第5話
「今日が初めてなら、いくら『低級の森』とはいえ、一人じゃ危ないかもね」
「うむ。たまにはセカンドゴブリンみたいなのも出てくるからな、今みたいに」
「はい、冒険者組合でも言われました。『油断しないように』って。あと、最近『低級の森』で冒険者が行方不明になるという噂も」
アルフレッドは正直に告げる。
もしかすると「それなのに何故一人で来たのか」と少し怒られるかとも思ったが、二人ともそんな言葉は一切口にせず、代わりに優しく提案してくれた。
「それじゃ、この森を出るまで、私たちと一緒に行きましょうか?」
「はい! よろしくお願いします!」
こうしてアルフレッドは、一時的にレナやミリィと組むことになり……。
その後も何度かモンスターと遭遇したが、最下級のゴブリンやウィスプばかり。セカンドゴブリン以上の敵は、二度と現れなかった。
「つまらんな。これでは手応えが無さすぎる」
「文句言っちゃダメよ、ミリィ。だって『低級の森』なんだから」
ミリィとレナの二人どころか、どちらか一人でも全滅できそうなモンスター相手でも、二人は必ず一匹、アルフレッドのために残してくれていた。
とても配慮の行き届いた先輩冒険者たちだ。これが経験を積んだ冒険者というものか、とアルフレッドは改めて二人を尊敬する。
もちろんモンスターが現れるまでは、気さくな年上のお姉さんたちだった。森を歩きながら、たわいない雑談をする余裕もあるくらいだ。
「最初に『可愛い男の子』なんて言われて、びっくりしただろうが……。このレナは、可愛いものが大好きでな。今でも部屋はぬいぐるみだらけだ」
「あら、いいじゃないの。女の子って、そういうものでしょう? あなたの部屋が殺風景すぎるのよ」
「しかし、いくら何でも……。どうせ今日も、ぬいぐるみのコレクション、また一つ増やすつもりだろう?」
「あら、どうかしら。ふふふ……」
ぬいぐるみと言われても、アルフレッドにはピンとこないが……。
言われてみれば、武器屋でもアクセサリーの類いに混じって、剣や盾などを模した布製おもちゃが売られているのを見た覚えがある。
なるほど、あれは女性冒険者に需要があるから置いてあるのか。
そんなことを考えるのだった。