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06.魔術の実践講義

第一章の「02.魔力の相性」に類似した流れ・表現があります。

魔術理論と実践の講義は、魔力のある生徒は全員受講しているようだ。そもそも魔力持ちは少ないから人クラス分も人数はいないけれど。


魔力持ちは高位貴族に多い。

下位貴族や平民にも魔力持ちが生まれるが稀だ。


魔術師団長を務めているアレンは子爵家の次男にも関わらず膨大な魔力を保有し魔術に詳しく、王宮筆頭魔術師であることに間違いない。


アレンとレイの仲がいいらしく実践をするための訓練場に着くと、エレナが楽しそうに話しかけている。



イラっとするな。



機嫌悪そうにしているからラスティとグレイ以外は僕に話し掛けてこない。

その間も、授業が始まるまでエレナは男子生徒に声をかけられて挨拶したりしている。


ライオネル侯爵令息が積極的なようだな。


「シオン、人を刺しそうな顔をしている。俺は理由が分かるけど周りが気を使うからやめろ。王太子しろ」


「本当だ。シオンの王太子の姿も面白いから演技を続けてよ。僕が領地に篭ってから始めた演技にしては板についてるし〜」


この二人、絶対に楽しんでる。


「まさかシオンが女性に興味を持つなんて、僕はやっと解放されるのかぁ〜」


「まさかだろ?俺は婚約者を決めなきゃいけないと思うとしんどいだけだ」


は?

ラスティ、グレイに話したのか。


「いやいや、熱い視線に気付かれないのは可哀想に思うよ。彼女、珍しくシオンに興味がないみたいだし」


「凄いだろ?あの子、父親と兄貴に大切にされすぎたんだよ。シオンを嫌悪するように育てられたのに純粋すぎて疑わないからシオンの口車にのせられたんだよ。親と兄の苦労が水の泡!」


腹抱えて笑い始めた二人を周りの生徒は不思議そうに見ている。そりゃそうだ、王太子が機嫌悪いのに仲の良い二人が笑ってりゃ不思議な光景だよ。


アレンは苦笑しつつも授業を開始した。


「それでは先ほどの説明通り魔力のコントロール、感じることを優先して行使の練習を行います。互いにフォロー出来るようペアを組みますが相手が異性で困る場合は申し出てください。ペアは魔力量が近い者同士で組んでいただきます」


