↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
64/224

ルール

感想は時間が空き次第返信させて頂きます

毎回すみません

「お気をつけて!」

「私達はここで待っています」

「もし遅くなっても、交代で待機しておきますので」


スタッフ達に見送られ、智彦、羅観香、タカモリの四人は、彼岸花の社を進み始めた。

本来であれば撮影スタッフ全員で進む予定だったが、通路の狭さ、智彦一人では全員のカバーは難しいと判断。

大きなカメラではいざと言う時に邪魔になると考え、羅観香所有の霊が映るハンディカメラを携行する事となった。


「暗い……」

「八俣君は良くすいすい進めるねぇ」

「夜目が利くんですよ。こっちです」


入り口から差し込む陽が徐々に弱まり、社内は一面、闇だ。

ただ不思議な事に周りの空間だけ藍色に色付き、ごく狭い範囲ではあるが、薄らと何があるか程度は見える。

とは言え、異能によりどんな闇夜も早朝のように白ずんで見える智彦には、関係無し。

二人を先導する様に、ゆっくりと廊下を進む。


「……コレが話にあった彼岸花、かな?」


闇夜にぼんやりと浮かぶ、青白い彼岸花。

廊下の木板から突き出ている異様なソレに智彦が触れると、パァッと花弁が開き、燈色の光が灯る。


「うわぁ、綺麗……」

「コレはまた幻想的だねぇ」


その彼岸花を起点に、廊下が眩く照らされた。

智彦が周囲を見渡すと、廊下に沿って、襖や障子で隔たれた部屋が並んでいるようだ。

所々壊れた部分が、何者かが存在する事を物語っている。


(入り口を壊したから、すぐさま何かが来ると思ったんだけど……)


だが、智彦が危惧した事は起こらなかった。

気付いていないのか、それとも問題ないと思われているのか……。

単純に、目の前のソレのように『室内が壊れる前提』な為、そういう通知が行かないようになっているのかもと、智彦は思考する。




「さて、とりあえず撮ろうか。えと、八俣君。すまないけどお願いできるかなぁ?」


タカモリの声に頷き、智彦はハンディカメラを構えた。

偶然か必然か解らないが、彼岸花の社へと紛れ込んでしまった智彦。

星社長との契約上、羅観香を守る必要がある。

なので撮影に協力する必要は無いが、羅観香の為には必要な事だろう、と。

智彦は護衛兼カメラマンに徹する事にした。



「こんばんは、オカタカの時間です。今日のゲストは、あの夢見羅観香ちゃんを、お招きしています」

「皆さん、こんばんは!夢見羅観香です、よろしくお願いします!」

「えー、御存じのように。別の局のではありますが、僕と羅観香ちゃんは……」


通常であれば、得体の知れない閉鎖空間でこのような事をしている場合ではない。

だが、いつでも戻れる安心感。

加えて智彦と言う存在が、二人をいつも通りの精神状態にしていた。


「さて皆さん、僕達が今どこにいるか、解りますかぁ?」

「私達は何と!あの彼岸花の迷宮に来ています!」


タカモリに応え、智彦はぐるっと周りを映し込む。

台本は無いが、二人の息はぴったりだ。


(このカメラだと嶺衣奈さんも映るけど……今更か。……ん?)


ふと、羅観香の背後で微笑んでた嶺衣奈が、視線を移した。

長い廊下の、奥。

深い闇の向こうへ。



「……二人とも、静かにしてこっちへ」


未だ目視はできないが、近付いてくる嫌な雰囲気。

智彦は光る彼岸花の隣から三人を下がらせ、近くにあった部屋へと入る。


「智彦君、何かあったの?」

「うん……、嶺衣奈さんが何か感じたみたい」



シャン




紙が破れた障子の向こうには、先ほど光を灯した彼岸花が見える。

息を潜める、三人。

各々の呼吸音に、耳障りな音が混ざり始めた。



シャン


  シャン



タカモリと羅観香の呼吸が乱れ、眼に恐怖が浮かんだ。

羅観香が智彦の腕を、ギュッと掴む。

次第に近づいてくる、鈴の音。

智彦はカメラ越しに、音が聞こえる闇を見つめる。



シャン


 シャン

 

  シャン

  

