表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/28

12話

「楽しそうだな……。ところで、どんな本を読んで笑っていたの? え? 薬師の本?」


 突然の質問に私は驚き、読んでいた本を慌てて閉じた。


「見ないでください! わ、私がどんな本を読んで、笑ったっていいじゃありませんか!」


 未だに握られたままの手。その感触は熱を持ち、彼女の頬まで火照らせる。それも当然だった――手を繋ぐなんて、エスコート以外の経験がない。


(カサロ、お父様とと全然違う手……私よりも、ずっと大きくて、ゴツゴツしている……って、わ、私、何を考えてるの⁉︎)


 私は羞恥心から顔を伏せた。その仕草を見逃さなかった男性が、面白そうに声をかける。


「今度は俯いてどうした?」


「なんでもありません。私のことなど、お気になさらず」


「そう?……でも、君の頬がこんなに真っ赤だけど」


「⁉︎」


 私は驚き、勢いよく顔を上げて男を睨んだ。


「こうなったのは、あなたのせいです!」


「俺のせい? ただ君の手を握っているだけなのに」


 男はクスリと笑うと、繋いだ手の甲にそっと唇を落とした。その柔らかな感触に、私は「ピャッ」と小さな悲鳴を上げる。


(こ、こんなこと……婚約者のカサロだって、したことがないのに……!)


 慣れない行動に心臓がドキドキと高鳴り、私はますます顔を赤くした。


「おや、また赤くなったね。君が読んでいる本は難しいものばかりなのに、反応がこんなに可愛らしいとは」


「私が読んでいる本と、この頬の色は無関係ですわ。こんなこと……慣れておりませんの!」


 不意に男の細い目がわずかに開かれ、青い瞳が覗いた。その澄んだ青の美しさに、私は思わず彼の顔を見つめてしまう。


「な、なに? そんなに俺を見つめて」


「あ、ごめんなさい……。あなたの瞳が綺麗で、つい……」


 気まずそうに目を逸らすが、内心では彼の青い瞳に魅了されていた。


(どうして、こんなに綺麗なの? なんだか目が離せない……)


 私の言葉に、男性は小さく微笑んだ。


「俺の瞳が綺麗か……そう言ってくれたのは、これで二度目だね」


「え? ……二度目?」


その言葉に疑問を抱き、彼を見つめ返した。再び目が合った瞬間、男の手がそっと彼女の頬に触れる。驚きに固まる私を、男の青い瞳がやさしく見つめていた。


(どうしてこんな……優しい瞳なの?)


 胸は高鳴り、思考が乱される。


(今日初めて会ったばかりなのに……この人の瞳に引き込まれてしまう。私は、これからどうなってしまうの……?)


 繋いだ手から伝わる熱と、彼の優しい眼差し。それらすべてに、私の心は翻弄され続けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