952. 北関攻城戦8
「ふん、まあいい。
我が名は、ヴェルナー・エンゲルス。
アルフレート・フォン・エスターライヒが
主宰するクランの一員にして、
先鋒を任じられた魔道槍兵だ!」
大音声で叫び終えると、ヴェルは
隣のアミラをチラチラと見ていた。
「うううっ、やるのですか?」
「やるのだ!」
「我が名は、カスペール・アミラ。
アルフレート・フォン・エスターライヒが
主宰するクランの一員にして、
ええと、先鋒を任じられた竜人です!」
相対する重騎士は、全くの無反応だった。
無反応な敵に激怒したヴェルは、ハルバートを
繰り出して攻撃を加えた。
アミラはチラチラとサリナの方を見た。
苦笑しているサリナが目に入った。
「アミラ、きょろきょろするな。
戦いは始まっているぞ。
目の前の敵に集中しろっ」
「えっえええ、はっはい。でもサリナが」
ヴェルはアミラの言葉を遮った。
そして、眼前の敵にハルバートを繰り出した。
「ううっごめんなさい」
アミラも拳を繰り出した。
誠一は中団よりヴェルたちが戦う最前線へ
馬を進めた。
その途中で剣豪率いる侍一団の戦の様子を
誠一は見た。
誠一は感嘆の声を漏らした。
「恐ろしいな。できれば敵対したくないな」
侍は、ほとんど一振り一撃で敵兵の戦闘力を
奪っていた。
彼らの剣技に剣豪ほどに洗練された美しさを
感じなかった。
無骨であったが、彼等の一振り一振りから
迸る殺意を感じた。
「そうだね。敵騎兵団の全身を覆っている鎧が
意味をなしていないと思える程の剣技よね。
それにあの複数人での戦術、
魔術師や僧侶のいない戦士だけのパーティのような
動きよね」
一対一を如何なる状況でも重んじて、戦う。
それが誠一の侍のイメージだった。
しかし、眼前の彼らの戦法は、
複数で一人を取り囲んでいた。
「一人一人の実力が高い上に
あの戦術、非常に有用だよ。
そう感心してばかりもいられないな。
シエンナ、打って出よう」
味方に侮られていては、
今後の指揮をやりにくくなる。
一度、実力を示すべきと誠一は判断した。
「まーそうよね。
先生が直接、私たちを指導したってことで、
一応、敬意を表して、従っている感じね。
まっそれって、先生に遠慮しているってことよね。
当事者としてはあんまりおもしろくない話」
誠一は頷き、7面メイスを握り直した。
人を殴り倒すことのへ抵抗が小さくなっていた。
誠一にある元の世界の倫理観が大きく侵されていた。
そのことを誠一は感じていた。
それをどうすることも出来ないことは分かっていた。
それでも死ぬ訳にはいかない、
そのためだと言い聞かせて、動き始めた。
「アル、おせーよ。ちんたらしてんなよ。
目の前の奴、結構、強いぞ。気を引き締めろ」
ヴェルは叫びつつも目の前の敵から
目を離すことはなかった。
敵は、三人がかりでも余裕を持って
対処している様に誠一の目には映った。
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『起きるとそこは、森の中。可愛いトラさんが涎を垂らして、こっちをチラ見!もふもふ生活開始の気配(原題.真説・森の獣)』
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