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39.報告と今後について

「おはよう」


隠れたエレナの顔を覗き込んでチュッと額に口付けを落としてを意識を僕に向ける。

視線が合って驚いたように瞬きしている姿は可愛らしい。


「お……おはようございます。シオン様。あの、わたくし、えっと…えぇっ!?」


反射的に挨拶を返してくれたけど思考が追いついてなかったのかな。

僕の上半身と、自分の姿を確認して思い出したように真っ赤になる。でも直ぐに表情は真っ青だ。

コロコロと変わる表情が面白い。

自然と口角が上がる。


「シオン……だろう?」


耳元でそう囁けばエレナはビクっと身体を震わせて口をパクパクしながら僕を見ている。

ふむ、言葉で攻めるのも悪くないかもしれない。素直な反応が堪らない。


「もう少し二人でゆっくりしよう」


エレナの上に覆い被さるがグイッと押し返されて逃げられる。

逃げるといっても少し左にズレただけだ。

突然の拒否なんて拗ねちゃいそうだよ。


「身体は大丈夫?」


「腰がとても辛いです。身体が重だるい」


「無理させすぎたね、今日はこのまま部屋にいていいよ」


入浴を済ませて食事をした後はエレナを部屋に残して僕は陛下の元へ。


ミアにはエレナの側についているよう言付けて、王妃が乗り込んできたら部屋への入室させるよう扉の外の護衛に言付ける。



執務室区域に近づくにつれて気分が重くなる。ついさっきまではエレナとイチャイチャしていたのに、これから、殺されるかもしれない場所へと行くなんて。



はぁぁぁぁぁ



なんだかんだ陛下は赦してくれるだろう。

相手がエレナなら大歓迎だろうし。

王妃も歓迎しつつ婚前交渉にブチ切れる。

宰相とレイは……発狂するかな。

レイ、に、殺されるかもしれない。



コンコンコンーーーー



入室の許可が降り、扉を開けると良い笑顔の陛下と静かに怒っている宰相の姿があった。

レイがいないのは助かったーーーーてないや。いたわ。部屋の左端にいる。

むちゃくちゃ笑顔だけど底冷えするくらい殺気が漂っている。



「さて、ここは家族として話をする。周りくどいのは無しだ」


陛下、いや、父上の言葉、優しそうですが怒気を孕んでますね。笑顔で怒っている。


「えぇ、不敬とか無しですよ。アンタの馬鹿息子は不敬以上のことをしでかしたんだからな」


「いや、息子がすまん」


「いやぁ、シオン殿下が私の弟になりたがっていたなんて初耳です。あぁ、もう弟でしたね」


むちゃくちゃ怒ってんな。

と、三人のブリザードは軽くスルーさせてもらおう。


「ご挨拶が遅れて申し訳ございません。エレナ・ウェスタリア侯爵令嬢を妻にしました。結婚のお許しをいただけますか?」


ここでの地位は二番目なのに一番立場が弱い。下からいかないとレイの方からの殺気で殺される。


「妻にした、とは?シオン、昨日からのことを全て話すんだ」


「昨日、学園で放課後にエレナに求婚して受け入れてもらいました。自室へは転移で帰宅し、ミアと護衛に言付けと箝口令を命じ、エレナと二人で寝室で朝まで過ごしました」


「して?」


朝まで過ごした、で、察して欲しい。言わなきゃダメか。


「純潔を奪いました」


まずは事実だけ告げる。

父親である宰相と夫人への謝罪は後から。


「うむ。こちらが把握しているのと相違ないな。純潔であったことは今朝、シャルロットが確認した。で、避妊はしたのか?」


あぁ……あのシーツ、母上が確認したんですね。女親に知られるのって恥ずかしい。


「避妊は……」


一回か二回は避妊しなかったんだけどな……記念に。

僕の目が泳いでいたのだろう。

宰相が小声で『盛りがついた馬鹿王子』と呟いているのが聞こえた。


「避妊は一回か二回、忘れました」


いや、せっかくだから、ねぇ?


