勇者初心者の町編 -勇者幼女の秘密を探る-
ちなみにこの街の貨幣レートは1シリングで銅貨1枚、10シリングで銀貨1枚、480シリングで金貨1枚です。
おそらく朝の9時頃。
太陽の位置で大体の時刻を把握できる。
俺が女の子に連れられてきたのは、中心街と冒険者ギルドの中間の位置にある広場だった。
簡易式のテントや木製の屋台が放射線上に並んでいる。その広場の後ろには立派な小城が建っていて、衛兵が中に入る商人の首にぶら下げた印章をチェックしていた。
女の子は少し眠いのか目をこすりながら、俺に説明を始めた。
「ふぁあ……マンドレイク1箱と光キノコ2箱と純水100瓶を買います。それを空き家まで運んで」
女の子は俺が引っ張る荷車によりかかりながら、俺達が歩いてきた方角を指さす。ちなみにこの荷車は銅貨一枚、すなわち1シリングで入場口にて借りた。
「何に使うんだ?」
「えっ、回復ポーションの調合に決まってるじゃないですか!」
女の子はこんなことも知らないの?とでも言うような顔をする。
「いや、知らないが、回復ポーションの調合方法なんて一般人が知ってるものなのか?」
俺が元いた世界でも薬品の調合方法を知ってる人なんてほとんどいないし、ましてあまり識字率も高くなさそうなこの世界で知ってて当たり前の知識ではないだろう。
女の子は口に手を当ててはっとした。
「えっ……あっ、すいません。長いことこの街で引きこもり生活だったもので、私のが非常識でした」
彼女は肌が白かった。また何か世間ずれしてるようなぼぉっとした感じだった。
だから引きこもり生活をしていたというのは正しい。
だが、”長いことこの街にいた”という情報はおそらく嘘だ。
明らかに人種が違うのだ。
町ゆく人々は大体黒髪の浅黒い人が多いのだが、彼女は銀髪で白い肌。また切れ長の目が多いここの住人と違って非常に大きく丸い瞳をしていた。
だから違う地方の人間だった。
名前でも聞いてみれば、発音なんかで一発で解るだろう。
「色々不便だし、名前を教えてくれないか」
「な、名前ですかぁ!?なんで!?」
「名前知らないと、不便でしょ」
「んんんんん」
彼女は顎を触って俺から目をそらして考え込む。
そして思いついたように
「マオです」
「苗字は」
「えぇ?苗字ぃ?……マオです。マオマオって言います」
女の子は文句言うんじゃねぇぞこらぁと俺にガンを飛ばす。
しばし見つめ合う二人。
俺は彼女に手を差し出して握手を求めた。
「そうか。マオちゃんか。よろしくな」
マオはよかったというように小さな口を大きく開けてその求めに応じた。
俺とマオは今日一日の労働契約の関係だし、あまり深入りしないことにした。
人間色々事情があるんだろうということだ。
「ちなみにあなたの名前は?」
「金田満」
「だっせぇ名前ですね。言いにくい」
マオの指を思いっきり握りつぶしてやった。
そんな漫才をしながら、マオと俺はアオリオ商店という看板を掲げた屋台の前に着いたのであった。