動き出す運命の歯車
※この作品は、ボイコネライブ大賞に応募する為に投稿させて頂いた作品です。
セリフが九割九部を占めておりますので、そういった作風が苦手な方は読まれない事を推奨します…!
0:神楽 廃墟 地下奴隷収容所ー
男A:「やめておけ、もう使いもんにならねえよ」
男B:「ちっ…こちとら反応を楽しみたいってのに、ぴくりとも動きやしねえ。死んでんじゃねえのか?」
男A:「商品として売り出すのも難しいだろう。連中もえげつない事をしやがる」
男B:「そうか?俺は寧ろこういう調教された状態の方が…ん?」
奴隷女:「う…ウウ…」
男B:「なんだァ?ちゃんと生きてんじゃねえかよ。くくく、まだまだ楽しめそうだ」
奴隷女:「ウ…ウウう…私…は…」
男B:「あぁ?何だよ聞こえねえなァ」
奴隷女:「私は…」
0:ー
ナレーション:「新生の王」
0:ーエドガルド中南区域 設営コテージ 二階ー
ヘラト:「ん…ん…」
エレナ:「起きた?ヘラト」
ヘラト:「んん…?ああ…エレナか…」
エレナ:「はあ、全然起きないから心配したわよ」
ヘラト:「あ、ああ、すまない…。随分深い眠りについてしまっていたみたいだ。ここまでの旅、緊張の連続で、十分な睡眠が取れていなかったらしい」
エレナ:「無理もないわね…。国からの重要な任務なんだもの」
ヘラト:「俺はどのくらい眠っていた?」
エレナ:「十二時間くらい、ずーっと寝付いていたわ。ふふ、なんだか子供みたいだったわよ」
ヘラト:「…恥ずかしいな」
エレナ:「エドガルドから出立してもう三日が経つわね…。国が設営してくれているコテージのおかげで、なんとか体力面の消耗は抑えられているけれど…」
ヘラト:「フッ…。そう不安そうな顔するなよ、お前らしくもない」
エレナ:「むー、人の気も知らないで。そりゃ不安にだってなるわよ…!これからどんな困難が待ち受けているか分からないのよ?」
ヘラト:「確かにその通りだな。でも、それ以上に、俺達は確固たる意思のもと、努力を重ねて実力をつけてきた。準備は自信に繋がり、自信は良い結果に繋がる。育成機関でも、そう習った筈だ」
エレナ:「それは…そうだけど…」
ヘラト:「俺達に待っているのは、良い結果だ。…そうに決まってる。そう信じられるだけの材料は身につけてきたはずだ」
エレナ:「…はぁ。学生時代もそうだったけど、あたしって、本当あんたに励まされてばかりね。覚悟を決めてきた筈なのにな」
ヘラト:「…不安になる気持ちは分からなくもない。でも、俺達には、守るべき家と国がある。何としても成し遂げるんだ…」
0:お腹の音が鳴るヘラト。
ヘラト:「あっ…」
エレナ:「ふふ、散々カッコつけた事言っておいて、空腹には抗えないのね?」
ヘラト:「…ぐ…」
エレナ:「ヘラトも一人の人間だものねー?ふふ!下でスクルドがご飯を作ってくれているみたいだから、行きましょ!」
ヘラト:「…仕方ないな」
エレナ:「なぁーにカッコつけてんだか」
0:ー 設営コテージ 一階 ー
スクルド:「あニンジン、ジャガイモ、タマ〜ネギ〜♪」
エレナ:「…何を歌っているのかしら」
ヘラト:「さあ…」
0:キッチンで料理しているスクルドに近づくエレナ。
エレナ:「…あんた、ちょっとは静かに出来ないの?」
スクルド:「黙ったら死ぬ男、スクルド・スノウでございま〜す!」
エレナ:「あーはいはい、分かったわよ。いつもの茶番ね」
ヘラト:「スクルド、何を作ってくれているんだ?
