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43.ガーデンパーティーで起きた事件は

「この教室から庭園が一望できるとは知らなかったよ」


「中央棟内を探し回ったからな」


ガーデンパーティーの様子を確認できるように中央棟の一室を自習と称して借りている。

手続き自体は申請書を生徒会に提出するだけだからジャックに書いてもらって提出させた。


部屋の隅で『巻き込むな』と、魂抜けた様子でぐったりしているジャックは放置だ。


ついでに、近衛二人とアレンには転移できてもらい、何が行われるか見届けてもらう。

状況によっては拘束や魔術の発動が必要になる。この辺りは王太子権限でどーにかした。


話し声は風魔術で聴いている。

女性達の楽しい時間を盗み聞きして申し訳ないが、エレナを護るためと自分自身に言い訳している。

あまり気分の良いものではない。



「そういえば例の件は?陛下に頼んだけど問題なし?」


「はい。王都周辺の貴族向けへの通達は二時間前、王都の貴族には三十分前、王宮勤め人には一時間前に告示されています。この学園は廊下に張り出し作業中です」


「そうか。放課後だから帰宅した者も多いだろう」


「仲間内で知らせに来るはずですが、あの庭園の周りは今日のために雇われた護衛が囲っています。主の言いつけを守るよう高給が支払われますから無闇矢鱈に人の出入りはできません。恐らく知らずに過ごすでしょう」


まともな護衛なら主に告示を知らせるのに、あの護衛達は無理だろう。

あの護衛は日雇いだから臨機応変な対応は無理だ。


「ジャックは聞いたか?」


子爵位の嫡男には、どのタイミングで知らされているのか。


「あ、話しかけて良いのか?おめでとうございます!!ここ来る前に邸の侍従が慌てて知らせに来てくれた」


「ありがとう。子爵位でパーティー前に知る事が出来たなら、あそこにいる人達は知ってて当然だな」


「あったりまえだろ!!この学園に通っているなら知ってて当然だ!」


ま、貴族として当然だな。


「僕に聞きたい事があるだろうけど、全て終わってからにして」


「へーい」


ガーデンパーティーが始まってからも、告示されたことを話している者はいない。


参加者の殆どはメッゼリッヒ公爵令嬢に近しい者や家同士の付き合いがある者で、エレナとルーシェ嬢、ジェラール辺境伯令嬢が異質な存在のようで、マクリオ男爵令嬢とは別の意味で周りから浮いている。


エレナには今日、告示されることを伝えている。友人には内密に話をしているから、参加している二人は既に知っている。


で、話題にならないことで驚いているのか『何を言われるかわからないから話さないでおこう』と話し合っている声を聞き取れた。


学園へ入学するまでの殆どを領地で過ごしていたエレナは社交が不安だと話していたが、そつなくこなしている様で安心した。


エレナに良い感情を持っていない人が相手でも話を聞き意見を交わし合い、時には冗談で惹きつけて、相手に気持ちよく話してもらうのが上手い。


これなら王宮内に夫人たちを招待して開く茶会も問題なくこなせるだろう。


エレナからマクリオ男爵令嬢に話し掛けたが無言のまま立ち去られたのは何故だ。可笑しな事は言ってないのに。


他のご令嬢も数名が話し掛けるが、会話が成り立っていない。涙を流したり『私が悪いんですね』と言い放ったりで、話し掛けたご令嬢が困惑している。



「ラスティ、アレは病気か何かか?」


「さ、ぁ?ジャックはわかるか?」


「俺も混乱しかない。アレじゃねぇの?自分が責められてます演技。周りにはマクリオ男爵令嬢の声しか聞こえてないだろうから言い合いとかしてるのかなと疑念を持たせて、相手の立場を悪くする。事実は何であれ、そう思わせる事が重要なんだよ」


