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3話:彼はなぜ突き動かされるのか

「ここで……殺させてもらう」



リザードマンはリンに大剣を振りかざした。

リンは剣も抜かずに問いかける。



「……自殺でもしに来たの? そうじゃなきゃ、私の前に出てこないよね?」


「村のため、家族のため……立ち上がらねばならねえこともあるんだ。大人しく忘れてもらおうか」


「……わざわざ弱い相手に負けてまでそんなことする必要ないからね。 理解できないよ」


「それが! 親なんだッ!……たあぁぁッッ!!」



リザードマンは大剣を両手持ちし、こちらに走ってくる。その動きはあまりに真っ直ぐで、正々堂々というより戦いになれていないといった印象だ。

リンはその様子を、ただただ静観していた。



「……どうしてなんだろうね。この旅、やっぱり分からないことが多すぎるよ」


「油断している暇があると思うなァァァァ!!!」



剣はリンの脳天めがけ振り下ろされる!!



「……やっぱりローレルには居てもらった方がいいね。わかんないことが多いや」



そう言って、体を横向きにしてスレスレで避ける。リンのすぐ目の前を、極太の刀身が横切る。



「な、何っ!? ──うわああっ!」



全体重を乗せた一撃だったようで、リザードマンの体は不格好にも前につんのめった。

リンは無言のまま大剣を蹴飛ばす。リザードマンの手から離れた大剣は、近くの茂みまで滑って行った。



「……チェックメイトだね?」


「……まだだ……! 」



リザードマンは歯をむき出しにして威嚇する。



「お前ら人間には、毒の牙も毒への耐性もないだろう! せいぜい苦しんで死ねっ!! ガアアアアッ!!」



リザードマンはリンの両肩をつかみ、大口を開けて首元にかぶりつく!──ハズだった。



「ゴハッ………?」



リザードマンの口の中には、リンの右ストレートが既に刺さっていた。 為す術なく、膝から崩れ落ちる。そして苦しそうに吐血した。

しかしリザードマンはあきらめない。

状況が読めないなりに、必死に周りを探ろうと目を左右に振り続けている。リンはその様子を不思議そうに眺めていた。屈んでリザードマンに話しかける。



「そんなに大事なものなの? 家族ってさ」


「大事なんてもんじゃねえ……俺の……全てだ。死んでも守らきゃならねぇ……」


「でも死んでちゃ仕方ないよ。 わざわざ私なんかに喧嘩売るだなんて、初めから死にに来てるようなものでしょ? どうしてそこまで?」


「この村からお前は出られるほどの力を持っている。村の奴らには出来ないが……お前にはできてしまいそうだからな。だからだ」


「私にはできるって……ここまでの話を聞いてると、まるで私が村民皆殺しにするような言いっぷりだね? それがここからの出方なの?」



リザードマンはまぶたを静かに閉じ……。

──急に腕をつき出した。



「死ねっ……! この村のために!」



その手には、小型なボウガンが握られていた。



[──バシュッ]









「ぐっ……あぁぁぁぁ!!」



リザードマンは手首を切り落とされ、痛みに喘ぐ。その間わずか。うつ伏せになって小さく丸まると、リザードマンは動かなくなった。

力なく手の先とボウガンが地面に落ちていた。



「念の為、トドメも刺して置こうか」



リンは血で汚れたロングソードをリザードマンの首の上で振り下ろす!



「やめよ」


「……?」



も、後ろから止められた。

リンが振り返ると、そこには三角帽子とタイトなローブを着た、魔女らしい女がたっていた。



「もうこやつは死んでおるのだから」



つばの広い帽子の下から、三日月のような笑みだけが浮かんでいた。

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