8話 雨と最悪の思い出3
先生の対策はいたってシンプルなものだった。
あのネックレスは他の人には害はないことを有識者に確認し、問題ないことを確認したと話、もし害があった場合は自分が責任を持つから、自分の所に言いにこい。というものだった。
クラス全員が納得することはなかったが、一定の効果はみせた。
けれど私の怒りは逆に増していっていた。
このネックレスのことをなにも知らないのに、呪いだの、悪魔だのいえるのだろうか。
私はあいつが悪魔などと言われなければならないことに
そしてそれは自分でも気づかないうちに表情にも表れていた。
「最近どうしたの。怖いか顔して。」
下校中に詩織にそう言われるまで、全くきづかなかった。
「そんな怖い顔してる。」
「してるよ。ちょっと近寄りがたいくらい。」
「…」
「大丈夫。」
「うん。大丈夫だよ。」
今のところ呪いのネックレスという話はクラス内だけしかされておらず詩織は知らない。
詩織を巻き込み嫌な思いをさせたくなく、そう言った。
それから数日後、さらに悪いことが起こる。
クラスの数人が北村 由紀が流した私はこのネックレスの呪いでネックレスをはずせず、はずさないように洗脳されていて、さらに最近機嫌が悪いのはこのネックレスに体力を吸われてるせいだという、根も葉もない噂を信じ、私を助けようとしたのだ。
かなり、いや最上級の有難迷惑である。
放課後、帰ろうとしてるところ数人のクラスメートに囲まれた。
「なに。」
「足立さん、そのネックレス少しでいいからはずしてくれない。そうすれば呪いのネックレスなんかじゃないって証明できるから。」
「嫌よ。呪いではないし。」
はずせば穏便に解決しそうだったが、それでも、ネックレスははずさなかった。
ここでネックレスをはずすと喧嘩していることもあり、もう縁が切れてしまうような気がした。
だから、私は絶対にネックレスをはずさなかった。
「仕方ない。足立を救う為だ。」
と一人の男子がそういうと数人のクラスメートに取り押さえられ、ネックレスをはずそうとしたが、ネックレスは切れ目もなくはずすことはできない。
ただ、それは想定済みのようで、まさかのニッパーまで取り出し、ニッパーでネックレスを切ろうとする。
抵抗したが、数人の男子に抑えれれて身動きを取れない。
「おい、暴れるな。怪我するぞ。」
「なんだこれ。めちゃくちゃ硬いぞ。」
ネックレスは切れるどころかニッパーの跡すらついていなかった。
どれくらいの時間だっただろうか、体感的には1時間くらいとも思えたが、実際は5分、10分だったと思う。
不意にクラスメートの後ろから怒鳴り声が聞こえた。
「おい、おまえらなにをしてる。」
詩織が騒動を見て先生を呼んできてくれたのだ。
結局詩織を巻き込んでしまったなという思いと、助かったという思いがこみ上げ涙いていた。
「結希大丈夫。」
「うん。ありがとう。」
ネックレスの三日月のチャームは薄い赤色をしていた。
ひと段落し、周りに誰もいなくなるとあいつは現れ、形を整う前に話かけてきた。
「「お願いだから、
「「ごめん。」」
「「謝ることではないけど。」」
「「いや、違うよ。言えないことの一つや二つはあるよね。私があんたのことを誰にも言わないように、他の人が考えたらどうでもいいことでも、秘密にしておきたいことわ。
それを無理やりきこうとしてごめん。」」
「「…。きみはすごいね。こんな怖い思いをして、まずでる言葉がそれとは。しかし、もう少しリスクの少ない方法で学ぼうよね。」」
その後、この騒動に加担した生徒は厳重に注意され、数人は直接謝ってきた。
このネックレスは呪いのネックレスじゃないことを認識させて、許してやった。
そして幸か不幸かこの大騒動のおかげで、このネックレスについていう人はいなくなった。
また、先生にもあいつみたいに
「もう少し賢くなれよ。」と言われた。
家の窓から雨を眺めながら、
「「あの時なんで喧嘩したんだっけ。」」
「「最悪の時を思い出すつもりなの。」」
「「これからの人生ではあんなことよりもっと悪いことは起こると思ってね。
あれくらいは克服しとこうと思って。あんただけ覚えてるのも弱み握られてるみたいでいやだし。覚えてるんでしょ、喧嘩した理由。」」
暫く沈黙の後あいつは答えた。
「「…誕生日。」」
「「え、なにもう一回言って。」」
「「僕の誕生日を教えろって。君の誕生日を知っているのに僕の誕生日を知らないのは不公平だからって。」」
「「そうだ。頑なに答えなかったよね。嘘でてきとうな日にちを言えば良かったのに。」」
「「君がネックレスを頑なにはずさないのと同じで僕も絶対に君には嘘をつかないと決めてるからね。答えられないものは黙秘するしかなかったんだよ。」」
「「そう言えば良かったのに。」」
「「言ったよ。それでもしつこく聞いてくるんだから。なんでそんなに知りたかったんだい。」」
「「それは私だけ祝ってもらうのが嫌だったから。」」
「「君らしい答えだね。」」
「「てことで、教えなさいよ。」」
「「ダメ。」」
「「そう。なら勝手に私が決める。7月7日ね。」」
「「なるほど。このネックレスが君に渡った日か。」」
「「これならいいしょ。」」
「「いいよ。それなら。」」
お読み頂きありがとうございます。