「あぁ、それな」


それ、味方がいないと成り立たないけどな。


ガーデンパーティーも終了の時刻が近づいていた。

このまま何も起こらないと思っていたが……



《きっ、きゃぁあああああ!!》



女子生徒の叫び声が聞こえたので窓が覗くと、一人倒れていた。



「アレン、あのご令嬢は倒れる前は何をしていた?!」


「お茶を飲んでいたはずですが。行きますか?」


「まだだ。今、エレナが駆け寄ったから何かあっても治癒で多少は時間を稼げる」


「シオン殿下、あそこの女子生徒がフラフラしています」



そこから参加していたご令嬢の数人がバタバタと倒れていく。

苦しそうに倒れ、叫び声でパニック状態だ。


倒れたご令嬢の所へはエレナが駆けつけて魔法を発動させているが、あまり状況はよくない。


「行きたいけど、まだ動きがないな」


「シオン殿下が行くのは危険です。私とカイで行きます」


ラストゥール領へ訪問する際に護衛を頼んだカイとネイトが周りを警戒してくれているが、突然、近衛騎士が現場に入るのはまずい。


手で制して様子を伺う。



「シオン殿下、あのご令嬢が話しかけていた女子生徒が次々と倒れているようです」


ネイトが指差していたのはマクリオ男爵令嬢だ。


「何かしていたか?」


「そこまでは見えませんでした」


そろそろ助けに行こうとした時、マクリオ男爵令嬢がエレナに何かした。

と、同時に護衛していた男と制服を着た男子生徒が乱入し、エレナに魔術を発動し腕を縛り上げた。



《いやぁあああああ!!!》



エレナが叫んだ瞬間に魔石に仕込んでいた陣が発動した。エレナの周りが氷で囲われ、男達は吹き飛ばされた。



《エレナ様っ?!》



エレナの周りには多くの氷があり誰も近寄れない。

駆け寄ろうとしたルーシェ嬢も氷の壁に阻まれ近寄れないでいる。



「あの男達を拘束しろ!それと、マクリオ男爵令嬢とメッゼリッヒ公爵令嬢もだ。メッゼリッヒ公爵令嬢の拘束にはラスティが立ち会え」



公爵家の令嬢を拘束し、後から爵位を盾に文句をつけられないよう、モリアーティス公爵家の嫡男に立ち合わせる。


ジャックには学園長に報告へと行かせた。僕の手紙を持たせたから直ぐに動くだろう。


グレイには庭園に人が入らないよう頼み、カイには直ぐに騎士へ連絡させた。その上でアレンと庭園へと急ぐ。



庭園へ到着すると、ジェラール辺境伯令嬢が倒れたご令嬢達に付き添い、水を飲ませている所だった。



「ジェラール辺境伯令嬢、何が起きた?」


「彼女達がお茶を飲んで直ぐに苦しみだして……倒れたのです。エレナ様が治癒されたので大事には至りませんでした」


「全員が同じ症状か?」


「いいえ、数名ずつ違うようです。エレナ様が毒と睡眠薬を人によって使い分けているようだと仰っていました。睡眠薬は魔術で作られているようで即効性があったみたいです」


数名が叫びもせずに倒れたから、そのご令嬢達は睡眠薬を飲まされたのだろう。


「あの、エレナ様は」


「私の持たせた魔石の陣が発動しただけだから問題ない。彼女達を頼む。直ぐに常駐医が来るだろう」


その場を離れ拘束された男達のところへ行くと、やはりと言うべきなのか、クルト・フェルディナントの姿もあった。


「騒ぎがあったようだが」


見張っていた事は知らせず、騒ぎについて確認する。

誰も何も答えない。


「何があった?何をしようとしていた?」


この場で一番身分の高いメッゼリッヒ公爵令嬢を見るが俯き何も答えない。


拘束されてある男の前へと移動する。


「お前達は何故、ここに来た?」


と、瞬間、魔術の発動を感じ取ったので防御の陣を発動させる。




ドゴォオオオオオオン!!!

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