第3話 予告(1)
薫は左のドアを開ける。ここの社員(居候?)達は彼を迎え入れる。
「おお、薫っちだ!おはようー!」
「モモよ、今何時か知ってて言っているのか?」
「今、10時ぴったしよね?起きたてさんには分からないだろうけど。」
(どうして髪型があんなソフトクリームになるんだ?)
会話を完全無視して、薫はモモの寝癖がどうしてそうなったのか推理していた。ただ分かるのは皆、テレビ鑑賞中であるという事だけだった。
「あ、これ見てみなさいよ。朝からこれで持ち切りなの!!」
「さすが有名じーん!ショタは世界を救う!」
「だからなんでショタ‥ーええぇ!!!!」
テレビを見た薫は目を大きく開き叫んだ。周りのギャラリーが驚く。
「どうしたのだ、いきなり叫ぶとは。」
「慣れて無いのよ。」「有名人なのに?」
薫は色々言う人達を無視して大きいテレビの前にかじり付く。
「あわわゎゎゎ‥」
テレビは先程から同じニュースの特番をしている。
〔ーー昨日、架空通貨銀行ZAER の社員、及び部長らが逮捕された事件。これは前代未聞の巨額の金が一部の団体に回っていました。そして、その団体は消え巨額の金は一体何処へ‥謝罪会見の映像が届いた様です。中継‥‥〕
薫が推理した事件がほぼ全てのテレビ局をジャックしていたのだった。
『ヒャハハハハハハ!!』
「笑うなー、僕が今どれだけ精神にダメージ食らってるか〜‥」
薫は早速桐生に電話をかけていた。別にメールでも良いのだが、何せしばらくはネット講義とたまにの登校で済ます為会っていない。声を聞きたくなったのだ。幸い桐生もヒマだったらしい。
『ヒッ‥いやっマジかそれ‥ハメられてる、てか羨ますぐる。‥ヒャハハハ!!』
「桐生、お前今ツボったJKみたいになってる。」
同じくテレビを鑑賞していた桐生は僕から昨日の事をかいつまんで説明され、爆笑し始めたのだった。その結果、こんな温度差を生み出す事になった。
「あ、そう言えば」
ムカついた薫はとある案件を桐生に訊く。
「一昨日あった追試、結果来てるよね?どうだった?」
『ーグッ!』
効果は的面だ。ダメージを食らった正直な桐生は答える。
『ーー、赤点ボーダーギリ超えた。』
「良かったね‥ってギリ⁈せめてボーダー10点超えてよ同じテストなんだから。」
その時、電話口から電話のコール音がした。桐生のいる事務所のだろう。
『それクラストップぐらい取れって事か。この自分にぃ⁈』
「ー2回目だろ。てか僕のクラス1番平均低かったろ。」
『黙れ、有名人。』
薫はこいつはどこまでもイジってくる奴だった、と思い返す。
『ハイ叔父さん。ーすいません所長。え?マジすか?ーすいません本当ですか?』
桐生はおそらく叔父さんに軽口を修正されながら話を聞いていた。おそらく仕事が来たのだろう。
『誘拐?ああ、お嬢様学校の。‥‥え本気すか?自分がやるんすか?‥‥ウワ』
僕も所長に呼び止められた。所長は電話先の彼にこう伝えてくれ、と言った。所長は、「私が言っていたという事は伏せて伝えたまえ」と付け足した。
『ハイハイ分かりました!やれば良いんでしょやれば!ーーーごめん、待った?』
「全く。むしろ面白かったから聞いてた。」
『辞めろヤメろ!自分は今からすっごぉく嫌な仕事があるから!じゃね!』
僕は所長の言葉を思い出した。
「桐生。」
『ん?』
「“今日、きっと思いもよらない所で会うかもね”」
『わけわかーーーーー(ブツっ)』
薫は自分でも分からないので電話をブチ切りした。
10時10分。学校で言う所の〔下校時刻〕まであと、およそ7時間。
⚫︎
10時20分、約束の時間ぴったしに事務所のドアが蹴り破られた。きっと時間に関しては真面目なのだろう。
「晃!言ってはおいたが、仕事だ!」
ヒカルって誰の事だろうと薫は思った。
「相変わらず全てに関して荒いですねーー渡田刑事。」
薫はこの時初めて所長の名前を知った。
次回くらいから所長の本名が明かされます