達に魔力回路の治癒について話をした時、フェイも同じように誓約に介入した。しかしそのためには呪文を唱えなければならないし、もっと時間も掛かる。
彼自身も高魔力保持者だが、足元にも及ばない。
過去、国が無理やり作り出そうとした理由も分かる。
「それでは魔力回路の治癒について、話を始めましょうか」




