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第1話

   

「森に入るまでは、あんなに明るかったのに……」

 小声で独り言を呟きながら、彼はブルッと体を震わせた。


 木々の枝から伸びる葉はどれも大きく、あたたかな太陽の光を遮っている。そんな鬱蒼とした森の中を、一人の若者が歩いていた。

 茶色い革鎧や腰のショートソードを見れば、彼が冒険者なのは誰の目にも明らかだろう。しかも、鎧も剣も汚れひとつない新品だ。まだルーキーの冒険者だった。

 ここは『低級の森』と呼ばれる森型ダンジョン。最下級のゴブリンやウィスプなど、初心者でも戦えるモンスターばかりが出現するエリアだった。

 もちろん、初心者専用のダンジョンというわけではない。中堅やベテランの冒険者も「あえて弱いモンスターを相手にして、少しずつ経験値稼ぎをしよう」とか「たまには息抜きがてら、弱い敵しか出ないダンジョンへ行こう」とか考えて、ここを訪れる場合も結構あるらしい。

 それどころか、最近では『低級の森』に入った冒険者が行方不明になるという事件も頻発しており、

「いくら低級モンスターとはいえ、油断しないでくださいね。ほら『追い詰められた鼠は猫をも殺す』という言い回しもあるでしょう? モンスターだって命懸けなんですから、狩られたくなくて、必死に抵抗してくるんですよ」

 と冒険者組合の受付窓口でも注意を受けたばかり。

 それでも若者は「僕だって優秀な成績で冒険者学院を卒業したんだから!」という自負で、こうして一人でダンジョンへ飛び込んだのだった。


「……ん? もしかして、あれは……」

 森の小道を歩いていた若者が、ふと足を止める。

 十数メートル先で、右側の茂みが不自然にガソゴソと揺れているのだ。

 まだモンスターの気配を察知することには慣れていないけれど、さすがに音と動きまであれば「そこに何者かが隠れているのだろう」と見抜くのは簡単だった。

 どうやら冒険者が通りかかるまで身を(ひそ)めて、横から奇襲という魂胆らしい。

 そう考えた若者は、ソーッと近寄りながら、腰の剣を抜いて……。

「隠れてるのはバレてるぞ! さあ、観念して出てこい!」

   

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