61.隊商の護衛5
チクリと痛い蜂の一突き!
「アルー急いで!早くして!」
二人の行動を見て、誠一を急かすシエンナだった。
慌てて、誠一は魔術を唱え始めると、
シエンナが誠一の手を掴んで豊かな胸に当てた。
「魔術の通りを良くするから、急いで!」
右手に感じる感触に心を乱された誠一は魔術の発動に失敗していた。
弓を番えながら、二人の行動に我慢できず、笑うキャロリーヌであった。
「ちょ、二人とも戦闘中に掛け合い漫才をしないで。
シエンナ、それはちょっとアルには少し早いかなぁ。
アル君も落ち着いて!無意識に右手で胸を揉むのを止めなさい。
首筋に手を当てて、唱え直しなさい」
アルは急いで汗で滲んでいる鎖骨部から首筋に手を這わした。
シエンナの表情が若干、上気しているようにみえた。
キャロリーヌは呆れたように二人を眺めて、一喝した。
「お楽しみは後にして、急ぎなさい」
誠一は複数の補助魔術をいっぺんにかけた。最初から成功していたら、
約1/3の時間で終わっていたが、結局、さして時間の短縮に
ならない結果に終わってしまった。
誠一とシエンナも武器を取り、前線に飛び出した。
「ふう、まったくアル君は、ところかまわず欲情する癖があるわね。困ったもんだ」
と呟いた。
家畜や普通の人であれば、喰いつかれて、奴らの餌になるだろう。
青空を旋回する速度は速かった。
しかし、魔術で強化された面々には手頃な早さでしかなかった。
そして、数が少なく、複数で襲うことができず、ストロングポイントを十分に発揮できていなかった。
「よっしゃー最後の一匹!」
ヴェルが叫び、短槍を蜂に突き刺した。
ぴくぴくと震え、蜂は死んだかのうように見えた。
ヴェルが短槍を引き抜いた瞬間、瀕死の蜂はヴェルの首筋に襲いかかった。
「ヴェル、どいて」
リシェーヌが叫び、ヴェルを突き飛ばした。
頭部を叩き潰したが、腹部からの飛び出た毒針が彼女の右腕に突き刺さっていた。
「くっ」
呻き声を発して、その場で膝をついた。
誠一は咄嗟に行動した。
誰よりも早くリシェーヌに近づき、軽装の鎧を脱がすと、携帯用のナイフで服を裂いた。
そして、患部に刺さる毒針を力任せに引き抜くと、水をかけた。
「ぐうううぃ」
リシェーヌの呻き声が聞えたが、誠一は容赦せずに患部から毒を
押し出す様に右腕の皮膚を圧迫した。
「すっすまねえ」
「ヴェル、いつまで腰を抜かしてる!周囲を警戒しろっ。
アルフレート、解毒薬だ、飲ませろ」
ロジェから罵声が飛んだ。
発熱して、意識が朦朧としてるのか、水が上手く飲めずに
唇から流れおちてしまった。誠一は意を決した。
「リシェーヌ、直接、飲ませるから」
薬と水を口に含み、右手でリシェーヌの唇を開いて、
リシェーヌの舌と自分の舌を絡ませて、飲ませた。
「けほけほ」
少し気道に水がはいったのだろう。咳き込むリシェーヌ。
「リシェーヌ、もう一口飲んで」
リシェーヌは頷いて、震える手で水筒を受け取ろうとした。
誠一は、有無を言わさず、口に含むと同じように舌を絡めて、
直接、リシェーヌに飲ませた。
水を飲ませ終わった後もしばらく、しばらくそのままであった。
その様は、お互いに舌を絡ませあっている大人のキスを
楽しんでいるようであった。
「おいおい、そろそろ、水は飲み干したんじゃね?」
キスに浸っている誠一に無遠慮な声がかかった。
ヴェルだった。
誠一は、一瞬にして、現実に引き戻された。
ゆっくりと唇を離すと、刺さるような冷たい視線を感じた。
シエンナだった。
晴天なのに背筋が凍るような気分だった。
誠一さんはもしかして、エロ魔人かも




