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13.誕生日プレゼントと××

話題を変えるのに最近読んだ小説の話をしたら食いついてくれた。

紀行とか旅に関する事が好きみたいだと推測した通り、他の領地や他国の話への食いつきがいい。


エレナは自身が知っている和泉皇国の話を教えてくれた。行ったことのない国だけど、いつか行ってみたい、国花のサクラを見てみたい、か。交流があれば連れて行ってあげられるのに、大陸が違うと気軽には行けないな。


……あ、あれって、サクラに似ているから喜んでくれるかも!


「エレナ、これ」


用意していた誕生日プレゼントを渡した。どんな反応をするか楽しみだ。とりあえず手に取ってくれたから一安心。


「これは?」


「開けてみて」


うん、困惑しながらもケースを開けて驚いてくれた。指で触れて見惚れて、ほぅっと息が漏れる。


あぁ、その表情にさせたのは僕なんだ。


「これ、私に?」


「誕生日プレゼントだ。受け取って欲しい」


微笑んで伝えるとエレナは大きく目を開けて驚き、何度もヘッドアクセサリーにしたティアラと僕を見て顔を青くしている。


エレナは慌ててもう一つの箱を開けて、驚いて声が漏れそうになったのを手を口元にあて堪えた様子だ。


「あ、の……これは?サファイア?」


「ピンクダイヤモンドだ。その大きさは滅多に採掘されなくてね。ここまで濃いピンクで大きな物は久しぶりなんだ」


「ピンクダイヤモンド?!」


ピンクダイヤモンドは僕が領主を務めているディアマント領でしか採掘されない希少なダイヤモンドだ。


エレナにプレゼントした大きさと濃さのピンクダイヤモンドは王妃が使うティアラにしか使用されていない。


父上がプレゼントしていれば母上も首飾りとして持っているはずだけど。


「こ、んな貴重な物、いただけませんっ!」


「サクラ、みたいだろ?」


「うっ……はい。サクラをモチーフにしているみたいで可愛いです」


エレナの手からケースを受け取りティアラ代わりの髪飾りと、同じようにサクラに似たモチーフの首飾りと蝶をモチーフにした耳飾りをつける。


どれもよく似合っている。


髪飾りは大きなモチーフで一番大きなサイズのダイヤを使ってグラデーションにしているから色の違いで立体的に輝いている。


花の妖精のようだ。


髪色が黒だからピンク色が良く映える。


「誕生日の夜会で付けて欲しい。僕は参加できないから、せめて、このプレゼントを付けてくれると嬉しい」


エレナの手を取り目を見る。僕の真剣な気持ちを受け取って?


