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マリー・パスファインダー船長の七変化  作者: 堂道形人
泰西洋の白波

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ウラド「大声で呼ばず静かに探すのだな。心得た」アレク「何考えてるんだろうね……全く」

父との共同作戦!

トゥーヴァーさん達と、解放作戦の約束をしたマリー。

奴隷商人に捕まった人達を救う事が出来るのか。


 辺りはかなり明るくなっていた。


 びっくりするくらい何も無い島だ……窪地には少し草が生えていたり、水溜りがあったり、枯れかけた川もあるが。

 こういう島は昔からこうだったのではなく、人間が住んでこうしてしまったのだそうだ。


 ヴィタリスのような場所では、木を切っても他の若木が伸びて来るから、森は森のままでいられる。ヤギに草を食べさせてもまた生えて来るから大丈夫だ。

 この島はそうは行かなかった。よそから人間がやって来て、燃料や何かにする為木を伐り、ヤギを飼い草を食わせた結果、数百年でこの有様となった。

 乾いて固まった大地には草を生かす力も無く、木々も自然繁殖で増える事も出来なくなった。

 そして人も動物も虫さえも立ち去り、このような景色だけが残ったと。父の言う事なので話半分で聞いた方が良さそうだが。



 さて、岩陰を越えて、ハバリーナ号から降りた入り江に近づいてみると。私の目に、見えてはいけないものが見えた。


「隠れて!!」

「どうしたマリー?」


 父はそう聞き返しながらも、手近な岩窪にスッと身を潜めた。


「フォルコン号が居る!お父さんのボートを見つけたみたい……」

「えっ……」


 私はもう一度、岩陰からそっと覗いてみる……居るよ……よく見つけましたね、この入り江。いや、それでどうするの!

 どうするの……


 いや。

 前回はあまりにも急だったから、つい、腐れ外道の道を歩んでしまったけれど。今回は間違う事はない。


 私は、フォルコン号を見つめながら……呟くように、父に言い聞かせる。


「お父さん。覚悟して。皆の所に行きましょう。ロイ爺、ウラド、アレク、不精……ニック、そして誰よりもアイリさんに。得意の土下座は無しで、誠心誠意謝って。そして死ねって言われたら死んで。私も一緒に死んであげるから。大丈夫、今なら海兵隊の人達も居るから間に入ってくれると思う」


 私は深い溜息をつきながら……振り向いた。



 はぁあああぁぁあああ!?!?!?


 い な い !?!?!?


 いない。


 私は立ち上がり、そこらじゅうの岩陰を探す、居ない、居ない、居ない!?!?


 嘘でしょ!? 今ここに居たのよ?? こんな岩と砂利しか無い島でどこへ消えるのよ!? あの……あの腐れ外道!!


 あの腐れ外道……



 私は四つん這いになり、暫く動けなかった。

 これが……これが私が探し求めた……父のありのままの姿なのか……



 あの腐れ外道!!




 私は一人、とぼとぼと岩山を降りて行く。入り江に向かって。

 フォルコン号は錨を降ろした上、数本の索で岩にぶつからないよう繋がれている。

 最初に気付いたのは海兵隊の人だった。


「マリーさん……マリーさん!!御無事ですか!?」


「すみません、御心配をお掛けしました……」


 私は頭を下げたまま、船に近づいて行く。土下座は今したくない。今しても海兵隊の人しか見てないし。

 続いて私に気付いたのは……アイリさんだった。今、私が世界一恐れている人だ。


「マリーちゃん! いい所に来たわ! 大変なの、ちょっとこっちに来て!」


 私はアイリさんを見た……アイリさんの顔は私が想像していたどんな表情とも違っていた。怒ってもいないし泣いてもいない、何か困った事が起きたという顔。


 だけど……


 私の方は、全く我慢出来なかった。


 たちまち涙が滲んでぼろぼろ落ちそうになる。アイリさんの顔をまともに見てしまった……私はもう、他ならぬ自分の父が、このお姉さんに何をしたのか知っているのだ。

 私をじっと見ているお姉さん……この人はこんな所に居るはずの人じゃなかったのに。本当ならどこかの町の大きなお屋敷で、素敵な旦那様と温かい家庭を築いている筈の人だったのに。

 なんでこんな不毛の島の何も無い入り江で、私の帰りを待っているんだろう。アイリさん……ごめんなさいアイリさん……


「あの……心配かけて……その……」


 渡し板を渡りきった私はアイリに抱き着こうとしたが、アイリはサッと身を引く……そりゃそうだよ、私薄汚れてドロドロじゃん。


「困った事になったのよ、とにかくこっちに来て!」


 そしてアイリは私の手を取り、船員室のある方へと連れて行く。何があったのかしら。


「見て! これを!」


 そして艦首の船牢の落とし戸を指差すアイリさん。一体何があったんだろう。

 私はそこを覗き込んだ……次の瞬間。


 アイリさんが、私の背中を押した。



「捕まえたわよー!! みんな!! マリーちゃんを捕まえたわよ!! 戻ってらっしゃい!! ロイ爺も出て来ていいわよ!! 海兵隊さん!! 外へ探しに行った人達も呼び戻して来て!! マリー・パスファインダーは捕まえて船牢に入れたって!!」



 船牢にうつ伏せにぶち落ちてひしゃげた私の背中に、手拭いが投げつけられた。



「皆が帰って来るまで、そこでゆっくりしていてね?朝ごはん食べた?喉乾いてない?今何か持って来てあげるわ、あと、着替えも」



 船長になって115日目の午前。私は人生で初めて、牢と名のつくものに閉じ込められた。

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ご来場誠にありがとうございます。
この作品は完結作品となっておりますが、シリーズ作品は現在も連載が続いております。
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マリー・パスファインダーの冒険と航海
― 新着の感想 ―
にっこにこで投獄するやつぅ〜 なお目は笑ってない模様w
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