921. 光銀23
光銀編、最終話
「来たか。そうだ、その態度だ。
おまえはまだまだ、態度に心情がでてしまっているからな。
何事にも心から真摯な態度で臨め。
宮廷は、言葉遣いだけでは取り繕えないぞ」
ロビンが笑った。
その笑いは、人を馬鹿にしたような高笑いでなく、
柔らかな笑みであった。
「肝に銘じておきます」
神妙な表情の誠一に再びロビンは笑った。
今度は大笑いであった。
しかし、それは人を小馬鹿にしたような高笑いではなかった。
「アルフレート、お前は面白い言い方をするな。
お前の創作なら素晴らしいんだが、
どうも東方の島国の匂いがする。
あの憎らし気な鬼谷から学んだのか?まあ、それはいいか。
それよりだ。さっさと、王都に戻れ」
誠一の前に一枚の紙が放り投げられた。
それは、A級昇格の指名依頼の終了証であった。
誠一が何かを言おうとした時、ロビンによって遮られた。
「ったく1000匹なんて律儀に数えてられるかっての。
古代帝国の往復を含めば、1000匹なんて優に討伐してるだろ。
俺もその時は仲間扱いとして、広域魔術での討伐も含めての
ことだがな。
それにあの光銀の右腕を持つ化物がいなくなったことで、
ここ等辺も以前のような状態に戻るだろう」
誠一は深々と一礼した。
「終了証、ありがとうございます」
ロビンはそれ以上、会話を交わさずに身振りで退室を促した。
誠一はそれに従い、ドアを出る前に再度、
深々と一礼をして、執務室を後にした。
食堂に集まっていたメンバーに事の次第を話すと、
開口一番、剣豪が口を開いた。
「A級への昇格、おめでとうございます、アルフレート様」
それは阿諛追従、佞言の徒とも取られるような
行動であったが、剣豪の態度は、そんな胡散臭さを
全く感じさせなかった。
しかし、その態度にロジェやマリアンヌは、
若干、眉をひそめていた。
その表情に気付いた誠一は、気を引き締めた。
どうやら剣豪に褒められたことで無意識に奢った態度に
なっていたようだった。
わざとらしくコホンと咳をすると、今後について話始めた。
「王都グリーンシティに戻ろう。
そこで本格的にクランとしての活動を開始する。
クランの最終的な目的は、『祈りの神殿』に
眠る万物の霊薬『エリクサー』の入手だ」
誠一は寸前のところでリシェーヌという言葉を呑んだ。
真に事情を知るのもは、ここでは剣豪のみであった。
『深淵の廻廊』は秘中の秘であった。
隠し事が仲間を騙しているような気分にしたが、
今の誠一にはどうすることもできなかった。
剣豪を除く誰もが真剣な面持ちで頷き、
各々、帰途の準備のため部屋に戻った。
予定より長くなりましたが、光銀編終了です!
『起きるとそこは、森の中。可愛いトラさんが涎を垂らして、こっちをチラ見!もふもふ生活開始の気配(原題.真説・森の獣)』
こちらも読んで頂けると幸いです。
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