「あ、ありがとうございます……」


「付けてくれるのか?良かった、嬉しいよ。残りのケースには普段使い出来るように小ぶりのサイズで首飾りとブレスレットを作ったから、ぜひ使って欲しい」


「こんなに沢山……」


国庫から出ていたらどうしようとか、税収だったらどうしようとか心配し過ぎだし、そんな横領なんてしていないのに。


「色々と心配しているみたいだけど、僕の個人的な収入で購入した物だから安心していいよ」


王太子も働いていたら王宮勤めと同様に給金が入るんだよ。あとは領地の収入とかだ。


女性に物を買い与える男の気持ちが解ったよ。不安な表情はしていたけど、すごく嬉しそうにしていると、その顔を見たくて、また贈りたくなる。


「そろそろケースに戻しますね。あの、シオン様の誕生日は過ぎてますけど、何かお礼をしたいです」


耳飾りは自分で取れるみたいだ。髪飾りと首飾りを取るのに四苦八苦しているから手伝うためにエレナには近寄るように伝える。


髪飾りと首飾りを外してケースへ戻した後、エレナの腕を引き体勢を崩したところを持ち上げて膝の上に降す。


「ひゃぁっ!!」


エレナの肩に顔を埋めて抱きしめる。

甘くて良い香りだ。

この香りに包まれて眠りたい。


「……ハァ。可愛い」


こんな可愛い生き物がいたなんて初めて知った。あぁ、心も身体も全て僕のものにしたい。


「あ、の、シオン様っ!」


呼ばれたからエレナを見たら瞳が潤んでいて唇も艶があって……これが、誘われていると勘違いさせる姿なのか。


見つめあったままエレナの腰にある手に力を入れて後頭部に手を回す。

もう、エレナは逃げられない。


唇に軽く触れる。

啄むようにキスをすると声が漏れた。

薄く開かれた唇の隙間から少しだけ白い歯が見える。


舌をねじ込み深くキスをするとエレナの身体がビクリと反応する。


僕を引き離そうと肩を押さえているが手に力が入らないのだろう。押し除けることはできず、その手は肩に添えられているだけだ。


歯列に舌を這わせ逃げているエレナの舌と絡め吸い上げる。時折漏れる声が僕を誘う。

どちらのものか判らない唾液が口の端から垂れエレナの頬を伝う。


薄く目を開けるとエレナの瞳は硬く閉じられていた。僕の与える快感を必死に受け止めようとしている。


唇を離すと酸素を得ようとエレナが荒く呼吸をし肩を上下に揺らす。瞼が開き僕を睨んでだ瞳に涙が溢れていて、睨まれている気がしない。


エレナの顎に指を乗せ親指で唇を撫でる。

柔らかい……


「な、に、して……〜〜ンンッ!ンーーーッ!」


少しは呼吸をできただろうから、もう一度、舌をねじ込んでエレナの口内を堪能する。


数分は堪能しただろうか。

唇を離した時にはエレナはクッタリと身体から力が抜けていた。


エレナにとっては不本意だろうけど、僕に身体を預けている、その事実が嬉しい。無抵抗な、蕩けた顔を僕に見せてボウっとしている。



ちゅぅっ



額にキスを落とすと瞳が僕を映した。

その瞳に映ったことが嬉しくて微笑むと眉間にシワが寄った。失礼な。


「初めてだ、こんなにも愛おしいと感じたのは。エレナが可愛すぎて止められなかった」


「ど、うして、私なんかに」


まだわからないのか。

弄ばれている、とでも思っているなら鈍感すぎる。


「どうしてって、前にエレナが言ったんだろう?だから……」


最後の言葉はエレナの耳元で囁く。

前回、エレナがしたように。


「       」


クスッと笑って見せると、エレナは真っ赤な顔をして口をパクパクさせている。

前回は強がってたんだろう。

明らかに慣れていない。


「そうだ、お礼してくれるんだっけ?」


「はい……」


顔を背けられたから可愛い顔が見れないや。


「エレナとデートする権利を僕に」


「え?」


「今度二人でデートしたい」


「ひ……人に見られるのは……その……あまり外出も出来ないし……」


「平民街でもいいなら変装してデートしよう」


「平民街?」


「そう、きっと楽しいよ。そうだなぁ……今度、エレナの友人も一緒にモリアーティス邸で行う茶会に招待するよ。グレディミア侯爵令嬢だったかな。二人でラスティの所へ行くといい。そこで待ち合わせしよう」


町歩き用の服を用意して、靴もいるな。帽子と、急いで作らせたら数日で完成するだろう。


「ご……ご迷惑では」


「ラスティがグレディミア侯爵令嬢と話をしたいらしいんだ。立場的にラスティはグレディミア侯爵令嬢だけを茶会に招くのは難しい。だから二人で協力しよう?」


エレナは友人想いで特にグレディミア侯爵令嬢と仲がいいからね。


「お二人の仲を取り持つの?」


「そう、僕たちにしか出来ない事だ」


「わかりました!ぜひ、協力させてください!!」


「協力だけではなくて、僕にエレナとデートする権利もくれるということでいいかな?」


「あ…… は、い。お願いします」


毎回、膝に乗せることとデートで迷ったけど二人の思い出の方が貴重だからデートにした。


別れ際に頬にキスをしたら『調子に乗らないでっ!』と、平手打ちされた。

すげぇ痛い。

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