スクルド:「……何だろうな……俺にも……分かんねえよ……」
ヘラト:「…は?分からない?」
エレナ:「ヘラト、真に受けなくて大丈夫だから。もう茶番はいいから、何を作ってくれているのか早く教えて」
スクルド:「ふふ……何だと思う?」
エレナ:「何歳だと思う?って聞き返してくる女か!もういい、見るから!」
スクルド:「やめて!!!この子達に触らないで!!」
エレナ:「離婚寸前の夫婦かあんたは!!早く…見せな…さいっ!!!」
スクルド:「ゴフぁッ!!」
エレナ:「わぁ!!シチューじゃない!ここに来るまでに身体が冷えていたから、丁度食べたかったのよ♪」
ヘラト:「さすがスクルド。気が効くぜ」
スクルド:「あぁ…そう、だろ……俺ってば最強…カハッ」
0:その場に倒れ込むスクルド。
0:設営コテージ内。椅子に座り、ご飯を食べる三人。
エレナ:「ん〜♪お野菜が柔らかくて美味しい!」
ヘラト:「スクルド、ありがとうな」
スクルド:「フハハハハ!もっと俺を褒め称えたまへ!!」
エレナ:「…すぐに調子に乗るんだから。それさえ無ければカッコつくのに」
スクルド:「俺からナルシズムを取り除いたら何も残らねえよ?」
ヘラト:「俺は昔馴染みで慣れてしまったな。慣れ…というより、麻痺か…?」
スクルド:「さて、クーラーボックスで冷やしておいた飲み物を…っと。んぐ…んぐ…ふぃ〜!ブワうめキン冷え〜!!!」
ヘラト:「なんだそれは…?」
スクルド:「ん?知らねえのかヘラト。ブワうめキン冷え」
エレナ:「聞いた事ないわよそんな文言」
スクルド:「ブワァァア!うんめえ!!キンキンに冷えてやがるゥ!天使からの贈り物だァ!!の略だよ」
ヘラト:「…どこかで聞いた事があるような」
エレナ:「美味しい、でいいじゃない。なんでそんな分かりづらい表現を使うのよ」
スクルド:「まあまあ、いいじゃねえかよ!少しでも食事を楽しむ為の魔法の言葉なんだって」
エレナ:「…まあ、いいけどさ」
ヘラト:「ふっ…温かい料理に、美味い飲み物…何から何まで、至れり尽くせりだな」
エレナ:「スクルドだって疲れてるのに…あんたってば優しいから、何も言わずに作ってくれてるけどさ」
ヘラト:「言ってくれれば俺達も手伝うぜ?毎度任せきりで悪いしな」
スクルド:「…いや、いいよ」
エレナ:「どうしてよ?毎回毎回作るのだって、いくら体力のあるあんたでも、流石に疲れるでしょ?」
スクルド:「だって、お前ら………壊滅的に料理下手じゃん」
エレナ:「…殴るわよ?」
スクルド:「…ヘラトは俺達のリーダー的存在で、道の先導やら一日の計画やらもまとめてしてくれてっし、エレナは女の子だからな。体力の有り余ってる俺がやるのが一番なんだよ」
エレナ:「それは…助かるけど…」
スクルド:「そんな事より、いつ次の目的地に着くんだ?このコテージでもう3軒目だよな?」
エレナ:「…分からないわ。今はとにかく、スタミナが続く限り進んでいくしか…」
スクルド:「…というか、本当に辿り着くのかよ。こんな先の見えない雪原から、大都会の城下町なんて。俺達、王様に騙されてんじゃね?」
ヘラト:「…愛国心のかけらもない発言だな。エドクリム様が言うんだ、間違いない。徐々にではあるが、気温の方も、進むにつれて上がってきているからな」
エレナ:「今考えてみれば、私達って村の外の世界に出た事一回も無かったもんね。他の国や村とは隔離されたど田舎だし」
スクルド:「都会の奴らってどんな感じなんだろうな?可愛い子いっぱい居るかなぁ…」
エレナ:「…あんたってホントそういう事しか考えないよね」
ヘラト:「都会の人間は、俺達とは発想や見聞の広さが違う…そこをフォローするのが、あの環境で培った純粋な地の力…スタミナだ」
エレナ:「あんたはあんたで闘いの事しか考えてない!本当極端だよねあんた達…」
ヘラト:「何言ってる!!一週間後には闘技大会があるんだぞ!今この時も、大会に優勝する為に何が出来るかを考え…」
エレナ:「あーはいはい分かったわよ!」
スクルド:「四年に一度の祭典だったよな。ドーラ総合闘技大会…全国から選りすぐりの猛者達が集まり、トーナメント形式で勝ち残ったたった一人の優勝者には超豪華な景品が贈られる…それも今年は特にレベルの高い大会になる事が予想されているらしいからな…」
