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24.誕生日の夜会②

ブクマ&評価をありがとう、ございます!

一瞬、静まり返った会場は理解するとヒソヒソと囁き合う声が多くなる。


それもそうだ。


会場に現れたエレナが身につけていたのはティアラの代わりにしたサクラに似たモチーフの大きなピンクダイヤモンドに、同じモチーフの首飾りと耳飾りだ。


特に髪飾りに使われているピンクダイヤモンドは大きくて色が濃い。グラデーションにしているが、一番大きなダイヤは濃くて遠くにいても解るくらい目立つ。


「ウェスタリア侯爵令嬢か身につけているのってピンクダイヤモンドかしら?以前、王妃が夜会でピンクダイヤモンドの首飾りを身につけていたけど似ているわ」


「えぇ、サファイアとは色味が違うわよね」


侯爵夫人や伯爵夫人の話が周りにも聞こえている。夫や周りの夫人とヒソヒソと話し始めた。


ウェスタリア侯爵令嬢が王太子から寵愛を受けている、それは学園内の噂を子供が持ち帰って社交界で広まっていたが、真実がわからないままだった。


だけど、あのピンクダイヤモンドを身につけていることで寵愛を受けている噂が事実になる。


エレナには待つと伝えていたけど、しっかりと外堀も埋めていきます。逃げられないように。


この瞬間を見るためだけに夜会に参加したんだ。来て良かった。


ファーストダンスはレイと踊り、二曲目以降は誰の手も取らない。レイにエスコートされたまま、来賓客へと挨拶をする。


僕はその姿を遠くから見守る。


「ほら、酒飲むだろ」


「あ、あぁ、ありがとう」


「あれ、レオンからのプレゼント?」


「そうだね。ディアマント領でしか採掘されない貴重なダイヤだ。他にあのサイズを持っているのは王妃だけだね」


「マジかよっ。本人は理解しているのか?」


「どうだろう?」


身に付けた姿を見て宰相とレイが説明しただろうし、嫌がったりもしているだろう。

あのダイヤの意味を宰相が知らないわけがない。


婚約の申し込みをするのはエレナの気持ちを確認してから。でも、その前に宰相に仄めかす。




『あなたの娘を妃にしたい』




十分に伝わっているのだろう。

だから予定していたラスティとの二曲目のダンスがなくなった。

ラスティだって、ピンクダイヤモンドに気付いているから誘っていない。



ラスティがジャックに気付いて近寄る。で、隣の僕をジーッと見て三人でテラスへ移動した。


「シオン、だよな。認識阻害の魔術を使っているのか?多少はわからなくなるもんだな」


「さすがに再従兄弟までは騙せないか。レイ対策で魔力隠蔽もしているよ」


「本当に来たのかよ。ジャックも大変だったな」


「俺はいいけど、親父が大変」


「夫人は体調を崩したみたいだしね。明日にでもお礼の品と見舞品を贈るよ」


「いや、それ届いたら側頭もんだわ」


「ジャックのとこは倒れるのが好きだねぇ」


「両親が死んだら確実にレオンのせいだわ」


貴族なんだから王太子と会って、いちいち倒れないで欲しい。


「それより変装は楽だな。試しにご令嬢と目を合わせてみたけど、あれ、嫌がって目を逸らしたな。初めての経験だ。子爵家の縁戚の準男爵家嫡男だと、ご令嬢は近づいてこない!」


