33.始まりの迷宮 入り口付近
学院長到着!
迷宮の入り口付近は、大混乱となっていた。
生徒たちが迷宮に突入して、半日ほど過ぎると、
突然、入り口に謎の結界が構築され、
出入りが出来なくなってしまった。
講師の1人が学院長に至急、連絡を
しようとした矢先、何人かの講師から
魔術による攻撃を受けた。当然、即死であった。
そして、驚いた残りの講師たちは、
初動が遅れ、防戦一方に追い込まれていた。
「奴らの目的は一体?」
「さあ、知るか。それより面前のことに集中しろ。死ぬぞ」
「ふむ、連絡が途絶えて、不審に思えてのう。
こんなことに気づかなんだとは、儂も耄碌しものだ。
事情は聞かせてもらうぞ。稲妻の柱よ」
魔術院の学院長、ファウスティノ・ソリベス・セドゥは、
魔術が飛び交う中、その中央に舞い降りると
同時に稲妻を奔らせた。
そして、稲妻が消失すると、突然、
攻撃を加え始めた講師たちがバタバタと倒れた。
助かった講師たちは、状況の変化に付いていけず、
ぼんやりとしていた。
「うーむ、お主達にも稲妻が必要かのう」
20~30kgはあろうかと推測される杖を
片手で振り回しながら、ぽつりと答えた。
生き残った講師たちは、ゼンマイの巻かれた
人形のように動き出し、倒れている者たちを拘束した。
「主城に運べ。
この件について、知りうるだけのことを
吐かせなさい」
学院長が憤怒の形相で、拷問、魔術による
自白等々も厭わぬと彼らに伝えた。
そのことが講師たちを一様に緊張させた。
「さて、この不細工な結界術を
どう破壊したものかな?
何か良案のある者はいないか?」
学院長は、表情を崩して、
まるで試すかのように問うた。
講師たちは汚名返上とばかりに
様々な案を提示したが、学院長は被りを振った。
「今、重要なことは、迷宮に挑戦している
生徒の状況を確認することだのう。
どの案も結界を解除できるだろうが、
如何せん時間がかかり過ぎる。
一刻を争う場合は、これに限る。
一同、可能な限りの防御結界を張りなさい」
連続で呟かれ、重ね掛けされる補助魔術に
講師たちは嫌な予感がした。
学院長は、一旦、結界から離れて、
両手で杖を握り直した。
四肢の筋肉が隆起すると、
土埃が舞うほどの速さで、結界に向かって突撃した。
「ゼアアッ」
木々が震えるほどの雄叫びをあげて、
学院長は結界の中心を杖で突いた。
結界は石を静かな水面に落としたように
中心から外に向かって、波打った。
そして、ガラス細工が粉々に砕ける様に
結界は砕けた。
その瞬間、凄まじい衝撃波が周囲に広がった。
無論、学院長には直撃した。
纏っていた魔術礼装はぼろぼろになり、
自慢の口ひげは不揃いに切り刻まれ、全身の至る所を
切り刻まれていた。
「ふむ、こんなものかのう。
学院講師の諸君、日々、学ぶことを怠らず、
訓練じゃぞ。
さて、そろそろ、後続が追い付く頃じゃろうて、
到着したら、対応をよろしく。
先行して、生徒たちの所へ向かうかのう」
結界は、物理的な力で破壊された。
あり得ないことではないが、その現実に
付いていけない講師たちは、石化したように
その場に固まっていた。
「学院長!向かう前に治療をしないと」
慌てて、講師の1人が学院長の行動を
止めようとした。
「むっむうん」
学院長が気合を入れると、筋肉が隆起して、
傷口の血が止まった。
「終わり、治療終わり。
諸君もこの程度の傷で慌てないように
すべきではないかのう」
そう言い残すと、迷宮の深部に向かって、走り出した。
「いや、無理っしょ」
講師の1人が呟くと、残りの講師も
同意するかのうように頷いた。
力技!こわっ。