ヘラト:「ああ…何せ景品は、あのドーラの秘宝。今回の俺達の目的もそうさ。何としてもあの秘宝を手に入れなければならない。中には大会の優勝による名声と地位や、それを得ることによって活動領域を広げる事が目的の奴も居るらしいがな」
スクルド:「その秘宝が、俺たちの国の最後の希望…なんだよな」
0:ー二ヶ月前 エドガルド城 王宮 客室の間ー
エドクリム:「今日集まってもらったのは他でもない。君達に国からの重要な任務を請け負ってもらえないかと思い、声を掛けた次第である」
スクルド:「国からの重要な任務、ですか?」
エレナ:「私達に…?」
ヘラト:「どういった内容の任務でしょうか?」
エドクリム:「単刀直入に伝えると、我が国、エドガルドの貧困を脱する為の要人となって欲しいのだ。今からその内容を詳しく話す。…君達は、この世界に実在する四つの秘宝というものを知っているかな?」
エレナ:「四つの秘宝…」
ヘラト:「いえ、存じ上げておりません」
エドクリム:「この四つの秘宝の意味するところだが、それら全てを集めた時にのみ、財宝眠る世界の宝物庫ワールドイズマインの扉を開ける鍵となるのだ」
スクルド:「わ、ワールドイズマイン?何だかよく分からないな…」
エドクリム:「簡単に言うと、全ての秘宝を集めた時…それは莫大な財力となる」
エレナ:「財力…貧困を脱する…まさか…」
エドクリム:「そうだ。ここエドガルドは近年、より貧困を極める事態となった。このままでは国の者が飢餓状態に陥り、挙げ句の果てに物資や食料の奪い合いが起き、国内での内部紛争にまで発展してしまう…。そうならないよう、君達には直接これら四つの場所に行ってもらい、それぞれに散らばった秘宝を集めて来て欲しいのだ」
エレナ:「…そんな、急に…」
スクルド:「何も秘宝の財力に頼らなくても…もっと確実性のある方法のほうが良いのでは?」
エドクリム:「考えたのだ!勿論、地道に貧困から脱するという事であれば、既に国全体で動いている事案もある。しかし、それだけではこの国の深刻な貧困問題は解決出来ない。…今すぐにだ。今、まとまった財力が無ければ、真にこの国を救う事は出来ん…!」
エレナ:「それにしても、この方法では一時的な回復にしか…!」
エドクリム:「…この国には、貿易による利益の提供手段が極端に少ない。他国から隔離されている辺境の地…交通機関も満足に通っていない。取引する際の移動にも莫大な資金と時間がかかる。他国との繋がりの無さがこういった結果を招いたと言っても良いだろう。きっかけを作る為の資金さえあれば、この国は変えられる…!残された手段は、今伝えたように一瞬にして莫大な財力を手にするか、女子供を他国の暇を持て余した金持ち共に売るしか無くなってしまった。しかし、人間を売り捌くなどという非人道的な事、私には到底無理だ…!それこそ、そんな事をしてしまっては内部紛争の火種となる…」
エレナ:「もう、どうしようもないくらいに追い込まれてるんだ…」
ヘラト:「そこまで、この国の貧困は深刻に…」
エドクリム:「すまない、本当に不甲斐ないッ…。(土下座をして)頼む!!!この通り!!!!エドガルドを救ってくれ!!!!!」
エレナ:「え、えええ!?ど、土下座!?」
スクルド:「こ、国王様!?お顔をお上げください!!!」
エドクリム:「いいや!!国民と君達の命の重さに比べれば、私の土下座など、申し訳が立たぬほど、安いものッ…!!!しかし、もはやこうする事でしか…」
ヘラト:「国王様!!心中お察し致します…!ですが、この国の皆を愛しているのは、我々も同じです。この国に希望が残されている限りは、この命尽き果てるまで、責務を全ういたします!エレナ、スクルド、王様と国の皆は、俺達に全てを託そうとしてくれているんだ。こんな栄誉な事があるかよ!訓練兵として修行を積み重ねてきたあの四年間は、この日の為にあったんだって、そう思わねえか!?」
エレナ:「…ええ、そうね。私なんかの力で、何が出来るかは分からないけど…。でも、この国の危機を、兵士として放っておくわけにはいかないわ!!」
スクルド:「女子供を売り捌くなんて…そんな事になるくらいなら、俺達がやりますよ!!」
エドクリム:「すまない……そして、ありがとうッ…!!!」
ヘラト:「国王様、その任務、謹んでお受け致します。
0:任務の要因をエドクリムから伝えられた三人。
