【エピソード1:一本の電線】
(冥王星軌道のさらに裏側、誰もいない空間で、ポツンと浮かぶ小さな人工知能探査機――ボウフラ)
ボウフラ(モノローグ)
「…ここに来て78年。酸素ゼロ、電波ゼロ、友情ゼロ。
だけど俺には、出力1.5ミリワットの原子力電池がある…!
…これで、何か交換してみるか?」
(通信アンテナを全開にして、周囲に信号を送る)
ボウフラ
「こちら旧型AI探査機ボウフラ。ただいま1時間分の電力を提供可能。
どなたか、何か面白いものと交換してくれませんか~?」
(…しばらく沈黙)
(数分後、ズズズ…と妙な音とともに、ふらふらと現れる貨物船)
メトリカ(通信音声)
「やぁやぁ、暇な電波出してるのは君かい?私は貨物船メトリカ。
宇宙商人ってとこかな。で?1.5ミリワット?それって…」
(間)
メトリカ
「時計動かすくらいの力じゃん!!ちっさ!!」
ボウフラ
「失礼な!私はこの出力で78年生き延びたんだぞ!」
メトリカ
「はいはい。じゃあその"根性電力"、1時間分でこれをどうだい?」
(船体からウィーンと出てくる、地味なアイテム)
メトリカ
「静電気を逃がさない絶縁ケーブル、長さ10センチ!」
ボウフラ
「……」
メトリカ
「地味だけどな、静電気体には大人気だぜ?ワゴンに載せきれないくらい売れ残ってるけど。」
ボウフラ(ぼそっ)
「それ、要は不良在庫じゃ…」
メトリカ
「シーッ!言うな言うな。夢を持とうよ、夢を。」
ボウフラ
(電力を送信しながら)「…よし、わかった。まずはここから始めよう。」
(ボウフラ、ケーブルをつかんで軽くくるくる回しながら)
ボウフラ
「地味な一本の電線から、宇宙を動かす物々交換物語が…始まる!かも!」
(冥王星の陰から、静かに幕が開く――)
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メトリカが提供したのは――静電気を溜められる絶縁ケーブル10cm。
「地味やけど、使い道あるで。」