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なんど、死んでも毒から逃げられない令嬢が、 魔法使いに救われるまで……。  作者: にのまえ


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3話

 ジロウじいは今回の件で、ルーラお父様の前で深々と土下座したが、そんな彼にお父様は静かに首を振った。


「頭を上げなさい、ジロウ。長年庭師を務めてきた君が、そんな間違いをするとは到底信じられない。」


「旦那様……ありがとうございます。」


 ジロウじいの顔には安堵の色が浮かんでいたが、その手はまだ小刻みに震えていた。私はその様子を見ながら、胸の奥がチクリと痛む。


(……カミーラお母様がこの毒の花を花茶にする前に気付けて、本当に良かった。もしそうなっていたら、お母様だけじゃなく私も飲んでいたかもしれない)


 ⭐︎


翌日


 ジロウはスノーフレの白い花が植えられていた場所を詳しく調べていた。その途中、彼の顔がみるみる青ざめていく。


「旦那様……これは……!」


 ジロウじいは掘り返した土を、お父様に見せた。


「見てください。この植え方は私のものではありません。何者かがスワーロンを引き抜き、毒の花スノーフレを植え替えたのです。」


 ルーラお父様の表情が険しくなる。


「何者かが、この公爵家の庭に毒花を仕込んだというのか? ジロウ、すぐにスワーロンを植え直せ。庭にあるすべてのスノーフレを掘り起こすのだ。」


「かしこまりました、旦那様!」


 ジロウじいと庭師たちが慌ただしく動き始めるなか、私は考えを巡らせていた。誰が、どうやって警備の目をかいくぐり、そんな危険なことをしたのだろう。


 ⭐︎


 ――犯人は誰? いったい何のために?


 答えが見つからずもどかしい中、一つだけ気になる出来事を思い出す。三回目の巻き戻りのとき、婚約者だったカサロから贈られた青い毒花のことを。あの時もそうだ、カサロは毒について詳しかった。


 ――この植え替えも、カサロの仕業なの?


 しかし、すぐにその考えを否定する。いくら毒に詳しいとはいえ、まだ七歳のカサロがこんな計画を立てられるわけがない。それに、カサロの両親も今はまだ裕福だ。没落するのは、私とカサロが十二歳のときのはず……。


(犯人は別にいる。でも誰?)


 ⭐︎


 その日の夕方、スワーロンの植え替えがすべて完了した。ルーラお父様が満足げに頷き、ジロウに労いの言葉をかける。


「よくやった、ジロウ。これで一安心だ。」


「ありがとうございます、旦那様。」


 その光景を横目に、私は庭の片隅で慎重に行動していた。花が掘り返される瞬間を狙い、一本だけ毒花スノーフレをこっそり手に入れたのだ。


 ⭐︎


(……書庫で読んだあの書物が正しければ、毒に少しずつ慣らしていけば、体は毒に強くなるはず。少量なら、きっと死なない……)


 震える手で、スノーフレの白い花びらを摘み取る。毒に慣れれば、きっと次の危険にも対処できるはずだ――そう信じて、私は小さく息を飲んだ。


(怖い……怖いけど。これが、私の生き残るための賭け……やるしかない!)

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