65.隊商の護衛9
必殺技はロマン!
ヴェルの感動に水を差す一声が聞えて来た。
「それは単なるコケ脅しでしょ。
見た目の派手さの割には攻撃力なさすぎ」
「アル、いくらヴェルだからって、
それはないんじゃないの。
ヴェルも見た目とか派手さに惑わされないで、
ちゃんと判断しなさい。
二人の美少女に完全否定されたフレイムチャージだった。
「いや、待て。
そんなことはないぞ、なあ、アル。
何とか言い返してくれ」
誠一はヴェルと視線を合わそうとせずにしていた。
そして、沈黙していた。
「ヴェル、あれでは炎が拡散されすぎて、
ダメージにならないわ。
そもそもアルは杖の先端が燃えないように
更に自分が熱くならないように炎を調整していた。
やるなら、こんな感じになる」
リシェーヌが魔術を唱えると、杖の先端が紅くなった。
誠一と同じように加速して、木を突いた。
すると木は、突かれた場所を中心に燃え広がった。
「ふう、こんなものかしら。
炎でなくとも風、水、土でもいけそう」
何この天才、何で見ただけで似たようなことできるの。
こっちはカッコよく技を放つのに
どれだけの努力をしたと思っているの。
激しい嫉妬が誠一の胸中に渦巻いた。
「ん?ダメじゃん」
あっさりと駄目だしするヴェル。
「はっ?ヴェル見たの?
確かにアルの技は魔術としてみれば、
繊細な炎のコントロール、魔術の維持、
どれも簡単なものではないわ。
でもその労力に見合った効力は得られない。
わかる?」
むきになってヴェルに言い張るリシェーヌだった。
「駄目だ。ロマンがない。
カッコ良くない。
敵なんぞ、魔術を使わなくても
俺の一突きで倒すから。なあ、アル」
ヴェルと誠一はがっしりと腕を組み、
フレイムチャージについて語り合い始めた。
「これは何を言っても無駄ね。
あきらめないさ、リシェーヌ」
二人の男子を見て飽きれたように
言うシエンナであった。
「それより、二人とも哨戒任務は大丈夫なの?」
誠一は自分たちのすべきことを
失念していたようで、心配になった。
「はーアルもリシェーヌと同じことを言うのね。
大丈夫でしょ。
念のため、警戒用の魔石を配置して来たら、
何かあったら、音が鳴るわ。
なのでご飯にしましょう」
4人はご飯を食べ始め、他愛ない会話を続けた。
食べ終わり、再び警戒任務に就いた。
誠一はほのぼのとした気分になり、
こんな日が続くことを切に願った。
駄目だしされたよ!