男女のペアになる組と同性同士のペア。ラスティはグレイとペアで僕は……


「シオン殿下、よろしくお願いします」


うわぁ、マジかよ。

ペアとして側に寄ってきたのはエレナだ。


「ペアの相手はエレナか。よろしく」


僕が呼び捨てにしたことで周りが騒ついた。

それは互いに名乗り合い僕が名前で呼ぶに相応しいと認めた相手と捉えられる。


通常、社交程度なら爵位に令嬢を付けるから、この場で初めてエレナと会ったならウェスタリア侯爵令嬢と声を掛けるのが相応しい。


婚約者候補の令嬢達も、そのように呼び掛けていて名を口にすることはなかった。


少し仲な良い相手としてならエレナ嬢と呼び掛けるのがいいだろうが、僕は敢えて、あの二人きりの時のように呼び捨てにした。


「……シオン殿下にご迷惑をお掛けしないように努めますが私、魔術が苦手なんです」


「レイに教わってないのか?」


「お兄様に基本は教わりましたが、全くダメでした」


「そうか、私で協力できることがあれば手伝うよ」


「私如きに、お手を煩わせるなど……」


「始めようか」


ペア同士で協力しながら課題をこなしていく。僕は課題を消化したがエレナが全く出来ない。魔力があるのに使い方がわかっていない。


説明通りにしても出来ない、集中してない訳ではない。エレナがうーーんと唸りながら魔力を使おうとしているけど、全くダメだ。

周りの生徒は呆れて笑い始めた。



「魔力の流れというのがよくわかりません」


あ、その基本から解ってないのか。そりゃ魔力の行使はできないね。

陣は展開されているのに魔力が流れていないから魔術が発動しない。


魔力の流れがイマイチ理解できないみたいなら無理矢理やれば変わるんじゃないのか。


「手のひらに意識を集中させて、そこに魔力は感じるか」


「わからないわ」


手のひらをジッと見つめている。

魔力は流れているけど本人が解らないんじゃねぇ。感覚掴めるとわかると思うんだけどなぁ。


「無理矢理魔力を流すことはできる?魔力が流れる感覚がわかれば、やりやすいかも」


"流れる感覚"がわかるだけで違うはず。無理矢理にでも魔力を動かせればいいのに。

アレンに聞いてみると、あまりやりたくないみたいだ。


「相性の良い相手が魔力の補助をすれば、本人の魔力と補助者の魔力を流すことができますよ。ただ、相性が悪ければ補助者に悪影響があり魔力量によっては危険です」


「私が補助してもいいか?」


「シオン殿下が補助をするのですか?エレナ嬢の魔力は多いので相性が合わなかった場合は影響が大きくて危険です」


「そのためにアレンがいるんだから、何かあっても対処できるから大丈夫だよ」


無邪気に微笑んでみせたら、アレンもヤレヤレって感じだ。相性なんてやってみないとわからないし、やってダメなら次の方法を考えればいい。


「わかりました」


アレンは先に陣を展開している。不測の事態があれば魔術を止めてくれるようだ。


「エレナ嬢は陣を展開してください。シオン殿下、エレナ嬢の右手首を持って魔力を流してください。流れると温かくなり、陣に二人の色が重なります」


魔力は瞳の色と同じなので紫と黒が重なるのか。カッコいい色合いでワクワクする。ま、僕程度の魔力量じゃ色までは見えないだろうけど。



エレナの手首を持って魔力を流す……

あ!温かく感じる。



ーーーーふわっっっ

 


瞬間、エレナの周りに風が巻き起こり黒と紫が陣に重なる。同時に僕にもエレナの魔力が流れてきた。



なんだこれ、すごい心地よい。



光輝いたあと氷が放出された。

黒の混ざった紫色の魔術光。


「すごいわ!魔力が流れるって解ったかもしれない!包み込まれるようなふんわりとした感覚がありました!」


流れる魔力の感じ方は人それぞれなのか。


「すごい……シオン殿下!今、エレナ嬢に魔力を流したのではなく使いましたよ!エレナ嬢の魔力を補助魔力にしてシオン殿下が使ったんです!これは相当、相性が良くないとできませんよ。驚きです」


へぇ……魔力流してエレナの魔力を使ったのか。うーーーーん、使おうとしてはいなかったからイマイチわからない。


「エレナの魔力が身体に入ってきたように感じたのはその所為か。魔力を流したはずなのに逆に入ってきたような感覚があったけど、それが、エレナの魔力を使ったことになるのかな」


どうやってエレナの魔力を使ったのかわかれば応用できそうだ。


エレナは……不思議そうにキョロキョロと自分の身体を見ているけど、どうしたんだろう。


「シオン殿下はエレナ嬢の魔力を心地良く感じられたのですか?それは相性がピッタリです。どんなに相性が良くても相手の魔力を心地良く感じるのは珍しいですよ」


へぇ、とても相性の良い人に巡り会えたみたいだ。


「あの……」


ん?エレナが不安そうにしている。


「シオン殿下の魔力が流れてから身体から魔力を感じるようになったのですが、これは私の魔力でしょうか?」


ん……?そういえば……と思い自分の身体を確認するとさっきまでとは違う魔力を感じるけど、コレは……エレナの魔力じゃないか?


「うーん。今、エレナ嬢が身体に纏っている魔力の殆どはシオン殿下のものですね。紫色に見えています。あと、シオン殿下の身体を纏っている魔力に少しですが、エレナ嬢の魔力が混ざっていますね。紫に少しだけ黒が混ざっています」


魔力が見えるってすごい。

僕の魔力にエレナの魔力が混ざっているなんて不思議な感覚だ。

エレナの方に視線を移すと、顔を赤くして頬に手を当てている。暑いのか?


魔力補助をして混ざった魔力は、通常なら二、三日で全て消えて自分の魔力だけになるらしい。


エレナは僕の魔力を纏っていると知られて周りのご令嬢に睨まれて居心地が悪そうだ。

友人が一人付き添っているから何かあっても一人ではないから大丈夫だろう。


「エレナ、魔力の補助を提案して申し訳ないことをした。魔力が混ざっていて気分が悪くなったり他の問題が起きたら直ぐに知らせて欲しい」


隣の友人にも聞こえるように『嫌がらせを含めた問題が起きたら報告しろ』と暗に伝える。『ありがとうございます』とだけ返事をもらったが大丈夫だろうか。


「隣の君、名前は?」


「私はグレディミア侯爵が一女、ルーシェと申します」


「グレディミア侯爵令嬢、エレナを頼んだ」


「はい」


この日、僕がウェスタリア侯爵令嬢を呼び捨てにしていることと魔力の相性が良いという話は直ぐに駆け巡り後に社交界で宰相の娘が王太子に取り入ろうとしていると噂された。


淑女科でのエレナの立ち位置は正確に把握し切れていない。

同学年に公爵令嬢がおらず宰相の娘であることと爵位としては一番上だろう。

友人との関係やクラス内の状況把握が必要そうだ。


紳士科では『王太子が寵愛しているのはウェスタリア侯爵令嬢ではないか』と噂され始めた。

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