四話魔女は導く
「も、もういいですよぉー!!」
置いていかれてしばらく。水浴びを終えたらしいステラに呼ばれた。ステラが通ったところは獣道のようになっていて、そこを辿っていくと急に開けた場所に出た。
そこは森の木々の切れ間のようになっていた。川を中心に木々が生えていない平らな土地が続いていた。スペースは小屋が両岸に一軒ずつ立ちそうなくらい。
森の中はかろうじて木漏れ日があるぐらいだったこともあって、開けているここはとても明るく感じる。
「こんな場所もあったんだ……」
久々に見た気がする太陽が眩しい。遠くを眺めるように、手を目の上に当てて影を作って当たりをぼんやりと眺めた。すると、
「リンさぁぁぁぁぁん……!!」
遠くの方から走ってくる姿が見えた。動きは緩慢で、どうやら走るのは苦手みたいだ。ステラは手を振りながら近づいてきた。
「ご、ご迷惑をおかけしましたぁ……」
「いや、こっちこそごめんね。さすがにデリカシーが無かったよ……」
「い、いえ……と、ところで聞きたいんですけど……」
「どうしたの?」
私が問いかけると、ステラはその辺の地面に地図を広げて座り込む。
「ど、どこから行けばいいんでしょうか……」
そう言って見上げてきた。
なるほど。冷静に考えれば全然考えてなかった。まっすぐ突っ切って星見村に行こうにも、走り続けても三日はかかりそうだ。そうなれば、食い扶持が二人に増えた以上食料が足りない。
と、なると……。
「街をめぐりながら行かないとだね……私の持ってる保存食もすぐ無くなっちゃいそうだし」
「で、ではどういうルートで行きましょうか……?」
「うーんそれじゃあ……よいしょっと……」
私も座って地図を覗き込む。今私たちがいるのが、地図上の1番下。ここから北に進んだほうに魔王国がある。ここからは緩衝地帯の中に一つだけ街があり、そこから少し進むと魔王国の領土に入れそうだ。
「ここ良さそうじゃない?」
「はい! 『角尾町』ですね!!妹も、魔族と人間が共生してて過ごしやすいところだって言ってましたっ……!」
「へぇ……そうなんだ。 妹さんは結構こっちに来るの?」
「ふぇ? 来てませんよ?」
「え?」
……うーん、手紙とかに書いてたのかな?それ以上は気にしないことにした。ステラはステラであまり気にしていないようだし。
「それじゃ、これから出発しよっか。 馬を連れてくれてくるね」
「は、はい!そうですね!!」
私が入ってきた小屋の辺りに向かおうとした時だ。
「あぁっ!!」
ステラが急に素っ頓狂な声を上げた。
「どうしたの!?」
「わたし、小屋に色々忘れて来ちゃいましたぁ!」
「それじゃ一緒に行こっか!」
「は、はいぃ……」
私たちが小屋に戻ったその時だった。
「な、なんでですかぁ!?」