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11.転移術の再現と承認

8月いっぱいで完結する予定の連載が終わらなかった。

本編のブクマ1000件記念の5話程度の短期連載予定だったのに。

「ねぇ、シオンに何かあったの?」


「わっかんねぇ。魔術研究で数日、明け方まで起きていることはあったらしいけど。昨日の放課後から変だ」


「放課後に何があったのさ」


「昨日の放課後、ウチの影は学園から追い出されたんだよ。何があったかは王家じゃないと解らない」


「変すぎでしょ。図書室を貸してくれる約束なのに鍵が鍵の仕事してくれないよ」


「あんまシオンのことを鍵鍵言うなって。アレ、機嫌が悪かったらどうすんだよっ」



…………耳がいいって不要なことまで聞こえるから損だな。二人ともコソコソ酷いこと言ってんじゃねぇよ。



来月の七日はエレナの誕生日だ。

次の逢瀬で渡せば間に合う。

最高ランクの品質、色も最高の発色、大きさも今までで一番。



驚いた顔、困惑する顔、喜ぶ顔、見惚れる顔、その全てが見られるはず。



僕がエレナのことを考えて、妄想していることが顔に出ていたらしく『気持ち悪い』とラスティとグレイに椅子を蹴飛ばされた。


酷い、容赦なさすぎ。




グレイが煩いから図書室へと向かい、本を読むことにした。


「エレナ嬢のお母上って前ラストゥール辺境伯の娘だろ?」


「そうだよ。ラスティから聞いたのか?」


「前ラストゥール辺境伯夫人って和泉皇国のご出身だろ?黒い髪と瞳は和泉皇国の高位貴族の特徴だからね」


別の大陸にある大国、和泉皇国の高位貴族は黒髪黒目が特徴だ。リズタリア王国のある大陸には、その色を持った人はいない。



その黒い色に一瞬で囚われた。



「和泉皇国は大国で魔術が発展している。それなのに当時ラストゥールに嫁いだ令嬢は高位貴族にも関わらず魔力を持っていなかった。当人同士は惹かれあっての婚姻だったけど周りの貴族は厄介払いされた令嬢を引き受けるのかと批判が多かったらしいね」


ラスティの言う通り、当時は相当揉めたらしい。和泉皇国の皇太子から婚約を解消された令嬢を娶った当時のラストゥール辺境伯は即離縁して他の令嬢と婚姻すべきだと言われていた。


「それが今じゃ、孫の代は多くの魔力を持って生まれている。現ラストゥール辺境伯は魔力は少ないが子供は多くの魔力を持っているし、ウェスタリア夫人も魔力は少ないがレイとエレナ嬢は魔力が多い。しかも、父親である宰相は魔力がないのに」



エレナの治癒魔術は和泉皇国の希少な魔力を受け継いだからこそ発現したのだろう。



「その辺りは詮索しない方がいい。陛下は知っておるけど僕も二十歳を超えるまでは教えてもらえない。血が関係しているらしいけどね。それが、レイの精霊魔法と関係しているんだろうけど」



和泉皇国について記された書物は閲覧可能区域にはないのか。禁書の方なら二人がいない時か。



「ラスティ、これから会議に行くから後は頼んだ」


「りょーかい」


図書室の鍵をラスティに託し、僕はアレンの待つ会議室前へと急いだ。




今日は転移術の再現結果の報告と懸念事項への対処方法の提案をするために会議へと参加する。


「転移術の普及と転移陣除け結界については理解した。直ぐにでも王宮や執務室区域には結界を張りたいと考えているが、ここにあつまっている者の殆どは魔術を使えぬ。必要性はお前から皆に説明して承認を得るように」


と、先日、陛下へ報告した際に自分で承認とれよと指示されたことで会議への参加が決まった。


転移魔術を行使できる魔術師が増えるのは国のためになるけど、対策もしておく必要がある。


王宮や高位貴族の邸への転移陣除け結界についてはアレンに意見を出してもらい、魔術師の指導と育成をしてくれることになったから貴族達に提案して承認をもらう。


今のリズタリアは魔術を使える人が少なく、魔術を使える人は全員、王宮に伺候している。引退した魔術師で弟子をとっても、王宮魔術師団へ入団させて伺候することが多いく、魔術師は全員が王宮に登録しているから人数を把握できている。

懸念事項を考えて対策案も出しておけば現状は問題ないだろう。



「本日はお集まりいただき感謝します。今回、私からご提案させていただくのは、王宮に伺候している魔術師への転移魔術の訓練と王宮への転移陣除けの結界を張ること、そして、必要に応じて皆さんの邸へも結界を張ることについての必要性です。承認いただけましたら、魔術師への訓練と育成はアレンが担当し、人手が不足していましたら私とラスティでも指導を担当する予定です」