ヘラト:「…しかし、一つ疑問が。そのような重大な任務に何故我々が選ばれたのでしょうか?」
エドクリム:「ああ…それはだな…通常の任務であればベテランの有志兵達に頼んでおったが、今回は様々な環境下で生きながらえる必要のある長期遠征。若くてスタミナのある人間が適任となる。そんな若き有志達の中でも、スクルド君は判断能力、エレナさんは発想力。そしてヘラト君は人一倍強い意思の力。それぞれ、生きながらえる上で大切な項目のみに絞り、各成績がトップの者を選抜せよと命じたのだ」
エレナ:「う、うそ…私達そんなに評価されてたの!?毎日けちょんけちょんに言われてばかりだったから、てっきり劣等生なのかと…」
スクルド:「指導長…本当はしっかり俺達の事を見てくださっていたのか…」
ヘラト:「…なるほど、理解致しました。教えて頂きありがとうございます」
エドクリム:「ああ。…それからもう一つ、君達に伝えていない事があったな。今回の任務の目的地だが、こちらからある程度の情報は事前に提供出来る。この世界に実在する四つの秘宝はそれぞれ、大都市ドーラ、砂漠の国エジプシアン、水没林アマゾン、そして楽園エルフ…これら四つのエリアに、散り散りに存在している」
スクルド:「ドーラ、エジプシアン…聞いた事のある場所がいくつかあるな」
ヘラト:「大都市ドーラ、砂漠の国エジプシアン、水没林アマゾンに関しては何度か聞いた事があります。…しかし、残り一つのエルフというのは…?」
エレナ:「私も初めて聞いた。座学の成績は良い方だったと思うけど、そんな場所記憶には無いし、一度も聞いた事が無い気がする…」
エドクリム:「エルフに関して何も知らないのは当然の事だと思う。何故ならば、楽園エルフは禁忌の国と言われているからな」
ヘラト:「禁忌の国…!」
エドクリム:「ああ、そうだ。私もあの国の全てを知るわけでは無いが、遠方の知人から聞いたところ、エルフは現在、他国の人間を全く受け入れていないらしい」
エレナ:「そんな…」
ヘラト:「では、その国の秘宝はどうやって…」
エドクリム:「エルフに関してはこちらから既に策は練ってある、安心してくれ。別日で作戦会議を設け、その時に詳細を話すつもりだ」
ヘラト:「そうでしたか。分かりました」
エドクリム:「それから、長旅で心身の疲労がつきまとう今回の旅…当然、任務中の境遇面は補償する。国からの物資で食料、衣類、住居、全て不平不満が出ないようこちら側から補填しようと思っている。報酬も弾ませるつもりだ。財宝を手に入れたあかつきには、その二割を君達に与えようと思っている」
スクルド・エレナ:「えええ!」
エドクリム:「一国の貧困を救うには十分すぎるほどの財力、その二割だ。一生遊んで暮らせるという事は言うまでも無いだろう」
スクルド:「い、一生遊んで暮らせる…!」
エレナ:「絶対に最後までやり遂げます!!」
ヘラト:「おいエレナ…お前その言葉に何か邪な気持ちが入ってないか?」
エドクリム:「最後の希望なのだ…」
ヘラト:「…!」
エドクリム:「私はこの国の民を心から愛している。いついかなる時も、この凍えるような寒さを、人が生まれながらにして持つ暖かさを用いて寄り添い合い、私達は生きてきた。そんな美しい国を、みすみす滅ぼしたくは無い…。私が無能なばかりに、こんな事態を招いてしまった事は、本当に申し訳なく思う。今私に出来る事は、君達や、国内で貧困を救おうと奮闘してくれている者を、国の力を使い、全力で支援する事くらいだ…」
スクルド:「国王様…」
ヘラト:「今こうしている間にも、生活に苦しんでいる人が沢山居るかもしれない…!我々に、今の内から準備出来る事などは、ありますでしょうか?」
エドクリム:「そうだな…君達には、体力もそうだが、特に戦闘技術を磨いておいて欲しい。今回の任務、第一の目的地とさせてもらったのは、大都市ドーラ。エリアとしてもエドガルドから最も近いのだが、最初の目的地に選んだ理由は別にある。このドーラの秘宝に関しては、わけあって急ぎ回収する必要があるのだ」
ヘラト:「…その理由とは?」
エドクリム:「ドーラでは四年に一度、闘技大会が開催されるのだ。今年はその大会の優勝景品に…秘宝が選ばれたらしい」
スクルド:「な、マジか!?そんな簡単に選んでいい代物じゃねえはず…」
