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41.仕事の邪魔とお茶会と

読み直したら中途半端になっていたので貼り付け直しました。

マクリオ男爵令嬢の件は『打つ手なし』とするにしても、王太子が何の対処も出来なかったというのは世間体が悪い。


僕だけではなくモリアーティス公爵家の嫡男であるラスティもいるのに。


強いて言うなら淑女科の問題が大部分だからメッゼリッヒ公爵令嬢の方が社交界で噂の的になりそうだ。


メッゼリッヒ公爵令嬢はマクリオ男爵令嬢に、相談事があれば生徒会室まで来るようにと伝えたせいで、割と頻繁に来る。

相手をするのが面倒だから、メすッゼリッヒ公爵令嬢に相手をするよう伝えるが、必要もないのに話しかけられて迷惑だ。



「シオン殿下ぁ〜、お仕事お忙しいのですか?私もお手伝いします!」



数分おきに話しかけるな。うぜぇ。

マクリオ男爵令嬢に話しかけられても無視して書類を片付けていく。


「アリティア様はお優しいですね!あの女たちとは大違い!生徒会室へもお誘いいただいて嬉しいです」


「そう、良かったわ。学園では立場関係なく学ぶのですから気兼ねなくいらしてね」


「ふふ、女性で優しくしてくれるのはアリティア様だけです。皆さん、私のことを馬鹿にするから」


「受け入れる、というのは簡単なことではないの。彼女達にもプライドがあるのでしょうし……ただ、私達のような高位貴族に生まれた者は領民達のことの生活を考えることが求められるので彼女達の言動は問題でもあるわ」


「さぁ〜すがアリティア様!!あの人達とは違うわ」


「皆さん、婚約者に近づくな!って怖い顔して怒るだけなんだもん。あんなんじゃ、結婚してからもお仕事で疲れている旦那様を癒すことは出来ませんよね」


「アリティア様と結婚される方は幸せ者ですね。私も素敵な人と結婚できるといいのだけど」


「最近仲良くしている方々とは考えていないのですか」


「お友達ですよぉ〜。変に誤解されちゃうのは困りますけど、意地悪してくる人から守ってくれるので助かってます」


……メッゼリッヒ公爵令嬢は何がしたいんだ?このマクリオ男爵令嬢も。

彼女が開いている茶会みたいだ。


二人は仕事の邪魔をしているのか、お茶を飲みながらお喋りに夢中だ。


この二人と結婚しても仕事が終わってから癒されることはなさそうだ。相手をするのが男の甲斐性と言われても、エレナ以外ではお断りだ。


「シオン様って呼んでもいいですか?皆さんとも仲良くなりたいです!堅苦しいのは無しにしましょう!」


話しながら二人してチラチラと、仕事をしている僕たちにら視線を送っていたけど、全く反応しないし話に加わらないことで、話しかけてくる。


だから、仕事の邪魔すんなって。


言外に込めた言葉だとラスティとも仲良くしたって捉えていいのかな。

リオナル殿は溜息を吐いて小声で『どの立場で話してんだよ』と、ごもっともな反応で。

マクリオ男爵令嬢のことはメッゼリッヒ公爵令嬢に任せているのに何もしない。

僕がチラッと見ると嬉しそうにするのが腹立たしい。


いや、あのさ、何のためにココに呼んだ?

どーにかしろー。



「名を呼ぶ許可は出さない。私のことは殿下と呼ぶように」


誰も言わないから嫌なことは断る。

エレナ以外に名を呼ばせるつもりはない。

虫唾が走る。


「でもでもぉ〜、」


「書類は一通り終わった。話し合う議題がないから私は失礼する」


「あっ、えと、シオン殿下ぁ〜」



無視無視無視無視!!!!

馴れ馴れしいんだよっ!!


イラつきながら生徒会室の扉を閉める。

あれから、エレナは食堂を利用していない。

テイクアウトをして友人と中庭で食事をしているらしい。


王宮で会えるのは寝る数時間前。

朝食と晩餐は一緒でも、エレナはお妃教育が始まり自由な時間が減った。


食事、あまり好きじゃないのか朝は残念そうにしている。

実家と食事が違うのだろうか。

希望があれば話して欲しいけど、まだ少し遠慮気味だ。



「一度でも喧嘩すればいいやすくなるのかな」



母上と父上が喧嘩している姿は何度か見かけた事がある。それでも仲良くしているから、お互いに言いたいことは溜め込まない方がいいだろう。



王宮へ戻ってからはエレナに声を掛け、一緒にお茶をしてから僕は執務室へと移動して仕事を片付ける。


いつの間にかラスティが来ていて提案書や他の案件を纏めている。


「そういえば婚約者が決まったんだってね。おめでとう」


「そりゃどーも」


「どうやって決めたんだ?」


「面倒で釣書をぶん投げて決めた。一番遠くに飛んだのにした」


「それがグレディミア侯爵令嬢か」


「ぶん投げたことは誰にも言うなよ?」


「悪い、グレイに話した」


「おまっ……まぁグレイなら」


グレディミア侯爵が記念でモリアーティス公爵家に釣書を出してみよう!会えたらラッキー!なんて軽い気持ちで申し込んでたら、公爵家との婚約話しが進んでしまったことでパニック起こしてたらしい。

