表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/208

怪異とは

自身の作品の設定をふんわり解説

穴だらけですがそういうもんだと割入り楽しんで頂ければ


再度人除けの結界を張った鏡花が、息を吐きながら重機のキャタピラ部分に座った。

横から、智彦が冷えた缶コーヒーを鏡花へと渡す。


「口裂け女、って、ずいぶん昔からいますよね」

「別に長生きしてるわけじゃないのよ。昔から、ちゃんと退治はしてるんだから」

「え?じゃあ今探してるのは?」

「生まれたばかりの怪異、って感じかな」


何言ってるんだ、な智彦の顔に、鏡花は口角を上げる。

こんな化け物でも、知識面が追い付いていない、と。

智彦の事情を考えると、ソレは仕方ないのだが。



「まず、八俣君は怪異がどうやって生まれるか、知ってる?」



鏡花の問いに、智彦の脳裏には富田村の惨状が浮かんだ。

あの村は、クソ神の……。


「呪い、かな?」


智彦の眼に浮かんだ、闇。

鏡花は背筋が凍るもあえて気付かない振りをして、智彦の回答へ応えた。


「そ、それも答えの一つだけどね。正解は『原因が多すぎて解らない』の」

「解らない?」

「貴方が言った呪いもあるし、言霊、霊の実体化、怨霊の集合体化、人が怪異になる事もあるわよ」

「そんなに。それ以外にも色んな原因があるって事ですか?」

「うん。今回に関しては人々の不安が具現化したモノ、って考えられてる」


鏡花がポケットから、折りたたんだ布製のマスクを取り出し、広げた。

智彦も以前は常備していたが、最近では専ら人の多い室内だけだ。


「以前はさ、マスクしなきゃって強迫観念に近いのがあったよね?」

「そうですね、マスクを付けない、て選択肢は無かったかな」

「じゃあ、マスクしてない人にはどういう感情を持った?」

「そりゃ、不安と言うか怒りと言うか……あぁ、そう言う事、か」


智彦が何となく察したのに、鏡花は満足そうに頷く。


「さっき言ったように、都市伝説と言えばクチサケ、それで、この『マスクを外す事への負の感情』。これが合わさって、具現化した……って事」


勿論これも可能性の一つだけどね、と。

鏡花は両手の掌で、缶コーヒーをころころと弄ぶ。


「そして、それは言霊によって存在感を得る」

「たしか、言葉にも力があるって奴ですね」

「そそ。今はゲーム等でそういう知識は広がってる。けど、それがどれだけの力を生み出すのかは、想像できない人が殆ど」

「それは仕方ないかと。でも、言霊と言っても、今はネットの時代、ですよね」

「変な言い方だけど、怪異と言うか超常現象がね、時代に合わせてきちゃったのよ」


鏡花の苦笑に、智彦は首を傾げる事で返した。

だが、何となくだが、鏡花の言葉を理解する。


「ネット内の書き込みも、怪異を生み出す性質を持つようになった?」

「声を発しない言霊、としてね。もうほんと、こっちが付いていけないわよ」


本当にボンヤリだが、智彦は今現在起こっている異常事態を理解できた。

とは言え、彼は積極的には関わらないであろう。

家族、友人、縁のある人が困っていれば。

もしくは、知らない人であれどお願いされれば、首を突っ込むが。

少し前までは一般的な普通の学生だったのだ。

正義感とかそう言うのは無いし、あっても、あの村での一年がそう言う感情を弱めてしまった。


基本的には、自分が生き残るためだけの力。

智彦の異能は、それだけの存在である。


智彦は母親へ帰宅が遅れるというメールを送り、再び鏡花へと尋ねた。



「話は解りました。で、口裂け女を捕まえるのと、どう関係が?」

「人を恨み、狂暴化し、被害が増えないようにする為、かな」


鏡花が話す内容を、智彦は頭の中でまとめる。

都市伝説内の怪異には必ずと言っていい程、弱点が付随してくる。

口裂け女だと、ポマードの匂いが例だ。


「漫画とかでさ、主人公に強敵が現れた。そいつは絶対に倒せない強さ。……面白くないよね?」

「確かに。弱点などが無いと話が進まないし、つまらない」

「そう、それなのよ。その弱点が身近なモノであれば、痛快なの」

「日本の怪異に対して銃が弱点とか、核兵器じゃないと死なない、は流石に無理ですからね」

「うん。だから『一般人でも対抗手段がある』と面白おかしく怪異が伝わって行くのよ」


実際はどこから生まれどこまで効果があるか解らない、怪異の弱点。

だが、それはまるで本当の様に、実際にそれで生き延びた人がいるように、噂となる。

それが言霊となり、怪異にそういう弱点を付随していく……らしい。


『怪異を倒せる』だと、その場で怪異の存在が終わってしまう。

だから皆が続けて楽しく語れるように、『弱点』で次の被害者が出るように、話が広がって行く。


「で、弱点はあくまで弱点。そんなの何度もされた怪異は」

「人を恨んで狂暴化してしまう、わけですか」

「そう、今のクチサケはまだ人を脅かす程度。捕まえてどうするかは解んないけどね、っと」


鏡花が空き缶を投げると、自販機横のゴミ箱へ綺麗に入る。

満足そうに頷くと、得物を構えた女性陣へと合図を送り出した。


「あ、もしクチサケ見たら、その場で消して欲しいかな。んで、連絡くれると嬉しいかも」

「人を戦闘狂みたいに……。解りました、もし出会ったらそうします」

「それと、今回出動してるのは私達だけじゃないの。クチサケを消そうとする武闘派もいるから、気を付けて」

「もし、その人達と出会ったら?」

「できれば命は奪わないで。彼らも世の為を考えての事、だからね」


俺が容易く人の命を奪うように思ってるなぁ、と智彦が苦笑いしていると、鏡花達は夜の闇へと消えて行った。

ああいう存在が、人知れず秩序を守っているんだな、と今更ながら感心してしまう。



(さて、帰るか)



智彦は片手でスチール缶を潰し、パチンコ玉程の大きさに圧縮。

そこで、異能の『第六感』が働いた。


自身への危害では無く、知り合いへの危害を感じ取り、智彦は疾走する。

次第に濃くなる、血の匂い。


智彦が足を止める。

そこにはいくつかの黒い影に囲まれ、血まみれとなった上村が蹲っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 口裂け女みたいなベタなのがいるのなら花子さんやテケテケもいるんだろうが、テケテケみたいなモンスター系は組織はどう対処するのか気になる。 智彦なら物理でボコれるから問題ないんだろうが。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