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28.休み明け

連休後の初日は辛いのだ

 魔術院が再開されると、誠一の周囲に

ちょっとした変化があった。

ヴェル、リシェーヌが誠一と実技試験に

関して話しているが、シエンナがいなかった。

一人ぽつんと座っていた。


「ったく、あいつもしょうもないな。

さっさと謝れば済むことなんだけどな」

ヴェルが誰とも視線を合わせないように

俯いているシエンナを見ていた。

遺跡探索から戻った翌日、早朝、早々に

ヴェルは、誠一とリシェーヌを心配して

彼らの家を訪ねていた。


 誠一もシエンナの方へ目をやると、

嫌な奴が視界を遮った。

ファブリッツィオであった。

取り巻きの女子を従えて、シエンナを囲み、

高笑いをあげていた。


「アル、気になるの?」

リシェーヌが小首を傾げながら、尋ねた。


「まあね。気にはなるよ。

あくまでもあの三人は、シエンナの護衛だ。

彼らは、最善の策を取っただけだしね。

道徳上の?倫理上の?なんてのを語るなら、

冒険者のようなことはすべきじゃないからね。

そもそもシエンナは気絶させられていたから、

関係ないでしょ」


その言葉を聞いて、リシェーヌが

よくできましたと言わんばかりに誠一の頭を撫でた。

「そしたら、後はシエンナの気持ち次第だね。

私たちはいつものところに座っているから」


誠一はため息をついて、席を立ち上がり、

手を差し伸べるため、シエンナの方に向かった。

己の意思で選択しろ、13歳の少女に

そこまで求めるのは酷だと思った。

誰しもがリシェーヌのように強い訳ではないからだ。

後方でヴェルが何か言っていたが、

リシェーヌからみぞおちに一発くらって、

呻き声をあげていた。


ファブリッツィオはシエンナを

取り巻きと囲み、彼女の頭を小突いた。

「ふん、仲間を見捨てた裏切者が。

魔術院に相応しくないな」

取り巻きも同調して、各々の言葉ではやし立てた。


「ん?これはこれは、巷で有名な小さな冒険者様では

ございませんか!

あんな遺跡の情報とマップの更新で

いい気になるなよ。

所詮、リシェーヌの力だろうが。

この金魚の糞が」

こいつは歳下の少年少女を集めて、

一人の少女を囲って、偉くなったつもりなのだろうか。

呆れてしまい、ついつい、本音が

だだ洩れしてしまった。


「おいおい、おまえ、13、14歳の餓鬼を

周囲に侍らすとか、もしかしてロリコンか?

さっさと、ここから散れ、邪魔だ」


ファブリッツィオを中心に誰もが

ぽかんとしていた。ひそひそと話す声が聞えて来た。

「ロリコン?」

「それって何?」


しまった、単語として認知されていなかった。

そう思い、誠一は、コホンとわざとらしく咳を

するといい直した。


「この幼女趣味ヤロウが!これで分かったか!」


「貴様ぁー。言うに事欠いて、

ストラッツェール侯爵家に対して、

そのような事を言うとは、ただでは済まさんぞ。

頭を下げろ!」

ファブリッツィオは、誠一の頭を掴み、

強引に下げさせようとした。


「俺が謝るときはなぁ、二つある。

本当に心の底から自責の念がある時と

謝っておけば、その後の関係が円滑に

進められる時だ!

今は、そのどちらでもないっ」


でかい声でそう言いながら、

腕力では年上のファブリッツィオには到底、

かなわないため、誠一の頭は、ゆっくりとではあるが、

地面に向けて下っていった。

お互いの顔が真っ赤になっていた。

ファブリッツィオの影にすぅーと

新たな影が現れた。

すると、突然、膝かっくん、

ファブリッツィオの膝が折れ、後方に

倒れそうになった。

慌てて、取り巻きの何人が彼を支えた。


「ファブ、いい加減にしないと、

後で大変なことになると思うけど、いいの?」

膝かっくんをしたリシェーヌが

抑揚のない声で宣言した。

ファブリッツィオの顔が真っ青になり、

取り巻きに語気を荒げて、「行くぞ」と言うと、

足早に去っていった。


「シエンナ、アルの言葉は聞こえたでしょう。

謝りたい、謝りたくない関係なしにあなたの席は

そこではないでしょう。アル、戻るよ。

あそこで悶絶しているのを何とかして」


最後の良い所は必ずリシェーヌが

持っていくなーと思いながら、シエンナの頭を

軽く撫でると、誠一も席に戻った。


まったりどころか、、、

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