200.選択肢3
色々と裏がありそうな、、、
講義室の入り口が突然、開いた。
学生の視線がドアへ集中した。
男は飄々とした風で足音無く歩き、
講義室の教壇に立つ講師を押しのけた。
「まっこと面白くなし。
ふむ、どの学年も半々というところか。
このような下らぬ茶番劇は、大人に任せておいて、
君たちは魔術の研鑽に努めるべし」
「はっ、何を藪から棒に言っていますか。
オニヤ先生、学徒動員は、宮廷の決定事項であり、
直接、レドリアン導師が通達に来られた件です。
学院長の懇意であることを笠に着た自由な振る舞い。
最早、我慢なりません」
学生の前に関わらず、杖を構える講師に対して、
剣豪は特に驚いた様子もなく自然体のままであった。
「まあまあ、落ち着いてください。
争うために各講義室を回って来た訳では
ありませんので。
あなたも国の要請とは言え、
釈然としない気分でしょう。
ここは私に少し話をさせて貰えば、
全ては丸く収まります」
「まっまあ、私も教鞭をとる立場である以上、
あなたの言い分も分からない訳ではありません。
いいでしょう、続けてください」
杖を下ろす講師であった。
どの道、あのまま、争っても剣豪には到底、
及ばないことは自覚していた。
上手い落としどころだと判断し、
剣豪に続けるように促した。
それに対して、あくまでも自然な状態を
崩さすににこやかに応対する剣豪であった。
しかし、剣豪の講義を受ける学生たちには、
どうにも胡散臭さしか感じられなかった。
「そうそう、それでだ。
この北伐に出征して、それを足掛かりにして、
出世を望むなら、それも良し。
大きなチャンスです。
しかしまあ、あれです。望まぬ戦を
強制されていると感じたり、
どうにも死にたくないとか思う気持ちがあるのなら、
さっさとここの学院を退学して、
どこぞの学院に入り直すなりしなさい。
どうしてもここの学院で学びたいなら、
一身上の都合により退学して、
来年、再来年にでも入学し直せば良いでしょう」
ざわついていた講義室は、静まりかえっていた。
響き渡るのは、顔を真っ赤にして、学生たちに
理解の及ばないことを叫んでいる講師の声だけであった。
「キキキっ貴様ら、お国より恩を受けておいて、
そのように道理の通らないことは通用しないぞ。
きさまぁー妙な事を扇動するなよ。
ノルマがくだされているのは知ってるだろうがよ。
ああっ、レドリアン導師に
睨まれる様なことになったら、どうしてくれんだ」
ぽこん、講師の頭から妙な音がした。
剣豪の手刀が講師の頭にヒットした。
講師は、黙った。
「伝えるべきことは伝えたので、
あとは、さっさと説明をすすめなさい。
ではっ」
足音ひとつせずに講義室を去った剣豪であった。
その後、毒気を抜かれたような表情で
一通りの説明を終えた講師であった。
心ここに在らずのままにふらふらとしながら、
講義室を出て行った。
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