第3話
「助太刀する!」
鬱蒼とした森に突然、低い女性の声が響き渡った。
三匹のセカンドゴブリンが、一斉に後ろを振り返っている。声の主がいるのは、そちら側なのだろう。
しかしモンスターの動きは遅かった。一瞬のうちに何者かがモンスターの間を駆け抜けて、剣を一閃。それだけで三匹のうち二匹を斬り伏せていた。
「アイシクル・ブレイク!」
新たに聞こえてきたのは、一人目よりも高めの声。攻撃魔法の呪文詠唱だった。
最後に残ったセカンドゴブリンが凍りつき、粉々に砕ける。
強敵だったはずのセカンドゴブリンは、こうして三匹とも、あっさり全滅するのだった。
「大丈夫か?」
惚けたように見守っていた若者に声をかけたのは、二匹のセカンドゴブリンを屠った女性冒険者。
彼女はモンスターたちの間を走り抜けた勢いで、若者のすぐ目の前まで来ていたのだ。
「あっ、はい。ありがとうございました……」
礼を述べながら、改めて彼女に目を向ける。
両手に持った剣は、どちらも刀身が青く光っていた。艶やかな長い髪も、着ている革鎧も同じく青色だが、女性用ではなく男物の鎧のようだ。それでも胸がキツくないのだから、スレンダーな体型なのだろう。
顔の輪郭は面長で、やや逆三角気味。目鼻立ちはスーッと整っているが、目つきはキリッと鋭い。目尻が少しだけ吊り上がっているのも合わせて、いわゆるキツネ顔という感じだった。
「油断しないで。まだ終わってないわ」
もう一人の女性冒険者も、若者の方へ歩み寄ってくる。
フード付きの白いローブを身に纏い、ローブの隙間から見えるインナーは赤いシャツ。フードを被っているのでわかりにくいけれど、ふわりとした銀髪らしい。ふっくらした丸顔で、目や口なども丸みを帯びている。
ちょうど一人目とは対照的に、タヌキ顔という言葉が若者の頭に浮かんだ。
「うむ。俺たちは、あくまでも助太刀だ。お前の獲物、全て奪うつもりはないからな」
「最下級のゴブリンなら、あなたでも倒せるのでしょう?」
二人の言葉で、若者はハッとする。
改めて振り返ると、二匹のゴブリンが、ゆっくりと後退りしている最中だった。
慌ててバタバタと走り出すより、気配を殺しながらの方が逃走も成功しやすい。モンスターたちは、そう判断したらしい。
「はい!」
二人の女性冒険者に勢いよく答えてから、若者は二匹のゴブリンに斬りかかる!