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プロローグ

 甘さは逃げない。条件をそろえれば、必ず姿を見せる。私はそう思っている。


 夜明け前の控え室で、工具箱を開いた。

 遮光カバー、レシピオン、フォーク荷重ガイド。番号札を並べ、封印紐の結び目を確かめる。どれも私の“弁論”に欠かせない。


 私はリュシア。菓子弁護人。

 王都では味が争われる。私の法廷は台所にある。言葉だけじゃ足りないから、手順で語る。匂いも見た目も揃えて、同じ条件で比べて、それから結論に行く。


 今日は王妃の慈善茶会。私は招待客だ。鞄が少し重いのは職業病。使わない道具まで、つい入れてしまう。

 助手のヨナが小声で笑う。「レシピオンは持ってきたけど、今日は出番なしでしょ」

「そのつもり。できれば、ね」


 扉の向こうで、控えの弦が音合わせを始める。

 粉糖の袋がかすかに鳴り、金箔が薄い光を返す。鞄の中のガイドの重りは、ただの荷物みたいに静かだ。


 小鐘が一度、二度、三度。

 法廷キッチン、開廷。

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