指導するのに人手不足が予想されるから、手始めにラスティに転移をマスターしてもらって指導する側になってもらう。

少しくらい苦労してもらわないとね。


「殿下自らご指導されるのですか?それは大変貴重ですね。ただ、転移術とは我が国では失われた魔術と言われていますが、対応策など必要なのですか?ましてや指導するなど」


「王宮の魔術師であるアレンと私で再現しました。魔術師の素養によって出来るかは変わりますが、転移陣を使うことで生活の利便性が向上すると考えています。転移を使える魔術師が増えることで、王宮に勤めている皆さんに急ぎで必要な伝令を転移で送ることができますし、将来的には転移専門の魔術師を育成して、王都から地方への物の輸送にも使っていきたいと考えています」


王都から地方へ急いで輸送が必要な物を転移出来ると利便性が向上する。情報なんかも直ぐに地方へ届けることで民の生活の向上にも繋がるはずだ。病気が流行れば医者を地方へ派遣でき、薬剤を流通させることもできる。


貴族の邸に転移で出入り出来ると犯罪が起きる可能性があるから結界が必要なこと、ただ、転移陣が使える魔術師は移動可能距離を含めて王宮に登録しておけば把握も簡単だ。


有用性の他にも考えられる危険性も伝え、転移術の必要性を伝える。承認をもらうにも、必要性の他に危機感も持ってもらいたい。


「転移が便利なのはわかりましたが、結界は必要なのですか?王宮に登録をしているなら、結界までは必要ないと思いますが。王宮の結界は国庫で出すにしても、邸へ結界を張る際の必要経費が個人負担というのも」


「リズタリア国内だけであれば魔術師を特定することができますが、他国から転移の使える人間が入国した際に結界がなければ侵入を許すことになりますし特定も難しくなります」


「邸へ入られたとしても護衛がいれば問題ないでしょう」


数人の貴族には危機感を持ってもらえないというか、魔術の使えない貴族からは反対意見も多い。魔術が使えないことで必要性への理解がないから魔術師と契約をしていないし、自分で結界を張ることができないから費用負担が増えるだけ。


「必要と感じる方のみ邸に結界を張ればいいのです。皆さんにとは言いません。私とアレンで結界を張らない場合にどうなるか実演してもよろしいですか?」


「ほぅ、実演ねぇ。まぁ、それなら転移を見せてもらえませんか?」


ウェスタリア邸へ侵入したらマズイよな?

エレナを誘拐したら大問題になる?



仕方がない、無難な奴にするか。


「では、誘拐してきますね」


そう言い残して転移し、数分後に会議室へと戻った。ラスティの弟であるテオ・モリアーティスを連れて。


「テオ?!」


「父上!シオン兄さんが誘拐するから付き合えって、強引に連れてこられた!!」


「こんな一瞬で連れ去れるのか」


モリアーティス公爵家は優秀な影と魔術師、護衛がいるのに誘拐されちゃいましたね。残念です。

勉強中だったからテオは屋敷に帰しました。


「他にも誘拐しましょうか?私が行くと問題になるのでアレンが誘拐しに行きますよ」


「シオン殿下、我が領地にいる息子を連れてくる事はできますか?」


「ウェスタリア領ですか?数分かかりますがいいですか?」


「構いません」


僕が行くよりアレンが適任だろうから、アレンに任せた。数十分後に、アレンとレイが会議室に現れた。


「これが転移か!すごい、アレン、私にも教えてくれっ!!」


レイ、どう見ても胸ぐら掴んで脅しているぞ。教えるから黙ってくれ。


「レイ!騒がしいぞ!この会議で殿下の提案が通るまで待つんだ」


「レイ、実演が終わったので領地へ帰りましょう。お忙しいのに申し訳ない」


「あ、帰らなくていい。帰るつもりで準備していたし荷物も持ってきた。帰る手間が省けて助かったよ。では、私は会議の参加者ではないので執務室へ行きますね」


もう出席者全員が口開けているよ。

そりゃそうだ。レイが転移術の有用性を証明したかのように『移動時間の削減と手間が省けて騎乗疲れもなくて楽だ!』と言葉を残して会議室を後にしたから、貴族達が驚いている。



これから数日後に、アレンの魔術師育成と転移除けの結界張りが行われた。それと同時に、アレンには王宮筆頭魔術師として魔法伯の爵位が与えられた。

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