56.とある席での情景2
千晴さん、ゲームにハマる!
翌日、千晴の目の下には
真っ黒なくまができていた。
コンシーラーで上手く隠したつもりだったが、
同性の同僚たちの目は欺けなかった。
「あら、佐藤さん。昨日は珍しく遅かったの?」
「あー佐藤さん、メイク変えたんだー」
手を変え品を変え、夜更かしの理由を
探ってくる同僚たちであった。
まさか、ゲーム攻略のためにネットと
にらめっこしていたなど言える訳もなく、
曖昧に答えていた。
それを話題好きな愉快な同僚たちは、
都合よく解釈して、想像していた。
つまり、男ができたと!
午後、とあるデスクの男が落ち着きなく、
きょろきょろしていた。
差し込む日差しが強い時間帯のため、
眩しいのだろうか、そんな程度の感想で
他の社員は、あまり気にも止めずに業務を続けた。
うろうろ、きょろきょろ、
ついに男は我慢の限界を迎え、千晴を呼びつけた。
「佐藤さん、ちょっと、来なさい」
呼ばれた千晴は、返事をすると、島崎の下へ向かった。
「夜更かしをするのは良いとして、
それが業務に支障きたすレベルだと、
非常に困るよ。
一々、プライベートを詮索するつもりはないが、
仕事に問題が生じているとなれば話は別だ。
目に隈を作るほどにお楽しみだったのかな?」
島崎が捲し立てたが、千晴には一体、
何のことか思い当たることもなく、
つい、曖昧な返事をしてしまった。
「はぁ」
一瞬にして、島崎の逆鱗に触れた。
「はぁじゃないだろう。
ここ最近、定時帰社して、
公休日明けの二日目に目の隈。ああん?男か?
男だろう!そうだろう、違うのか?」
千晴はようやく事の次第を理解した。
昼休みにどこからともなく千晴の情報を
仕入たのだろう。
それに思いを巡らせていたが、
彼にとって最悪の想像である彼氏、
男の類に繋がったのだろう。
アルフレートも二次元とはいえ、
男であるためにあながち彼の想像は
間違っていないと妙な感想を抱く千晴だった。
「佐藤さん、弁明はないのかな?
困ったことだ。
そんなことなら、会社側としても
それなりのペナルティを考えねばならなくなるが?」
何も言わない千晴の態度が島崎を
更に怒らせているようだった。
千晴はどうでもいい気分になったが、
職を失う訳にもいかず、昨夜のことを話し始めた。
「確かに男絡みで、夜更かししたのは
事実ですが、業務に支障をきたしているとは
思えません」
「ふん、やはり男か。随分と楽しんだみたいだな」
「ええ、彼の名はアルフレートと言います」
海外の名前を聞いて、島崎は鼻白んだ。
そして、周りの同僚は、仕事をしているように
見せかけて、その実、聞き耳を立てていた。
「そっそうか、海外の方なのか?
その君のお楽しみの相手は?
それに君は外国語が堪能なのかね」
急におどおどしだして、尋ねる島崎だった。
「いえ、彼は日本語を流ちょうに話しますし。
私の日本語を理解しています。
まあ、大抵は無視しますけど」
やけくそ気味に語る千晴だった。
無論、周りの連中が聞いているのも分かっていた。
自分が彼らの立場でも同じことをするからであった。
「そっそうか。そうだ。
その彼はどこの出身なんだ?」
「確かヴェルトゥール王国出身ですけど?
何か?」
一部の席から忍び笑いが聞えた。
恐らくVR系のゲームだということが
分かったのだろう。
「ンンン?そんな国あったかな。
まあ、何と言うか、そうだね。
そうなんだ、あまりのめり込まないように
気をつけたまえ」
毒気を抜かれたような表情で
最初の勢いとは、打って変わって
答える島崎であった。
戻りますと伝えて、千晴は席に戻り、
業務を再開した。
完全勝利なのかな???




