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十六話:姿は変わろうと

孤児院から離れた、私ことリン、ステラ、ベイの三人組は、街道沿いをひたすら進んだ。



「ほう……ふむふむ……」



ステラは荷台の上で、カノコさんから貰った本を読んでいた。孤児院の中でもずっと読んでいたものの、まだ発見があるようだ。先程から何度も読み返しては、ふむふむと頷く。


私はステラに問いかけた。



「何か面白いことが書いてるの?」



ステラは私の方を見上げるなり、


「ここ……!ここですっ!! 」



そう言って目を輝かせる。ステラは気を利かせてどこが面白いのか指さしてくれたが、相変わらずなんと書いてあるのかさっぱり読めない。この文字は一体何語なのだろうか。

ステラは目を細める私をしばらく眺めた後、手を打った。


「あ……今読みあげますね!」


「ごめんね! ありがとう!」



「いえいえ、わたしに任せてください!!」




ステラは胸を張ってそういった後、指をページの上に滑らせた。



「ここに『変身の術』って書いてあるんです! 正確にはそれっぽく見せる方法ですけど……」



「へぇ……変身かあ。どんな風に変えられるの?」



「うーん……元々の形をベースに、ほかの見た目を貼り付ける感じであんまり色んなものには変われないかもしれませんね……」



ステラは肩を落としてから、すぐにまた元に戻った。ステラにしては珍しく、自信満々だ。



「でも、わたし気がついたんです!」


「何に?」


「ふっふっふ……見ててください……っ!」




ステラはフードを目深に被り、ローブの袖ですっぽりと手を隠した。そのまま両腕を突き出し、下を向く。



「『黒山羊よ』『姿の似たる黒山羊よ』『我を平凡に見せかけよ』」







そう言ってから、ステラはフードを取って腕まくりした。



「……えええぇっ!?」




そこには黒髪の『少女』が居た。ステラと同じ背丈、同じ顔立ちなのに、ツノが生えていなければ、しっぽも無いし、もふもふした手の周りの毛もない。足の先までか細く、艶やかに見えた。


人間の女性がそこに立っていた。



彼女は両手を広げて、こちらにアピールしてくる。笑顔でくるくると回って、四肢をまじまじと見ている。そして彼女は、



「や、やった!! やりましたよリンさん!!」



叫んだ。おもちゃを買い与えられた子供のように、はじゃいで。そこで舞踊っていた。


やはりステラのようだ……。まるで本当に別人のようになっている。ここまで変われるとなると、町への侵入も簡単だろう。そうすれば、服屋など近寄り難いところに行くのも大丈夫そう。



そんなことを考えていると、服の裾を手引かれた。

振り返ると、そこには人っぽいステラがいた。ステラは、


「あ、あのう……」



と、何度も不明瞭に話した。


「どうしたの?」





私が聞くと、ステラは私の目を見て頬をふくらませた。


「わ、わたし可愛いですよね!? せっかく人っぽくなったんですよ……! 」



そう言った。そして、ぷりぷり怒り始めた。




「ごめんね。 でも……」



「で、でも……?」





「私、いつものステラの方が可愛いと思うけどな」



「ひゃうっ!? う、うう……」






[ボンッ]





ステラの姿はそんな音とともに戻った。ただ、顔は真っ赤っかになっていたが。



「やっぱりこっちの方がいいね。とっても可愛い」


「……ありがとう……ございます……」



ステラはしゃがみこんでうなだれて動かなくなった。……そんなにもあの見た目を褒めてもらいたかったのだろうか。次からは気をつけよう。







歩き続けた我々は、とうとうたどり着いた。



「ここなんですね……!」


「『角尾村』みたいだね」




人が行き交う、村と呼ぶにはあまりに大きすぎる町だった。大通りには当然のごとく、人、オーガ、リザードマン、オーク、スケルトン……。色んな見た目の人々が闊歩していた。

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