後ろに立つ少女 ~プロローグ~
その少女は、本が好きであった。
両親も本が好きで、世界中の本を集めていた。
やがて部屋に入らなくなった本は、増築した部屋に収納されていく。
近所から「図書館」と呼ばれるその建物にて、少女は一日中過ごした。
「私が本の中の主役になって、その本の中で生きているの!本の数だけ、いろんな私が!世界があるの!」
童話は勿論、ファンタジー、推理、恋愛、SF、歴史……。
少女は食欲旺盛で、あらゆる本を読み漁った。
そして世界中の本を読む為に、世界各地の言語を勉強し、習得した。
それだけでなく、古い本を読む為に、古語等も身につけていく。
「お父様、私は将来この書庫を、皆に開放したいの!」
「お母様!この本を翻訳しました!見て下さい!」
本に囲まれた生活、そして本に携わる仕事。
彼女は本と共に生きる事を望み、それを成す能力もあった。
両親も娘を誇りに思い、自身の趣味を含めなお一層、本を集めた。
「お父様!お母様!このラノベと言うのはとても新鮮です!」
ある日、少女の父親が、古本市で大量の本を購入してくる。
母親は呆れつつも、娘の喜び様に苦笑いを浮かべた。
ふと、少女が一冊の本に興味を向けた。
埃を被った、貴族鼠色の表紙。
だが何も書かれていない、分厚い本。
少女が、表紙を捲る。
溢れてくるのは、黒、赤、音、……闇。
少女が住んでいた家は焼け落ち、残骸からは両親の凄惨な遺体が見つかった。
だが、少女の遺体は、ついに見つからなかった。
警察などの必死の捜査も空しく、犯人は逮捕されなかった。
いや、そもそも、何が起きたのかも解らなかった。
『あぁ、素敵な恋物語!私もいつかは素敵な恋を……!』
そして少女は、今日も、本を読む。