宰相とレイから魂が抜けました。

本当にごめんなさい。


何度か頭を下げて謝ったけど、まったく心ここにあらず。本当にごめんなさいって。


「陛下、いや、セシル、お前の馬鹿息子の後始末はどうつけるんだ?」


あ、ついに陛下を呼び捨てにしましたね。

レイはレイで『避妊しないとか気持ちわかるけどダメだろ』とか、他にも聞こえちゃいけない呟きが聞こえたのは黙っておこう。


そーっと視線をレイから陛下へ向けると、ものすごく盛大にため息をつかれた。


「本日夕刻までに婚姻契約書を作成する。晩餐までに署名して正式に夫婦とする。結婚式の日程と婚姻の告示は明日以降に調整とする。先に書面での婚姻を済ませる」


「ありがとうございます」


頭を下げて礼を伝える。

望んだ通り。


宰相へと向き直り頭を下げる。

今の僕ができる誠意なんて限られている。


「大切な娘さんを奪う形となり申し訳ございません。必ず幸せにします」


頭を上げて宰相と目が合う。

僕を睨みつけたい気持ちは、なんとなくわかる。でもきっと、父親としての気持ちの理解なんて娘が出来ないとわからない。


僕も、ラスティの息子に娘を嫁がせる時に気持ちがわかるのだろうか。


「幸せにするのは当たり前のことです。貴方に出来ることは娘を一人にしないこと。妻の血筋は寿命が長いのです」


「工藤魔法公爵家の血筋のことでしょうか」


「えぇ。精霊に愛されし娘の寿命は長い。妻も幼い頃から精霊と交流があります。エレナも同じように」


工藤魔法公爵家の娘たちは、初代皇后の血を継いでいることで精霊に愛されやすく、その精霊が手放したくないと思うと寿命が長くなる伝承があると聞いた。


「娘を一人にしないでください。出来る限り娘を看取れるくらいには長生きしてください」


「看取る約束はできません。ですが、出来る限り、どのような手を使ってでも長く生きます」



婚姻契約書に記載する内容を軽く打ち合わせて、他の細かいことは陛下と宰相、次期侯爵となるレイの三人で取り決めることになった。


僕は署名の前には書面を確認し、変更を希望する事項や追加事項がないかを確認することとなった。







数時間後、婚姻契約書に書面するためにエレナを連れて王族居住区内にある身内だけが利用する執務室へと通された。


懐かしい。

昔は説教部屋、と、言っていたことを思い出した。



部屋に通されてすぐ、僕とエレナは互いに婚姻契約書に目を通す。

僕の意見は盛り込み済み。

エレナは思う所があっても意見は言わない。

貴族令嬢は契約された内容を確認するだけだ。


滞りなく婚姻契約書に署名し、王宮にある神殿の神官立会の元、簡略化された婚姻の儀を執り行った。


女神ルミアスが見護る中、婚姻書に署名し、晴れて夫婦となった。


「おめでとうございます。お二人に女神ルミアスの加護があらんことを」



騒がせた僕とエレナの婚姻は身内だけで執り行われ、貴族と民衆向けの婚姻の儀は別途、執り行われることになった。


翌日にはモリアーティス公爵家に婚姻について説明される。

早急にラスティの婚約者を見つけ婚姻させるかまで決める必要がある。


晩餐の時間はエレナが母親と義母と仲良く楽しそうにしていて安心した。


晩餐の前に宰相と夫人と三人になり、土下座して謝った。謝り倒した。宰相に殴られる覚悟でいたのに殴られなかった。


夫人は婚姻を前向きに捉えていて喜んでくれて……『付き纏われると好きになっちゃうのよね』なんて言い出すから宰相がアワアワと慌てていて面白かった。



王族となったエレナは王太子宮に住まいを移した。王太子妃の部屋は用意されていないが王太子の部屋の隣が空いているので、そこに住んでもらう。

王宮内の改装が終われば、夫婦の部屋で住むことになるが、学園を卒業するまでは『避妊』するようにと念を押された。


心なしか母上が化け物のような顔に見えたのは気のせいだろう。



翌日のモリアーティス公爵家との昼の会食はエレナ抜きで行った。いや、男だけでの会食で、エレナは母上に拉致された。


モリアーティス公爵家、いや、公爵とラスティにブチ切れられるわ呆れられるわ、宰相は怖いしレイの微笑みは不気味だし。



とりあえず、エレナは学園を卒業するまでは定期的にウェスタリア邸へと帰宅して家族の時間を過ごせるように手配済み。


僕の身勝手で引き離した負い目と宰相が怖かったからというのは秘密です。

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