ラクシャ公爵、帰宅する。
他愛なき日常会話です。
夫が帰ってきたようだ。
「ただいま…」
声に覇気なく、物思いに沈んでいる。
何かあったらしい。
「旦那さま?」
「リア、私には友だちがいない…」
「………はぁ?」
思わず、素っ頓狂な声をあげてしまった。
お腹空いていると悲しくなる夫は、ホットミルクに腐るほど…病気になるわよ、旦那さま。砂糖の入れすぎでを飲み、
白シャツに黒いズボン。そして最近、新しくあげた赤のヒヨコエプロンに着替える。
あげた時、喜ばれた。
めちゃくちゃ喜ばれた。
「恩赦と祝日、どちらがいい?」と提案されたくらいの喜びようだった。
最近、見事に留年した私は申し訳なくての後ろめたさからとは言えなかった。
「父の日と誕生日とバレンタインデー以外に貰えた…」と泣かれた。
「このエプロンに身を包みと、神の後光に守られた気になる…」
「良かったわね、旦那さま」
「やはり家はいい…。愛する妻に…最高だ」
ざぁあっと小豆を鍋に入れて煮始める。
「旦那さま、小豆を煮るの?」
「私は愛する君を想い、最近豆を使った料理を極めたいと神に誓いを立てている」
「へぇ~、そうなんですね~」
「豆を皮で包っていいよね…。ぷっくら立つ豆も最高だし、皮で包む…。アレって本当にいい…」
何故か頬を染める夫に、
「旦那さまは本当に頑張り屋さんですね〜」
エールを贈っておく。
夫も公爵という仕事をしているから、大変なのだろう。
それなのに仕事を終わったら、台所に立つ公爵。
中々いない出来た人だ。
きっと料理を通じて、癒やしを求めているのだろう。
「も…もう一回」
「はい?」
「頑張り屋さんって」
「旦那さまは頑張り屋さんですよ?」
「いい…。やっぱり夫婦っていいよねぇ…」
ジーンと来る夫。
「そうですね〜」
「明日休みだからお出かけしようね?」
「いいですね。どこに行きます?」
「デートだよ?どこがいい?」
夫、ノリノリだ。
「貴方の行きたい所に」
どうやら少しは気分が浮上したのだろう。
私は夫に笑みを浮かべながら応える。
貴方が幸せだと、私も嬉しい。
「公園に行こうよ」
「いいですね。後はどこに行きます?」
「君の行きたい所は?」
「何処へでも。貴方が行く所に付いていきますよ」
「さすが公爵夫人だね」
軽口を叩く夫に、
「私は貴方だけの公爵夫人ですからね」
私も軽口を返して、笑い合う。
そんな日常。
宜しくお願いいたします。