第4話
本来の若者の力量ならば、いくら最下級のゴブリンとはいえ、一人で二匹同時に相手するのは荷が重かっただろう。
しかし、今回の二匹はどちらも逃げ腰。しかも彼の後ろに凄腕の冒険者二人が控えており、それはモンスターの側でも承知している、という状況だった。
多少の時間はかかったものの、若者一人で二匹のモンスターを倒すことが出来て……。
「ありがとうございました。おかげさまで、助かりました」
改めて若者が頭を下げると、白いローブの女性冒険者がニッコリ笑う。
「よかったわ。私たちだって、他の冒険者が困ってるのは見逃せないもの。特にそれが可愛い男の子だったら、なおさらだわ」
「えっ……?」
きょとんとする若者。
彼女たちは確かに自分よりいくつか年上のようだが、しかし自分ももう小さい子供ではないのだ。今さら「可愛い男の子」扱いされるのは驚きだった。
「失礼だぞ、レナ。初対面の男子に向かって、そんな言い方……」
「あら、ごめんなさい。そうね、自己紹介もまだしてないものね」
二人が言葉を交わすのを聞いて、若者はハッとする。助けてもらったのは自分なのだから、自分の方から名乗るのが礼儀だろう。
「申し遅れました。僕はアルフレッド。今日が冒険者デビューの剣士です」
彼が背筋をピンと伸ばすと、二人は優しい声で応えてくれた。
「あらあら、そんなに形式ばる必要ないわ。もっと気楽に……。私は魔法士のレナよ、よろしくね」」
「うむ。俺はミリィ、見ての通り魔法剣士だ」
青い髪のミリィは、手にした剣を示してみせる。
刀身が青く光っているのは魔法の冷気を帯びているからであり、いわゆる魔法剣だったのだ。だから単なる剣士ではなく魔法剣士だ、とアピールしたいらしい。




