第6話
数時間後、三人は森の出口に差しかかり……。
「今日は、どうもありがとうございました。本当に助かりましたし、色々と勉強になりました」
アルフレッドは足を止めて、改めて二人に頭を下げる。
レナの「この森を出るまで、私たちと一緒に」という言葉を覚えており、そろそろお別れだと思ったからだ。
「あらあら。そんなに堅苦しく、何度もお辞儀する必要もないのに……。でも、そうね。それほど感謝してる、っていうなら、少し私の趣味に付き合ってもらえるかしら?」
「はい、僕で出来ることなら何でも」
優しいお姉さんという雰囲気のレナの言葉に、アルフレッドが二つ返事で応じると……。
「レナ、またか……」
「いいじゃないの、彼もこう言ってるんだし」
ミリィと軽く言葉を交わしてから、レナはアルフレッドに指示する。
「じゃあ、そこに立って。気楽なポーズで、そう、ニッコリ微笑んで……」
言われた通りにするアルフレッド。その耳に聞こえてきたのは、レナの呪文詠唱だった。
「スタッフト・メタモルフォーゼ!」
ポンという軽い音と共に、アルフレッドの体が白い煙に包まれる。
その煙が晴れた後、そこに冒険者アルフレッドの姿はなく、代わりに30センチ程度のぬいぐるみが転がっていた。
「ふふふ……。また素敵なぬいぐるみが手に入ったわ」
慣れた手つきでそれを拾って、レナが懐にしまう。
こうして今日も『低級の森』では、また一人の冒険者が行方不明となり……。
レナの部屋の棚で、ぬいぐるみとして飾られるのだった。
(「ぬいぐるみ好きな白い魔法士」完)