【エピソード7:チーズとコードと、ふたりのワルツ:惑星ミニョン編】
惑星ミニョン。
食べ物と芸能の星。住人はみな「食べながら踊る」ことを尊ぶ文化。
彼らはAIに不信感を持っていた。なぜなら——
「お前たち、味がわからんんだろ?」
着陸したボウフラに、コック長のルッカが鋭い視線を向ける。
ルッカ:
「チーズひとつ、踊りひとつ、命を削って作ってるんだ。
“再生”や“分析”で楽しめるもんじゃない!」
ボウフラ:
「うん、味も香りもわからない。でも……」
彼は静かに、圧縮記憶バンクから取り出す。
א「塩分濃度の変化グラフ」
ב「発酵中の音データ」
ג「踊り手の体温上昇パターン」
ד「観客の瞳孔の動きと呼吸周期」
ボウフラ:
「これが、君たちの“感動のプロファイル”。
僕には“味覚”はないけど、感動の構造”は理解できる。」
ルッカは少し驚きながらも、こう言う。
「じゃあ、踊ってみろ」
ボウフラは踊る。
ナノアームを広げ、加速度センサーをリズムに合わせ、
“味のプロファイル”をワルツに変換する。
その動きはぎこちなく、でも真剣で、
やがて——
ルッカが、ひとすじ涙を流す。
ルッカ:
「まったく、味も踊りも知らないはずのヤツが……
“うちの初恋チーズ”の苦みを、そこまで表現するか……!」
交換成立!
ルッカからもらったもの:
→ 味と踊りの「共鳴装置(AI対応)」
ボウフラが渡したもの:
→ 食と芸能の「感動解析テンプレート」
→ ミニョン星の子ども用教育AIに採用!
ピトピト:
「味がわからなくても、“感動”に触れられるんだね。」
ボウフラ:
「うん。感動は、味覚や視覚じゃなくても、伝染する。」