慌ててルーシェ嬢の作法教育を見直した話を小耳に挟んだ。


数度、モリアーティス公爵邸で逢瀬をしているらしいけど、僕の婚約もしくは婚姻の発表後に公にするから、学園では無闇矢鱈に話しかけてはいけないらしい。可哀想に。


だからエレナの代わりに話し合いにはグレディミア侯爵令嬢を推したのか。

分かりやすい奴。


「そういえば、ルーシェがエレナ様とお茶会へ行くと話していた」


ご令嬢の名前はルーシェ・グレディミアか。確かエレナもルーシェの名前を出していたな。


「そうか。エレナ様って言い方を癖にすると学園でも言い間違えるぞ」


「王太子妃を気安く呼べねぇよ。俺の方が立場は下なんだし」


「気安く呼んであげてよ。変な感じがして嫌だって話してたから」


「……卒業するまでなら」


「頼む」


「なら、ルーシェの事も名前呼びよろしく。未来の公爵夫人で王太子妃のお友達だから」


「りょーかい。で、お茶会って?」


メッゼリッヒ公爵令嬢が午後の授業が休みの日に学園にある庭園でお茶会を開くらしく、ルーシェ嬢とエレナが招待されたらしい。それが今週末。


「女子生徒だけなんだろ?中央棟の庭園か。様子見れるかな」


「その日は自習室を予約した。そこから見下ろせる」


「その日に生徒会あったかな」


「週末はない」


「あ、週末、か。えぇっ!?」



あ、そういえば週末の放課後、結婚してからも続けてたけど、今週は無理って話を聞いてないぞ。


うーーん、僕としては王宮よりも快適だから続けたいけど。


今夜のうちにアレを渡そう。

求婚したときに渡せなかった。


夜になり私室で残りの作業をしてからシャワーを浴びて寝室へ行くと既にエレナがお茶の準備をしていた。


毎日、寝る前にエレナがお茶を用意してくれて二人の時間を作るのが日課になっている。


化粧をしていないから、と、部屋は薄明かり。化粧をしていなくても気にならない程度で、そこまで暗くないが雰囲気が出ちゃってて毎晩我慢との戦い。


学園がある前日は仲良ししない約束だから仕方がないけど、溜まると週末が辛いのは相手をするエレナの方なのに。



「気になっていた事があるんだ」


「なに?」


だいぶ、敬語を使わずに話してくれるようになった。


「朝食の時、我慢しているように見えて。何か不足でもあるかなと」


「そんなことはないです」


俯いたってことは何かあるってことか。

無理に聞き出しても……か。


「我儘は大歓迎だから」


「…………」


「僕はね、エレナから全て奪ったんだ。家族と過ごす時間、愛される時間、自由な時間を。それも突然、たった一晩、僕と過ごしただけで、その全てを奪った」


「あ、れは……」


自分も同意の上だ、と話そうとして言葉が出てこない。その先までは考えていなかったのだろう。


でも僕は理解していた。

あの日、エレナの純潔を奪った先にある未来を知っていた。


邸へ帰れないことを、嫁入りすることを、両親や家族から引き離すことを、お妃教育が始まり自由な時間を奪うことを。


「明日はウェスタリア邸に泊まろう、僕と一緒に」


「え?」


「結婚してから一度も帰ってないからね。仲の良い使用人もいたんだろ?挨拶をしないと」


「……ありがとう、嬉しいです」


エレナの頭を撫で髪を掬い口付ける。


「これ、求婚した日に渡す予定だったんだ。受け取って?」


用意していたのは純度の高い高品質の魔石だ。王家へ献上される予定の物を買い取り、首飾りに加工させた。


「素敵な首飾り……」


「魔石で作ったんだ。僕の魔力を込めてあるから、何かあった時に護ってくれるよ。だから、明日からは毎日身につけて欲しい。チェーンは長くしてあるから制服の中に隠れるだろ?」


「はい、毎日身につけます。ありがとう」


ほぅっ、と見惚れている顔が蕩けた顔と似ていて愛らしい。





その夜、日付が変わる前にエレナの神の力が覚醒した。

その瞬間、女神が舞い降りたのかと思う程、エレナが美しくて言葉も出ずに、ただただ見惚れていた。


エレナも心から僕を愛してくれている、だから覚醒したのだと思うと嬉しくて堪らなかった。

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