204.選択肢7
流石に学院長の前では自粛する誠一さん!
「もし、出征するにしても
後方での輜重の護衛等が主な戦場になるであろう。
それが王宮で引き出せた学生を出征させる条件じゃ。
戦場に一度、出てしまえば、このような約束事が
どこまで力を持つかは分からぬがのう」
ファウスティノの視線は誠一を捉えていたが、
どうにも遠くを見ているような気がした。
学院長も誰かに何かを語りたい時が
あるのだろうと思った。
「学院長は、北関に向かわれないでしょうか?」
「ふむ、それもありであろうが、王宮が許さぬだろう。
王都に不安が広がるのを防ぎたいとの目算じゃて。
他の学院の学院長も同じ理由で王都におる。
オニヤ先生や他の講師には君らの影ながらの護衛として、
同行してもらうとするがのう」
分かりやすい理由であったが、
北関を抜かれた場合、王都まで
敵を遮る強力な砦や城はもうなく、
王都周辺が主戦場となるだろう。
北関を抜かれた際の王都決戦の戦力温存も
視野に入れているに違いないと誠一は予想した。
流石にこれ以上、彼ら学院のトップに戦功を
あげさせたくないなど言う貴族たちの低俗な政治的事情も
働いているとは予想できなかった。
ファウスティノの誠一を見る瞳は、
優し気であった。
誠一が貴族たちの低俗な理由までは思い至らず、
戦略の一環としてある程度の事情を
把握したことも分かっていた。
下衆な理由にまでは思い至らなかった誠一に
それを説明することはせず、ファウスティノは、
彼の知見に満足した。
如何なる者であっても若者の成長を見るのは、
学院長たる彼にとっての楽しみの一つであった。
「組織に属する以上、それに従う義務が
ありますから、学院長がここに残るのは
仕方ありません。
僕は、出征するつもりです。
戻って、首席で卒業しなければなりませんので」
「ふむ、そうかそうか。君は、出征するか。
では、一つ頼もうかのう。
わが校の学生に限らず、出来る限りでよいから、
学生を助けてやってくれるかのう」
学院長の声、態度がその言葉に偽りなきことを
誠一の心へ訴えていた。
しかし、誠一は安請け合いするつもりもなく、
その事に対価を求めた。
「わかりましたとは、言えません。
僕も戦場で散るかもしれませんので。
その事に対する報酬は先に頂きたいです」
学院長は、勇ましい空疎な言葉を聞くより、
彼の報酬という言葉を受けて、誠一を信用した。
「ふーむ、良かろう。
今から報酬を渡そうかのう。
その報酬に納得できれば、受けて貰おうかのう。
無論、断ることも可能じゃよ」
交渉事は、、、上手くいくかな???
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