2話 今年も
このネックレスはもらってすぐにつけそれからははずしたことはないし、本当に私以外では、はずすことはできなかった。
どこの誰とも知れない人からもらったものを娘がつけていて気持ちのいいものではないから、つけてすぐに両親がはずそうとし、最後にはペンチで切ろうとしたがそれですら切ることができなかった。
それからは、家ではネックレスのことは何も言われなくなった。
実際どうにもできなかったのだからそうするしかなかったのである。
そして、学校にも説明してくれたおかげで、今日まで特に注意程度ですんでいる。
流石に他の生徒に示しが付かないので注意はどうしても受けざるを得ない。
事に新年度で新しい先生となるとなおさらである。
「お疲れ。今年は他の学校からの転任だったから例年になく面倒生だったね。」
と言って、詩織が声を掛けてきた。
詩織とは小学校からの付き合いであり、親友である。
「ほんと大変だったよ。毎年のように説得手伝ってくれてありがとね。」
詩織にお礼を言っていると後ろから声がかかった。
「足立お疲れ。今年も面白いもの見せてくれてありがとな。」
と佐伯 修一が楽しそうに笑いながら男子グループから離れ私の席の方にやってきた。
こいつも、小学校からの付き合いであるが、こちらは腐れ縁だ。
「見世物じゃないて毎年言ってるでしょ。少しは詩織のように助けてよ。」
「だって、男子と女子体育は別じゃん。同じ体育館でも離れてるし、俺がいくのは変だろ。」
それはその通りである。
もし本当に説明に来れれても余計にややこしくなるのはわかっている。
それでも何か文句を言いたかったのだ。助けてくれた詩織には言えないから、ある意味でこいつの存在はありがたい。
勿論そんなことは言わないけど。
そんなやり取りを彼は遠くから見ていた。
「「何みてるのよ。」」
「「それも今更だね。僕は君のことを四六時中見てるんだから。僕は眠りもしないしね。」」
どれだけ離れていても声ではないので、どこでもクリアに聞こえる。
「「ストーカーだったわね。」」
「「…そのネックレスはずせば僕は何もみえないんだけど。」」
「「そうね。で、感想は?」」
「「君たちは仲いいよね。かな。」」
「「いや、お疲れ様とか、私を労いなさいよ。」」
「「…ご苦労をおかけしております。」」
「「よろしい。」」
満足して前を見ると修一がニヤニヤしながらこちらを見ていた。
「瞑想終わったのか。」
「瞑想て、なに。」
こいつまだ居たのかという目で見て、修一を男子グループに追い返すように仕向けた。
修一も邪険にされているのを感じ取ってその場を笑いながら離れていった。
「瞑想ていうかは置いといて、それやると結希元気になるよね。」
「そうね。場合によるけど大抵は元気になるね。」
「おまじないか何かなの。」
「そんなとこ。」
「相変わらずはぐらかすね。」
「そんなことないよ。おまじないのようなものなんだよ。」
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