 シャン



鈴の音と共に、闇から白い輪郭が生まれる。

女面と呼ばれる能面を被った、白装束の巫女。


足音は、無い。

ただ鈴の音だけが、その存在を知らしめるだけだ。



シャン。



明らかに人間の雰囲気でないソレは、先ほど灯した彼岸花へと近づき、その花弁を無駄な動作なく千切り取った。

次は彼岸花に明かりを灯したこちらを探す、はず。

智彦はいつでも攻撃できるように、右腕に力を籠める。



シャン。



だが、能面の巫女は特に何もせず、闇の中へと戻って行った。

シャン、シャン、と。

音が遠のき、聞こえなくなる。

智彦が先程の彼岸花に目を向けると、喪失した花弁が蘇り、明かりが灯る前の状態へと戻っていた。





深い、呼吸。

羅観香とタカモリは額に大粒の汗を浮かべ、その場へとへたり込む。


「こ、怖かったぁ~……」

「あれが能面の巫女、かぁ」


「みたい、ですね。成程……えげつないな」


智彦はカメラを向けたまま、この『世界』のルールを考え始める。


恐らくあの能面の巫女は、光に反応する。

音も、そうだろう。

だが、この闇の中を進むには、あの彼岸花に明かりを灯していくしかない。

つまり、常にあの脅威に怯え、進んで行かなければならないのだ。


加えて。

彼岸花に光が灯っている=侵入者が近くに居る事を示す。

ならば、そこを起点に侵入者を探すのが一般的であろう。

なのに能面の巫女は、そうしなかった。


ここでは、「光を灯しながら、死角を使い、能面の巫女から逃げる」のを求められているのだ。

この『世界』を作った存在の、道楽か。

それか、そうする事で恐怖心を抱かせ、それを糧としているのか。


能面の巫女に捕まればどうなるかは解らない……が、基本的に元居た場所へと戻される、らしい。

問題は、来根来南葉……行方不明者が出ている事だ。

ルールが変質して、戻れなくなったのか。

あるいは戻す人を選んでいるのか……。


(まるでゲームの中の世界だな……、富田村とは仕様が違うけど)


富田村は、アレはゲームの世界だったのだろうと、智彦は考えている。

自分でも何言ってるか解らないが、なにせ、レベルアップの様な仕組みがあったからだ。

だがソレにより、今、自分は生きているのだと実感する。


(この『世界』は、どうなんだろうな)


あの能面の巫女を倒す、のではなく、逃げる。

なら、強くなるような要素は、もしかしたら無いのかも知れない。


(……まぁ、ここのルールに従う理由は無いか。襲ってきたら反撃しよう)


自身の中で簡単に結論を出し、智彦は立ち上がった。

羅観香とタカモリも習うが、先ほどまで貼り付けていた恐怖は無くなっている。


「いやぁ、さっきまでは楽しかったのに……、やっぱ怖いなぁ」

「でも、この間の洋館に比べたら、この位大丈夫ですね」


「……戻るって選択肢もありますけど?」


「まさかぁ!勿体ない!」

「うん!智彦君もいるんだし、このまま進もう!」


この二人は強いな、と。

智彦は苦笑を浮かべ、先導し始めた。


彼岸花は、触れなければ灯りは灯らないようだ。

智彦は隠れる場所がある所のみ、光を灯し、能面の巫女から逃れながら、ゆっくりと進んでいく。

勿論、三人の撮影も忘れない。


「智彦君、ありがとうね」

「……ん?何が?」

「君なら、あの巫女さんを簡単に倒せるはず。そうしないのは、私達の為、だよね?」

「あー、まぁそれもあるんだけどね」


羅観香からの言葉に、智彦は曖昧に頷いた。

勿論、羅観香の言う通りでもあるのだが、鏡花からお願いされた行方不明者探しもあるのだ。


この世界を『クリア』すれば、見つかるのではないか。

ならばルールを無視するような事は極力止めようと、智彦は考えている。

勿論、見つかり、襲い掛かってきた場合は別ではあるのだが。



「おや?何かなぁ、コレ」



ふと、タカモリが床に散らばる何かを見つけた。

智彦は近くにある彼岸花へと手を伸ばし、光を灯す。


「食べ物……?賞味期限は切れてませんし、新しいですね」

「だね、僕達以外にも他にも人がいるのかなぁ?」


タカモリが手にしたそれは、容易にカロリーを補充できると謳ったブロック型の食料品の箱だった。

近くにはペットボトルも落ちており、タカモリの言う様に誰かが居た形跡が見て取れる。

こういうのすらスルーしてる能面の巫女に、智彦は何となく可笑しくなってしまった。


(悪臭もする。どこかで用を足したか)


このような状況下でも、腹は減るし生理現象も起きる。

男ならともかく、羅観香がそう言う状態になったらどうするか。

その場合は一度戻ればよいだろうと考える智彦の眼に、部屋の端に鎮座する大きな葛籠が映る。


「大きいね。人が二人は入れそう」

「アレが来たら、これに入って隠れる事もできるかぁ」


成程、そういう要素もあるんだな、と。

智彦は嶺衣奈が能面の巫女に反応していない事を確認し、カメラ片手に葛籠の蓋を開けた。




「…… …… ……なんでココにいるんだよ」




そこには、行方不明とされている藤堂と横山が体育座りで並んでおり。

その揺れる虚ろな目を、智彦へと向けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
開けたらキモいマネキンが這い出してきてビックリしたサイレ○トヒルを思い出すので、見なかったことにして、そっと閉じたいッス(苦笑)
この元ネタのゲームではレベルアップは望めないでしょ……
[一言] そういやアホ3人はレベルアップしに来たんだっけ。 前の村みたいなサバイバル系ならともかくスニークしながら逃げる系だと身につくのは気配察知くらいな気がする というかあっち側のことも多少知ってる…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。