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九話:日は沈みゆく

「リンの父親が国王に反旗を翻したんです」



俺が絞り出すようにそう言うと、ゼラがものすごい顔をした。



義父様(おとうさま)が!?」


「なんだか含みのありそうな言い方ですけど、触れませんからね」



こいつ相変わらずリンのこと好きだな。あの程度では恋心は冷めないようだ。

気を取り直して続ける。



「リンの父親が反冷戦運動を起こしたんですよ。一部の兵士を引連れて、緩衝地帯で籠城をしたんです」


「な、なんで!? 」


「そればかりは私からはなんとも言えませんね。リンの父親は前の王の時代から騎士団長として働いていました。相当な実力者だったそうですが……何故そこまでして冷戦を終わらせたかったのかは分かりません」


「まあ、いいわ。今考えても仕方ないし。 その籠城が、アンタらの生活に打撃を与えたわけね? 多分……貴族が通らなくなったからでしょうけど」


「はい。 金を撒いてくれた貴族は国を出なくなり、皆飢えて動けなくなっていきました。これではいけないと思った私は国の中に入って物を恵んでもらおうとしたんですよ……」


「それで、どうなったの?」


「国の中に入ろうとした所を巡回中の兵士に見つかり……動けなくされてから路地裏に捨てられました」


「クソね。 うちの国の倫理観はどうなってるのよ」



ゼラは舌打ちをして顔をしかめる。



「確かに過剰かも知れませんが、国自体の治安も悪くなっていたので仕方ないですよ。ハエに集られるほどまで弱っていましたから。そのおかげでリンに助けて貰えたわけですし」


「ここで……リンさんが出てくるのね」


「ええ。たまたま通りかかったリンに拾われ、王家の従者になる形で保護されたため助かったんですよ」


「お、王家!? もしかしてリンさんは義父様(おとうさま)の繋がりで!? すんなり保護してくれたわね……」


「何しろ王家ですからね。食い扶持が一人増えても大丈夫だったのでしょう」


「リンさんが無事なのも納得ね……。父親がそんなことしたら追放ものなわけだし」



ゼラの顔が少し曇る。ゼラは粗暴な態度は目立つが、先程の様子からもわかるように人一倍優しいのだ。感受性が高く、それが故繊細なのだ。

ふと窓の外に目をやると、ようやく夜の帳が落ちてきたところだった。オレンジの空が青黒く染まってきていた。まだ時間はある。



「……さてある程度話しましたし、ここからはリンの話をしましょうか」



ゼラは口角をゆっくり上げ、ソファにふんぞりがえる。



「えぇ。待ってたかいがあったってもんよ」




俺は笑い返し、リンとのエピソードを語り始めた。

夜は深まっていく。

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