「顔はいいから近づいてきても、準男爵家と知ったら逃げるもんな」


ラスティには羨ましがられた。大変そうだからな、会場で逃げ場がなくて。婚約者がいたらエスコートついでに側にいてもらえば牽制になるだろうし。


本当は今日の夜会に合わせて婚約発表をしたかったらしいが、モリアーティス家は王家の意向を確認しないと婚約を了承できないと伝えたことで取りやめになった。


「夜会前に宰相にあったけど、婚約のことで謝罪された」


モリアーティス家とウェスタリア家で進めていた婚約話が立ち消えになったからなぁ。しかも、エレナが王太子に寵愛されたから。


「で?」


「腹を括った方がいいですよ、と伝えた。もう娘の嫁ぎ先は諦めて、望んでいる男の所へ嫁がせた方が幸せでは?とね。苦虫を噛み潰したような顔をしていた」


「まだ、認められていないからなぁ」


宰相は僕の何が嫌なんだ。


「父上の話だと、宰相は陛下の兄貴分で幼い頃から世話役をしていたらしい。で、その息子の世話まではしたくないし家族になるのは嫌なんだとさ。陛下は家族になるのを望んでいるのに」


あ、僕が原因ではなくて陛下の問題でしたか。何したんだよ。


「ラスティ様?」


男三人のところへ近づいて来たのはエレナとジェラール辺境伯令嬢だ。

ラスティに微笑むなよ。ムスッとしているとチラリと僕を見てすぐに視線を逸らした。


「エレナ嬢とジェラール辺境伯令嬢か。何か用かな?」


「お話中にごめんなさい。リサ様がお願いしたいことがあるみたいで……」


「どうぞ?」


「不躾なのは承知の上で申し上げます。男兄弟の多い騎士や魔術師の殿方を探していますの。お知り合いにいらっしゃれば紹介していただきたくて」


「あ〜、婿探し?」


「えぇ。我が家は女系で、男児に恵まれませんの。今代は私が婿を取ることになりましたから、卒業までに探しております」


ラスティに頼んだと言うことは、王家に近くて男児の多い家柄、優れた騎士や魔術師が希望、か。現当主は騎士爵の三男だったはず。ずっと騎士爵から婿入りしていたから、今代は王都の騎士や魔術師を婿入りさせたいのか。


辺境伯としては王太子に近しい人間が婿入りした方が好ましいのだろう。


「騎士か魔術師ねぇ。魔術師だと実戦は無理だ。辺境伯は務まらないかもしれないよ?」


「争いがあれば私が前に立ち統率することも考えております。我が家は男児にも魔力持ちにも恵まれませんの。数代前にラストゥール家から婿入りもしましたが、魔力持ちは次代で途絶えました。魔獣の討伐には魔術師が必要ですし」


エレナと縁戚、かなり前で血が繋がっているのか。


確かに辺境伯領は魔獣も出現するし魔術師を雇うにも優れた魔術師がいた方が人は集まる。現に、今代のラストゥール辺境伯は魔術が使えて、王都に来ない魔術師が集まるらしいし。


「それはシオン殿下にも相談してみるよ。騎士や魔術師は殿下の管轄になるし、政としてもジェラール辺境伯との繋がりは強固にしておきたいだろうし」


「お願いいたします」


ジェラール辺境伯令嬢とラスティが話している間、エレナ、顎に指を置きながら僕のことをジーッと見ているんだよ。


笑いもせず、考えている様子はあるけど、ジーッと見ている。


ジャックは隣で咳払いしているし。いつものように微笑めないから、首を傾げてみたら、エレナも首を傾げて……うぅ、抱きしめたい。


頭を下げて会場へと戻った二人だけど、チラリと僕を見てエレナは微笑んだ。


き、づかれてる?


「エレナ嬢に暴露なかったよな?なぁんかレオンの事を見ていたように感じたけど気のせいかな」


「ずっと見られてた。認識阻害が効かないのかな」


「うーん、いや、認識阻害はされてるよ。エレナ嬢、態度を変えてなかったし」


と、ここで男三人、しかも一人は公爵家嫡男がいるのも変だからラスティとは別れてジャックと会場へと戻った。


会場では、エレナが侯爵家の嫡男と楽しそうに話している。羨ましいし腹立ってくる。

ジャックには腕を掴まれて『いくな、我慢してくれ』と言われて身動きできない。


ジーッと見ていたら、視線に気付いたエレナがチラリと僕を見て微笑む。妖艶に誘うように微笑むなよ。

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