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23.誕生日の夜会①

エレナの誕生日の夜会当日、王家に招待状は届かなかった。うん、宰相のことだから招待状を出したら僕なら来ると想定できたんだろう。


ただ、交友関係までは調べることはしていなかったらしく、招待状は簡単に手に入ったよ。


エレナの気持ちが揺れている今、王太子として参加すると追い詰めそうだから、コッソリ参加して見守ることにした。


自分がプレゼントしたアクセサリーをつけてくれている姿を見たくて。

つけていなければ、それまで、ということだろうし。


僕は昼過ぎから自室に篭って執務をし、時間になってから転移で移動した。


「この服なら普通かな。目立たないよな?」


「うん、目立たない。大丈夫だ、服は目立たない」


「服はってなんだよ。地味じゃないか?」


「服は地味でも大丈夫だ」


「さっきから、その言い方はなんだよ」


「いや、あのさ、自分の顔を鏡で見たことあるか?あとな、立ち振る舞いが、どう見ても高位貴族」


「失礼な。鏡くらい見ている。瞳の色と髪の色はジャックと同じ色にしたから同郷と話しても疑われないはずだ」


「どう考えても顔が目立つ。認識阻害しているんだろうけど美形は隠せてない」


「うーん、顔の造形を変えるのは難しいんだよ。変え過ぎると戻せないから認識阻害が限界」


「いや、多少は阻害できてるからパッと見はシオンじゃないんだけど、美形なんだよ」


「どうしたら平凡になれるんだ?」


「嫌味かよ」


ジャック・エブラルド子爵家へ転移してお邪魔している。ジャックの部屋を借りて着替えて、時間までサロンで待つことにした。


「ジャック、あの方はあの方なのか」


「あの方だよ。髪と瞳の色を変えたけど間違いなく王太子殿下だ。さっき、色を変える前に挨拶しただろ」


「いや、あのな、我が家を利用していただけるのは光栄なのだが、なぜ、我が家なんだ?」


「本人に聞いてくれ。親父なら王宮で顔を合わせることもあっただろ」


「王太子殿下への挨拶は伯爵家以上だ。壇上から降りられたときだって、声を掛けられなければ挨拶できないお方だぞ」


エブラルド子爵、聞こえてますからね?

