929. 拠点5
暑いー
部屋を出ると、心底嫌そうな表情のメイドが
入れ替わりに入室した。
ぶちまけられた汚物の処理と
部屋を掃除するためだろう。
二日酔いと自責の念に駆られながら、
誠一は頭を抱えて、エンゲルス家に向かった。
東方の島国、唯一無二の将軍家が
領土を収める武将を取り纏め、その地に君臨していた。
独立心旺盛な将は、隙あらばその座を奪わんと
反乱を起こし、戦の絶えない地であった。
相対的に将軍家の領地、兵力が他を圧倒しており、
それに内心はどうであれ各地の将が
従っているといった状態であった。
ヴェルトゥール王国とは海を隔てているが、
概ね良好な関係にあった。
交易の窓口となる港は無論のこと、
王国の王都にも渉外の機能をもった将軍家公認の
商館が建っていた。
数日後、モリス商会の紹介状を携えて、
誠一はシエンナとスターリッジを伴い、商館を訪ねた。
既にモリス商会の仲介で訪問の件は、先鋒へ連絡済みだった。
「いらっしゃいまし、アルフレート様でございますね。
奥の間でご主人様がお待ちしております」
「奥の間で待っているとねぇ」
出迎えた商館の者を前にスターリッジが口元を歪めた。
しかし、応対した男は気にも止めずに3人を案内した。
奥の間で商館の主人は、ソファーに腰を下ろしていた。
クッションは限界まで沈み込んでいた。
その男は、恰幅の良い身体を震わせると座ったままで
右手を挙げて友好を示した。
誠一が挨拶をしようとした時、隣のスターリッジの
殺気を感じた。そして、誠一は黙った。
目の前の男はスターリッジの殺気を受けて尚、
立ち上がろうとせずに座ったまま、二へらにヘラと笑っていた。
「おい手前、モリス商会を舐めてんのか」
スターリッジが低い声で凄むが全く意に介していなかった。
「ふうーこの体型、立ち上がるのも難儀なことで、
ご了解頂きたい。どうぞどうぞ」
丸っこい顔の肉を揺らして、目の前の男は
ソファーに座る様に促した。
誠一とシエンナが座ると渋々という感じで
スターリッジも腰を下ろした。
「これはこれは、アルフレート様。
将和帝国の商館を纏めております
大賢寺 取次と申します」
恭しいようで鷹揚な大賢寺の態度だったが、
どこか人懐こく、嫌味を誠一は感じなかった。
「本日の面会、ありがとうございます。
アルフレート・フォン・エスターライヒといいます」
「ふうふう、お噂はかねがね伺っておりますわー。
して今日は如何なご用件で?」
息をするのにも多大な労力を要するのか
話す毎に息が上がっているようだった。
ローンの担保というか、保証人な感じです。
『起きるとそこは、森の中。可愛いトラさんが涎を垂らして、こっちをチラ見!もふもふ生活開始の気配(原題.真説・森の獣)』
こちらも読んで頂けると幸いです。
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ポイント増えろー




