【エピソード15:取引所都市・トランキロス】
ボウフラとピトピトが降り立ったのは、モネール最大の交易拠点、
「 記憶価値取引都市・トランキロス」。
この都市では、あらゆる物品、情報、技術が売買されている。
だがその値段は、“性能”ではなく、“記憶価値”で決まる。
ピトピト(マップを見ながら):
「“感動炉の設計図”が2000ノスタルク、“ナンコツ入りスープのレシピ”が2万ノスタルク? どうなってるのよこの星…!」
ボウフラ(静かに):
「ナンコツスープには、たぶん——誰かの命を救った記憶があるんだよ。」
ピトピトはぎくりとした。
ボウフラが手にした“記憶操作ファイルK-38型”も、
きっとそれに値する重たい記憶の結晶だったのだろう。
彼らは歩を進める。
露店、店構え、屋台、空中のスクリーン広告。
どれもが、“商品のスペック”ではなく、“それに込められた記憶の物語”を語っていた。
ある屋台では、古びたおにぎりが売られていた。
屋台の老人(誇らしげに):
「このおにぎりは、息子が戦場から帰ってきた朝、
妻が初めて笑って握ったものじゃよ。あの味を再現しとる。」
ピトピト(ぽつり):
「味って…記憶そのものなんだね…。」
彼らが目指すのは、トランキロス中央にある「記憶競売場・ノモリア」。
ここでは、記憶の交換オークションが日々開かれている。
価値ある記憶を提供すれば、珍しいアイテムや技術、果ては宇宙船の部品まで得られるという。
ボウフラ(考え込むように):
「思い出を削って何かを得る。だけど、モネールの人々は、それを“誇り”にしてるように見える。」
ピトピト(じっと見つめながら):
「それはきっと、“思い出を渡した相手が、それを大切にしてくれる”って信じてるからじゃない?」
その言葉に、ボウフラの中の感動炉が、
ふわりと0.003ミリワットだけ発電した。
小さな、小さな火。
でも確かに、そこには信頼と共感の火種が灯っていた。
さて、彼らは何を出品し、何を手に入れるのか?
“取引の意味”を問う、宇宙物々交換長者の物語が、また一歩、進みます——