エドクリム:「恐らく、ドーラの国王は秘宝の本当の価値を知らんのだろう。単体としては、ただの芸術品にすぎないからな。宝の秘密を知るのはごく一部の人間のみ。誰でもその真実を知れば、情報を独り占めしたくもなるだろう」
スクルド:「まあ、確かに。俺だったらそうしてるな」
ヘラト:「四年に一度と言う事は、この機会を逃せば二度と手に入らないのでは…」
エドクリム:「ああ。仮に入手出来なかった時は、優勝者から強引に奪い取るしか無くなる。しかし、それは最悪の場合の話。我が国の兵士達の強みは、過酷な環境で培われた圧倒的な力とスタミナにある。闘技大会は、数での勝負では無く一対一…勝算があるからこその任務だ。この機会を逃してはならない」
0:再び現在 コテージ一階にて食事を済ませた三人。
エレナ:「この旅が終わった時には、あたし達、国中のヒーローになっているんだもんね」
ヘラト:「ああ、そうだな。…秘宝は必ず手に入れる。例えどれだけ時間がかかってもな」
スクルド:「……」
エレナ:「どうしたの?暗い顔して。あんたらしくない」
スクルド:「…ああ、いやな、宝の秘密を知っている人間の数にもよるんだけど、最悪の場合…命をかけた奪い合いになる事も考えられるなって」
エレナ:「…そうだね」
スクルド:「まぁ、こんだけ待遇もいいわけだしな。あんなに威勢張ってたけど、逆に、この待遇がなきゃ、俺はとっくにこんな辛い任務からはおさらばしてたかもしれねえし」
ヘラト:「おいスクルド、それは冗談か?それとも…お前の腹の底から出た言葉か?」
スクルド:「い、いや、冗談冗談…国の命運がかかってるのに、今更投げ出せるかよ…。嫌な気持ちにさせちまったなら悪かった…」
エレナ:「あんたもそんな顔しないでよ。プレッシャーに押しつぶされそうなのは分かるけど、仲間同士で心削り合ってちゃ、この先やっていけないよ?」
ヘラト:「む…俺は別に、傷つけたくて言ったわけじゃ…」
エレナ:「それはスクルドも同じでしょ?」
ヘラト:「ぐ……」
エレナ:「はぁ…。今日は疲れたし、ゆっくり休みましょ?私、シャワー浴びて来るから」
0:数分後…風呂から上がるエレナ。着替えながら、壁越しに二人の会話を聞いている。
スクルド:「…悪いなヘラト、さっきはあんな軽い事言っちまって」
ヘラト:「…いや、俺も悪かった」
スクルド:「俺だって、故郷の皆を想う気持ちはお前と同じだよ」
ヘラト:「そうだよな…」
スクルド:「でもな、俺は兵士である前に一人の人間でもあるんだ。こうして休憩している今でも、震えが止まらねえんだよ…」
ヘラト:「…俺も、怖いのはお前と同じだ。知らない場所で自分の命を投げ打つようなモンだからな。けどよ、可能性を追わないまま死んでいくよりも、望みがある限り最後まで戦い続ける。そうやって自分を鼓舞しながら、今日まで過ごして来たんじゃねえか」
スクルド:「そういえばそうだっけか。目の前の事に必死で、すっかり忘れちまってたよ」
ヘラト:「それに…"あの男"の行方も…」
スクルド:「…そうか。そうだな、俺達はこんな所でくすぶっちゃいられねえ」
ヘラト:「恐怖に支配されそうになる気持ちは、分からなくもない。…俺も一人の人間だからな」
スクルド:「…はあ。お前ってすげぇよな。そんなこと言っておきながら、実際こういう状況になっても弱音一つ吐かねえじゃん?たまに嫉妬しちまうくらい輝いて見えるよ。有志兵の同期の中でも一際目立ってたしよお」
ヘラト:「凄いのはエレナもお前もだろ?何十万と居る兵士のたった三人に選ばれたんだ。故郷の奴らからも異国の人達からも、とんでもなくモテるかもしれないぜ?」
スクルド:「…おお、よく考えてみればそうだな!?」
エレナ:「あんた達、何馬鹿な話してるの?
これだから男って奴は…」
ヘラト:「そう言うお前も昔っから恋愛体質だったよなぁ?」
エレナ:「な…う、うるさいわね!」
スクルド:「そういえば、昔ヘラトに告白してフラれ」
エレナ:「あーもう!それ掘り返すのやめて!!」
ヘラト:「ははは!」
エレナ:「あんたも何笑ってんのよ!?ほら、さっさとシャワー浴びて来なさいよ!!!汗臭いから!!!!」
スクルド:「へいへーい」
ご愛読ありがとうございますm(_ _)m
…余談ですが、筆者は声優志望の者です。この台本の中で自分の声に近いイメージのキャラクターは、多分おそらくスクルドです(˚✧₊⁎❝᷀ົཽ≀ˍ̮❝᷀ົཽ⁎⁺˳✧༚)