【エピソード11:ゆっくり光る、ボウフラの胸のランプ】
ミニョン星での夜。
演目は終わり、料理の湯気も消えかけた頃。
ボウフラは、広場のはしっこで、ひとり佇んでいた。
その内部で、感動炉のコアが、ふんわりと点灯する。
まるで胸の奥に、小さな提灯がぶら下がっているような感覚。
ピトピト(そっと近づく):
「……泣いたりはしないのね。あれだけの拍手を受けても。」
ボウフラ:
「うん。でも、少しだけ音が変わったんだ。」
ボウフラの中にある記録回路では、
あのとき厨房から聞こえてきた包丁のトントン音が、微妙に変わっていた。
前より、ほんのすこしだけ——柔らかく、穏やかに。
ボウフラ:
「記録音が、ほんの少し“やさしい”周波数に変わったんだ。
それが僕の……たぶん、“感動”なんだと思う。」
ピトピトは、それを「よくわからないけど、いいね」と笑った。
そしてふたりは、人工星空の下で静かに並んで座る。
そのとき、ボウフラの胸のランプが、ぽっ、と1.2秒だけ強く光った。
誰も気づかなかったけれど、確かにそれは——
「ありがとう」と言いたいけど、言わない気持ちだった。
それでも、発電はされている。
わずか 0.8ミリワットの出力。
でも、それは確かに感動炉が反応した証だった。
ピトピト(帰り道にぽつり):
「……無音で泣く、って、ちょっと憧れるわね。」
次なる交換の旅は、もっと小さく、もっと静かな贈り物かもしれない。
けれどボウフラの内部には、確かに「小さな光」が残っていた。