まぁ、春夜会でも子爵家と言葉を交わすことはなかったから仕方がないのか。


「エブラルド子爵は座らないのか?」


「あっ、はいぃ!」


さっきからハンカチで汗を拭きまくって緊張しっぱなしだよ、この人。

そんな威圧していないんだから楽にすればいいのに。


「ジャックの父親は面白いな」


「シオンが自由過ぎて親父の理解が追いついていないんだよ」


「ジャック!殿下の名前を呼び捨てなんて失礼だろっ!!頭を下げろっ!」


慌てたエブラルド子爵がジャックの頭を思い切り押し下げ謝る。せっかく拭いた汗が大量に流れ出ていて、もう、着替えた方が良さそうだよ。


あ、子爵は夜会へ行かないからいいのか。

この人、僕がいなくなったら疲労困憊で倒れ込みそうな勢いだ。

夫人なんて最初に挨拶したあと、体調崩したようだけど大丈夫だろうか。


「エブラルド子爵、気にしなくていい。公式の場以外では呼び捨てにするようにと頼んでいるんだ」


子爵には息子と仲の良い友人であることと、僕がウェスタリア侯爵家の夜会へ参加するこど伝え、口外しないように口止めした。


子爵には、この話をしたら息子と家がどうなるか覚えておけよ〜と聞こえたらしい。明日にでもジャックが、しっかりと説明し直す

ことに期待する。



一先ず、子爵には退室してもらいサロンはジャックと二人だ。いちいち子爵が驚いて面倒なんだよ。


「ジャック、今更だが私は貴族の一般的な夜会のマナーを知らない」


「は?」


「王宮の夜会以外はラスティの誕生日の夜会に顔を出したくらいで、他は経験がないんだ」


「いや、俺だってデビューしたばかりでよくわかってねぇよ」


「それは困った。侯爵家の夜会でマナー違反は目立つ」


「ちなみにモリアーティス家の夜会ではどんな感じだったんだ?」


「裏から入って裏から出た。適当に過ごして、日付が変わる前に帰宅した」


「マジかよっ!適当すぎだって!えーと、夜会はな、」


それからジャックが夜会デビューする際に両親に教えてもらったというマナーを伝授してもらった。


子爵家だから直接、主催者に挨拶はせず壇上から離れた位置へ行って、高位貴族が動き出してから動きだす。うん、楽そうだ。


主役のエレナは侯爵家のご令嬢だから、いくら夜会の招待状を貰っていたとしても子爵家は挨拶されるまで声を掛けてはいけないらしい。


ついでに僕はエブラルド子爵家の縁戚設定だから貴族かも怪しい人物認定。準男爵設定だから、余計に話しかけてはいけない立場だ。


ジャックには『侯爵令嬢に抱きつくな』『見すぎるな』『自分の顔立ちを自覚しろ』『多少は雑に動け』『レイ・ウェスタリアには見つかるな』と、他にも沢山の忠告を受けた。


僕がやらかすとエブラルド子爵家に迷惑がかかるみたいだけど、そこまでのことをしたら正体を明かすから問題にはならないだろう。


夜会の時間になったのでエブラルド子爵邸から馬車でウェスタリア侯爵邸へと移動する。


「ウェスタリア邸って初めて行くんだよ。エレナの部屋に行きたいな〜」


「え、ないの?マジで?場所は知っているよな?」


「知らない。調べたことない」


「三大公爵家に匹敵する広さだ。王都の中心部から少し離れているけど敷地が広いらしい」


「広いのは知ってる。あそこは建国当初からある家だから王都の邸の立地はいいんだろうね」


「そんな古参の高位貴族の夜会なんて初めて過ぎて吐きそう。ラスティがうちに招待状を持ってきたとき、親父は倒れたからな」


「倒れんなよ」


今回の夜会の招待状はラスティから友人の分が欲しいとウェスタリア家へ伝えていた。それを届けてもらっていた。


暫くするとウェスタリア邸へ到着する。

エレナがここで暮らしているのか。


「それより名前はどうするんだよ」


「あ〜、名前、ね。レオン・エブリフト」


「語呂が似てて助かるよ」


「間違えるなよ」


ジャックは何度も名前を復唱して言い間違えないようにしているけどさ、僕が反応できるかは解らないぞ。



誰かに『シオン』と呼ばれたら反応しそう。



ブツブツ復唱しているジャックの後ろについて行き会場へと入る。


流石は侯爵家の夜会だ。参加者も高位貴族が多い。ジャックから教えてもらった通り、壇上から離れた場所へと移動した。


周りにいる人は子爵家の嫡男と一緒にいる見慣れない男に興味はないらしく、レイの友人の高位貴族の子息に夢中だ。


学園の同級生もいるが、僕には気付いていない。


「だ、れも気づかないもんなんだな」


「先入観の問題だろ。私がここにいるなんて、誰も考え付かないよ。それに、ほら、あそこにいるラスティが目立ってくれているから誰もこちらを見ない」


ちゃっかり、グレディミア侯爵令嬢に挨拶をして談笑しているラスティの姿は目立つ。

他の貴族令嬢が話たそうにしているし、グレディミア侯爵令嬢は迷惑そうにしてる。


ふむ。

この姿で夜会に参加すると、ゆっくりじっくり人間観察ができるのか。これからも、この姿で夜会に参加してみよう。



少し待つと主役のエレナがレイにエスコートされて現れた。


その姿に誰もが息をのむ。

僕だって女神が現れたと思った。



ここにいる誰もが理解してはずだ。



ーーーーーーエレナは王太子のものだ、と



その象徴が光にあたり煌めいている。

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